ロックダウンを解除・緩和した多くの国がマスクの着用を義務付けている

正しく着用すれば、目に見えない空気中のウイルスを防いでくれるマスク。コロナウイルス時代の始まりを象徴する必須アイテムとして、今、世界が注目している。

数カ月前までは、公衆の場でマスクをつけると「風邪を引いている」「体調が悪い」と勘違いされ、欧米では”バイキン扱い”されることもあった。これは、「マスク文化」が根付いていなかったことと、「マスクは医療従事者”だけ”が着用するもの」という誤った考えが浸透していたためである。

パンデミックの初期段階、多くの政府がマスクの着用を推奨せず、社会的距離の確保と外出の自粛のみを要請した。理由は、「それを着用すればコロナウイルスを防げる」という誤った認識を国民に与えたくなかったと同時に、医療従事者に供給するマスクが不足する事態を恐れたため、と考えられている。

しかし、数百、数千人規模で感染が拡大したこと、マスク文化の定着するアジア各国の感染状況が緩やかだったことなどを受け、欧米は対策を変更した。マスクの効果に懐疑的だったトランプ大統領も、それを装着する、もしくは「スカーフなどを顔に巻き、防護してほしい」と記者会見の場で述べた。

チェコ共和国、スロバキア、オーストリア、モロッコ、トルコ、ドイツなどの国々も次々に対策を改め、今では公共の場に出る際のマスク着用を義務化、違反すれば罰金を科す国もあるほどだ。これからロックダウンの解除、緩和を行う国の多くも、同じ対策をとると予想されている。

ヨーロッパの科学者や専門家たち(チェコ共和国を除く)はごく最近まで、アジア各国のパンデミックおよび感染拡大が緩やかな理由を理解できずにいた。しかし、コロナウイルスがどのように拡散されるかを理解できれば、マスクがいかに重要であるかは、誰でも簡単に理解できる。

1回の”咳(せき)”で空気中に放出される水滴(目に見えないものも含む)は、最大3,000個と言われている。また、普通に会話するだけでも、無数の水滴を口腔内から放出する。会話中に誤って咳き込めば、目に見えない「ツバのシャワー」が相手の顔面を直撃するのだ。

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エアゾール

コロナウイルスは感染者の口腔内から大気中に放出される。ツバのシャワー、通称「エアゾール」に含まれるウイルスは”3時間生存する”ことが確認されている。

感染者の口から放たれるエアゾールが拡散し、パンデミックは引き起こされた。もちろん、無意識のうちに、である。友人の前で咳をする、ウイルスのついた手でドアノブを触る。感染者のありとあらゆる行為がコロナウイルスを外界に放ち、それに何らかの形で触れた者が新たな感染者になった

ウイルスの飛散状況、感染経路調査は世界各国の科学者、専門家が行っている。彼らが特に警戒すべきと警鐘を鳴らすウイルス残存場所が、「トイレ」「シャワー室」「ベッドの枕元周辺」である。

ひとりで生活していれば問題ないが、複数人がそれらの施設、場所に近づくのであれば、感染リスクは一気に高まる。また、感染者がその場にいなくても、エアゾールに含まれるウイルスは3時間生存することを忘れてはならない。

マスクを装着すれば、咳の放出を防ぐことができる。エアゾールをその中(自己完結)で抑え込めば、感染リスクが劇的に向上されることは説明するまでもないだろう。ただし、「マスクの性能」によっては、外部にエアゾールが放出される可能性もある。

3M(スリーエム)のサージカルマスクは、口腔内から放出されるエアゾールの75%近くを抑えることができる。医療従事者向けの「N95微粒子用マスク」に比べると性能は低いが、それでも、装着しないことを考えると、素晴らしい効果と言える。

さらに、サージカルマスクの内側にストッキング(新品)の切れ端を入れることで、除去率は90%まで上昇した。なお、ストッキングにこだわる必要はない。ナイロン製の布であれば除去率を上昇させることが分かったので、ミニハンカチ、タオルでもOKだ。

3Mのサージカルマスクは世界で最も支持されており、入手は困難である。しかし、安物(不良品はダメだが)、手作りであっても、使い方や工夫次第でエアゾールを除去することは十分可能である。

ミズーリ工科大学の環境エンジニアであるヤン・ワン氏は、「糸の数の多い布マスクほど、除去率が高い」ことを発見した。また、手作りマスクの内側にポケットを作り、そこに特定の布を入れると、除去率はさらに改善されたという。

特に除去率が高かった「エアコンフィルター」を布マスクのポケットに入れると、N95微粒子用マスクとほぼ同じ性能になることが分かった。

また、咳を自分の服の内側に向けて放出するだけで、エアゾールは50%近く遮断される。要は、何かしらの手段で口を覆えば、ウイルスの飛散をある程度は抑えることができるのだ。

マスクを装着し、さらに社会的距離の確保、手洗いうがいの励行、不要不急の外出を国民全員が徹底すれば、コロナウイルスの感染状況を劇的に改善できる可能性がある。

世界中でマスクに対する考えが改められた結果、それが不足する事態を招いている。ロックダウンの解除、緩和が進む今、注視しなければならないのは、発展途上国である。

マスク、防護具、消毒液など夢のまた夢。飲み水を確保するだけで精一杯の人々に感染症対策を行え、と言っても無理な話である。コロナウイルスに立ち向かう手段はある程度確立された。あとはそれを全世界に拡散させるだけである。

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