アメリカやイギリスの陰に隠れているが、ベルギーの死亡率は異常に高い

数日前、トランプ大統領は人口に対する死亡者数の割合をグラフで説明した。10万人あたりの死者数が最も多かった国はベルギーの66.5人、2位はスペインで52.5人、3位がイタリアで46.3人、アメリカは19.3人だった。(ジョンズホプキンズ大学調査5月1日時点)

ベルギーの人口は約1,150万人、10万人あたり66人がコロナウイルスで命を落とした。しかし、ベルギーのウイルス学者で政府のスポークスマンを務めるスティーブン・ヴァン・グヒト教授はこの数字に対し、あくまで「指標程度」の扱いであり、それを比較し対策の成功を主張することは間違いであると述べた。

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ベルギーの今

ベルギー当局は、他国とは違う方法で死者数を集計しているという。病院や介護施設での死者はもちろん、「感染を疑われるもしくは確認されていない介護施設の死者」もコロナウイルスにより死亡したと想定しカウントしているのだ。

当局の発表した最新の死者数統計によると、7,703人のうち53%(約4,000人)が介護施設の老人だった。そして、同施設のPCR検査で陽性と判定された者は16%(約640人)。感染が疑われるもしくは確認されていない者(約3,360人)が大半を占める結果となっている。

ヴァン・グヒト教授は「医師の評価に基づき、同じ施設内にコロナウイルス感染者がいた場合は、感染が疑われるもしくは確認されていない者もカウントしている」と述べた。

ソフィー・ウィルメス首相は、感染者数及び死者数を過大報告している可能性がある、と会見で示唆した。しかし、ヴァン・グヒト教授は、実際の死者数は報告されている数より多いかもしれないと指摘している。

当局は、パンデミックが発生する以前の対策不備、準備不足があったことを認めている。介護施設の医療用器具、保護具(PPE)は明らかに不足しており、結果、感染拡大と死者数の増加につながった。

現在は全ての介護施設、老人ホームなどのスタッフにマスクと保護服が支給されている。また、病院の看護師や軍の関係者による支援体制も拡充された。なお、ある疫学者は、同施設で生活する約10%が無症状のウイルス保有者であり、「気づかぬうちに免疫を構築している」ことを発見したと述べた。

ベルギーのロックダウン

同国では3月18日以降、不必要と判断された仕事を全て停止し、国民の大半が自宅待機を余儀なくされている。買い物による外出は、家族の代表者ひとりのみに制限、少なくとも1.5mの社会的距離の確保が義務付けられた。なお、健康を維持するために、1時間の運動(外出)は許可されている。

当局は厳しい監視体制を敷いており、公園内では無人偵察機(ドローン)を使用、社会的距離などのルールを破って者に罰金を科している。また、ルクセンブルク、フランス、オランダとの国境にチェックポイントを設置し、国境を越えて仕事に向かう労働者と緊急の要件で入国する者のみ通過を許可している。

先日、政府は段階的にロックダウンを解除すると発表した。5月4日から、「自分用の布マスクを作る材料の購入が許可」され、生地店のみ営業を再開する。また人数は限定されるものの、公園等でのスポーツが解禁される予定だ。なお、公共交通機関を利用する際はマスク、もしくは布マスクの着用が必須、違反した者は罰金を科される。

生地店以外の店舗については、5月11日から営業を再開できる。学校は5月18日から再開、各クラス10名体制を敷き、授業を行う。

6月8日からはカフェ、レストラン、観光スポットも再開される予定である。それに伴い海外旅行も解禁するという。ただし、あくまで予定であり、国内の感染状況が悪化すれば、再度ロックダウン措置に踏み切る可能性もある、と政府は釘を刺している。

教訓

同国のPCR検査数は1日当たり10,000~20,000件。また、介護施設で生活する約21万人の検査は全て終了し、約10%が陽性だったと発表した。なお、ウイルスの「抗体検査」は5月中旬から実施する予定である。

現在、パンデミックを引き起こした主要因の調査が進められている。3月に各地で行われたカーニバルがクラスターを引き起こし、大量感染につながったと指摘する専門家もいる。また、世界中で懸念されている貧困層の問題も同様。

ヴァン・グヒト教授はロックダウンの解除に対し、「夏の終わりにはすべての施設、学校、観光旅行も解禁される予定である。感染者数は減少傾向にあるが、再びパンデミックが起きるリスクも当然あるだろう。最も心配しなければならないのは”冬”だ」と述べた。

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