東京オリンピックが抱える問題点と日本経済に及ぼす影響を考察します。大会終了後に待ち受ける過酷な日々は、政府、地方自治体、そして国民を苦しめるかもしれません。
※2020年3月25日、東京オリンピックおよびパラリンピックの1年延期が決定!
目次
・2020年、東京オリンピック開幕
・復興オリンピックの現実
〇東京オリンピックにかかる費用(競技関連)
1.オリンピックスタジアム
2.有明アリーナ
3.有明体操競技場
4.有明アーバンスポーツパーク
5.お台場海浜公園
6.潮風公園
7.青海アーバンスポーツパーク
8.大井ホッケー競技場
9.海の森クロスカントリーコース
10.海の森水上競技場
11.カヌー・スラロームセンター
12.夢の島公園アーチェリー場
13.東京アクアティクスセンター
14.札幌大通公園
15.陸上自衛隊朝霞訓練場
16.選手村
〇東京オリンピックにかかる費用(組織委員会予算)
17.収入
18.支出
〇東京オリンピックにかかる費用(その他)
19.恒久施設
20.人件費
21.ボランティア
〇歴代オリンピックの予算(東京大会との比較)
〇東京オリンピック後の経済対策
〇まとめ
2020年、東京オリンピック開幕
東京オリンピックの予算(ver4)は以下の通りである。
項目 | 組織委員会 | 東京都 | 国 | 支出計 |
恒久施設 | ー | 2,260億円 | 1,200億円 | 3,460億円 |
仮設等 | 1,010億円 | 2,020億円 | 200億円 | 4,770億円 |
エネルギーインフラ | 160億円 | 330億円 | ||
テクノロジー | 700億円 | 350億円 | ||
ハード対策小計 (会場関係) | 1,870億円 (400億円) | 4,960億円 (200億円) | 1,400億円 (200億円) | 8,230億円 (800億円) |
輸送 | 410億円 | 300億円 | 100億円 | 5、070億円 |
セキュリティ | 330億円 | 520億円 | ||
オペレーション | 1,240億円 | 90億円 | ||
管理/広報 | 650億円 | ー | ||
マーケティング | 1.250億円 | ー | ||
その他 | 180億円 | ー | ||
ソフト対策費用 (運営関係) | 4,060億円 (200億円) | 910億円 (100億円) | 100億円 (100億円) | 5,070億円 (400億円) |
調整費 | 100億円 | 100億円 | ー | 200億円 |
支出計 | 6,030億円 (600億円) | 5,970億円 (300億円) | 1,500億円 (300億円) | 13,500億円 (1,200億円) |
予備費 | 270億円 | ※()はパラリンピック予算である |
オリンピックは開催都市に人を集め、物が飛ぶように売れ、経済活動が活発になり、ありとあらゆるプラスの効果をもたらす、と吹聴されている。インフラが整備され住民は大喜び。立派な競技場や施設は「オリンピックレガシー」として未来永劫語りつがれる、といったことが現実になれば大変素晴らしい。しかし、世の中そんなに甘くない。
1964年に開催された東京オリンピックは、日本の経済を爆発的に飛躍させる「原動力」になった。同大会を終え、日本国民は「死ぬ気でやれば必ず夢は叶う」と確信し、国土の開発は猛烈な勢いで進む。国を挙げて高速道路、鉄道、橋、新幹線、空港などインフラ整備を整備し、日本は現在の環境を作り上げた。
インフラが整備され、民間企業の誘致が進み、経済活動はすさまじい勢いで成長。小さな島国は超大国になった。天文学的な額の負債(借金)を抱え込むも、それらは日本がこれからもたらす収益で清算できる、と誰もが思った。2020年、政府の負債は900兆円、地方自治体の地方債は200兆円、国と地方を合わせると、その総額は1100兆円にまで膨れあがった。
1964年のオリンピック以降、日本経済は爆発的な成長を遂げた。しかし、その代償として重ねた借金は返さねばならない。今の日本は投資した資金という名の借金を回収できない状態に陥っている。高度経済成長期の投資が豊かな日本経済を作り上げたことは確かだ。しかし、借金が膨らみ続ける/返せない状態が続ければ、いずれ国の経済は崩壊する。
復興オリンピックの現実
オリンピック招致から撤退する都市が相次いでいる。理由は以下の通りだ。
①大金を投じて損失を生み出すことに国民が反対するため。
②一部の企業は収益を上げる。しかし、国民の大半は恩恵を受けず、負担だけが増していく。
③税金の無駄。オリンピックを開催する暇があるなら、借金の返済、人や企業への投資に予算を振り分けた方が良い。
アテネ大会(2004年)時の立候補都市数は11。しかし、2024年大会ではわずか2都市しか集まらなかった。理由は前述の通りだ。ただし、「損失ではなく収益を上げるオリンピック」には一定の価値があると思う。開催費用を可能な限り抑え、インフラや競技場は既存の施設を流用、そこに数千万人の来場者/観光客が集まりお金を落とす。損失ではなく収益を上げれば、開催する価値はあるかもしれない。
2020年の東京大会は「復興オリンピック」と呼ばれている。「東日本大震災」からの復興アピールと被災地への利益還元を目論んでいるのだろう。しかし、収益を上げることができず、投資したインフラ等の借金と「毎年の維持管理費」だけが残れば、被災地の負担は増すだけだ。そして、同大会は国民に利益をもたらさず、負債だけを残す確率が極めて高い。ここからは東京オリンピックの開催費用、損失が日本に及ぼす影響を考察する。
東京オリンピックにかかる費用(競技関連)
オリンピックスタジアム(目次に戻る
名称 | オリンピックスタジアム |
使用競技 | 陸上他 |
施工者 | 清水建設、大林組他JV |
総事業費 | 1,529億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | 100億円 |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | 4,500億~6,000億円 |
オリンピック終了後 | 継続使用 |
東京大会のメイン会場『オリンピックスタジアム(新国立競技場)』では、開会式と閉会式、陸上競技やサッカーなどが行われる。総事業費は1529億円、1年当たりの維持管理費はライフサイクルコストから算出すると100億円を超える。公共施設なので、利益を上げれば東京都民の大きな財産になるだろう。しかし、東京大会終了以降も続く維持管理/改修/修繕費を使用料(収益)で賄えなければ、損失は税金で補填されることになる。
同施設が利益を上げ黒字を達成するかは、今後の運営方針と営業努力次第だ。屋根がついていないため、音楽イベントの開催には向かないという意見もある。陸上やサッカー等の大会、プロ選手や実業団の合宿、一般利用等で使用料を徴収し一定の収益を上げねば、オリンピックの負の遺産と揶揄されることになるだろう。
<まとめ>
・維持管理費を使用料(収益)で賄うのは当たり前。
・改修/修繕費も収益で補填せよ。それを達成するには、ライフサイクルコストを考慮した維持管理費以上の収益を上げねばならない。達成できなければ、赤字分は税金で補填される。
・ライフサイクルコストを考慮しない維持管理費(管理費、人件費、光熱費、水道料等)は約24億円。これを超える収益を上げ、内部留保(貯金)を蓄え、将来発生するであろう改修/修繕に備えること。
外部サイトへのリンク
<新国立競技場 公式ホームページ>
有明アリーナ(目次に戻る
名称 | 有明アリーナ |
使用競技 | バレーボール他 |
施工者 | 竹中工務店他JV |
総事業費 | 404億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | 30億円 |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | 1,200億~1,600億円 |
オリンピック終了後 | 継続使用 |
江東区有明一丁目に建設された『有明アリーナ』では、バレーボールと車椅子バスケットボールが行われる。総事業費は404億円、東京大会終了以降も同じ用途で使用されるため、利用者の確保が課題になるだろう。なお、地方自治体の屋内スポーツ専用アリーナの建設相場は20億~200億円、事業費が膨らむほど利益を上げることは難しく、大半の施設が赤字運営を余儀なくされている。
有明アリーナが東京大会中にもたらす収益は以下の通りである。なお、チケット単価は予選、決勝トーナメント、席種別で大きく異なる。ここでは平均単価より少し高めに設定、満員御礼を想定した。
競技名 | 開催日 | チケット単価 | 収容人数 | 売り上げ |
バレーボール 予選男女 | 7/25~ 8/3 計10日間 | 9,000円 | 15,000人 | 13.5億円 |
バレーボール 準々決勝 | 8/4男 8/5女 | 16,000円 | 15,000人 | 4.8億円 |
バレーボール 準決勝 | 8/6男 8/7女 | 21,000円 | 15,000人 | 6.3億円 |
バレーボール 決勝 | 8/8男 8/9女 | 40,000円 | 15,000人 | 12.0億円 |
総観戦者数/総売り上げ | 240,000人 | 36.6億円 |
有明アリーナが利益を上げる可能性は低い。理由は以下の通りである。
①維持管理費が高い。
②使用用途を絞った点は素晴らしい。しかし、他のアリーナの売り上げ実績を見れば、同施設が維持管理費以上の収益を上げるにはかなりの営業努力が必要。
横浜アリーナ(総事業費300億円超)の営業収益/売上高は28億円。さいたまスーパーアリーナ(総事業費1300億円)は45億円。これらはスポーツだけでなく音楽イベントやライブなども開催し、施設の稼働率を上げている。しかし、日本を代表するアリーナでも50億円稼げないのだ。日本ではマイナーなバレー、バスケットボールの大会/合宿などで同じレベルの営業収益を上げる可能性は極めて低い。
<まとめ>
・アリーナは地域に人を集め、街の一部に利益(ホテルへの宿泊、物品の購入など)をもたらす。しかし、毎年数十億円の赤字を垂れ流せば、自治体の財政は圧迫される。そして、最後に負担を強いられるのは国民だ。
・スポーツだけでなく音楽イベント等にも力を入れれば、利益を上げるチャンスはある。
外部サイトへのリンク
<有明アリーナ 公式ホームページ>
有明アリーナもうすぐ完成❕☺
— Tokyo 2020 (@Tokyo2020jp) December 3, 2019
オリンピックではバレーボール🏐
パラリンピックでは車いすバスケットボール🏀の競技会場になります🎵#Tokyo2020 pic.twitter.com/WSI4G5XGSd
有明体操競技場(目次に戻る
名称 | 有明体操競技場 |
使用競技 | 体操他 |
施工者 | 清水建設 |
総事業費 | 205億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | 5億円 |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | - |
オリンピック終了後 | 展示場などとして使用 10年後に解体 |
『有明体操競技場』では体操やトランポリンなどの競技が行われる。木材をふんだんに使った施設の総事業費は204億円、オリンピック後はイベント、展示場などとして利用し、10年後には解体される運命だ。なお、木製のイスに長時間座っていると、お尻が痛くなるという。痔持ちの方は要注意だ。
有明体操競技場が東京大会中にもたらす収益は以下の通りである。なお、チケット単価は予選、決勝、席種別で大きく異なる。ここでは平均単価より少し高めに設定、満員御礼を想定した。
競技名 | 開催日 | チケット単価 | 収容人数 | 売り上げ |
体操 予選 | 7/25男 7/26女 | 17,000円 | 12,000人 | 4.1億円 |
体操個人/団体/種目別 決勝 | 7/27団男 7/28団女 7/29個男 7/30個女 8/3種 8/4種 | 50,000円 | 12,000人 | 36.0億円 |
新体操 予選 | 8/7 | 17,000円 | 12,000人 | 2.0億円 |
新体操 決勝 | 8/8 8/9 | 50,000円 | 12,000人 | 13.5億円 |
トランポリン 女子 | 7/31 | 50,000円 | 12,000人 | 12億円 |
トランポリン 男子 | 8/1 | 50,000円 | 12,000人 | 6.0億円 |
ボッチャ パラ五輪 | 8/29~ 9/5 計8日間 | 2,500円 | 12,000人 | 2.4億円 |
総観戦者数/総売り上げ | 252,000人 | 76.0億円 |
役人たちは木材を大量に使い、エコな競技場をアピールしたかったようだが、そもそも既存の施設を流用した方が自然にも財政にも優しい。樹木の伐採にケチをつけるつもりはないし、木造建築物に文句をいうつもりもない。しかし、204億円もの巨費を投じて10年後には取り壊す施設を造る意味がどうしても理解できない。
収容人数等の問題でどうしても既存の施設は使えないという場合でも、立派なアリーナが建設できるほどの費用を仮設競技場に投じるバカはいない。しかし、役人たちは非常識を非常識だと思わず、民間では考えられないバカを平然とやってのけるのだ。有明体操競技場はタダの無駄遣い、役人たちの利権とゼネコンとの癒着を象徴するハコモノと言えるだろう。
<まとめ>
・204億円の仮設競技場は、10年後に解体される。
・既存の施設を使えば、建設費(総事業費)を大幅に圧縮できる。役人たちの見栄と利権だけで大金を投じ続ければ、いずれしっぺ返しを受ける。
外部サイトへのリンク
<東京オリンピック 公式ホームページ>
有明アーバンスポーツパーク(目次に戻る
名称 | 有明アーバンスポーツパーク |
使用競技 | スケートボード他 |
施工者 | 大和リース |
総事業費 | 37億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | ー |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | ー |
オリンピック終了後 | 解体 |
有明北地区に設置される仮設競技場『有明アーバンスポーツパーク』では、スケートボード、自転車競技などが行わる。総事業費は37億円、大会終了後は解体されるため、維持管理費はかからない。同競技場の収容人数は、自転車競技(BMX)が5,000人、BMXフリースタイルが6,600人、スケードボードが7,000人を予定している。
有明アーバンパークがもたらす収益は以下の通りである。なお、チケット代はA席(15,000円前後)とB席(6000円前後)、競技種別で多少異なるため、少し高めの12,000円に設定、さらに満員御礼を想定した。
競技名 | 開催日 | チケット単価 | 収容人数 | 売り上げ |
BMXレーシング | 7/30男 7/31女 | 12,000円 | 5,000人 | 1.2億円 |
BMXフリースタイル | 8/1男 8/2女 | 12,000円 | 6,600人 | 1.6億円 |
スケートボード ストリート | 7/26男 7/27女 | 12,000円 | 7,000人 | 1.7億円 |
スケートボード パーク | 8/5男 8/6女 | 12,000円 | 7,000人 | 1.7億円 |
総観戦者数/総売り上げ | 51,200人 | 6.2億円 |
総売り上げは6.2億円、総事業費(37億円)を考えると少し寂しい結果にはなった。しかし、数万人規模の来場者、出場選手とその関係者が同施設周辺にもたらす利益は、総事業費を軽く上回るだろう。施設/競技場にかける費用を抑えるほど、得られる利益は大きくなる。「可能な限り費用を抑えた」仮設競技場で競技を行う手法には大賛成だ。
<まとめ>
・収容人数等の諸条件を考慮しなければならないが、支出は可能な限り低く抑える努力を。
・仮設競技場での大会運営には賛成。しかし、明らかに常軌を逸した金額であれば、無駄遣いと批判されるだろう。
・数億円の赤字であれば、開催都市への投資(来場者などが街に利益をもたらす)として割り切れる。
外部サイトへのリンク
<日本自転車競技連携 公式ホームページ>
有明地区。
— 湾岸暮らしの独り言。 (@wangan_goto) April 17, 2020
東京オリンピック202X。
有明アーバンスポーツパーク。
自転車競技BMXスケートボード。 pic.twitter.com/Fb0p2kKD5R
お台場海浜公園(目次に戻る
名称 | お台場海浜公園 |
使用競技 | トライアスロン他 |
施工者 | 大和リース |
総事業費 | 23.6億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | ー |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | ー |
オリンピック終了後 | 解体 |
『お台場海浜公園』近くに設置される仮設競技場では、トライアスロンやマラソンスイミングが行われる。総事業費は23.6億円、維持管理費はかからない。同競技場の水質は非常に悪く、「ウ💩コの匂いがする」「クサい」「草生えるw」と言った意見が噴出するも、競技は予定通り行われるようだ。なお、水質改善等の追加費用が発生すれば、総事業費に上乗せされることになる。
お台場海浜公園の仮設競技場がもたらす収益は以下の通りだ。チケット代は競技、A席とB席で異なるため、諸元にはトライアスロンのA席(8,000)を採用、観客は満員御礼を想定した。
競技名 | 開催日 | チケット単価 | 収容人数 | 売り上げ |
トライアスロン | 7/27男 7/28女 8/1混合 | 8,000円 | 5,500人 | 1.3億円 |
水泳 | 8/5男 8/6女 | 8,000円 | 5,500人 | 0.9億円 |
トライアスロン パラ五輪 | 8/29 | 8,000円 | 5,500人 | 0.9億円 |
総観戦者数/総売り上げ | 33,000人 | 3.1億円 |
残念ながらチケットの売り上げだけで総事業費を回収することはできなかった。しかし、ウ💩コクサい水の中を全力で泳ぐ選手たちの頑張りは、会場に感動と興奮をもたらすはずだ。さらに、他の仮設競技場と同じで、選手やその関係者、数万人規模の来場者がお台場にもたらす利益は計り知れない。
同競技場の赤字額は約20億円ほどになる見込みだ。費用を抑えた仮設競技場でも、チケット代で事業費を回収することは非常に難しい。「スポンサー収入」などで補うことができれば良いが、それも不可能であれば、国もしくは東京都が予算を工面するしかない。なお、東京大会の総予算は1.35兆円を予定しているものの、その規模は際限なく膨らみ続けており、最終的には3兆円を超える可能性が高いという。
<まとめ>
・お台場海浜公園の水質は非常に悪い。水質対策等で追加費用が必要になる可能性大。
・仮設の費用はある程度抑えられているが、チケット代だけで利益を上げることはできなかった。
・選手とその関係者、数万人規模の来場者はお台場とその一帯に利益をもたらす、かもしれない。
外部サイトへのリンク
<東京オリンピック・パラリンピック準備局 公式ホームページ>
潮風公園(目次に戻る
名称 | 潮風公園 |
使用競技 | ビーチバレーボール |
施工者 | 大和リース |
総事業費 | 40。4億円 |
維持管理費(単年) ※ライフサイクルコストから算出 | ー |
ライフサイクルコスト (一生涯にかかる費用。改修費等込み) | ー |
オリンピック終了後 | 解体 |
ビーチバレーボールは、1996年のアトランタオリンピックから正式種目に選ばれたアメリカ発祥のスポーツだ。東京大会では『潮風公園』内に設置される仮設競技場で計15日間の熱い戦いが繰り広げられる。なお、同競技場の収容人数は12,000人、総事業費は40.4億円で大会終了後は解体される予定である。チケットが完売しているかは分からないが、かなりの人気種目であることは確かだ。
潮風公園の仮設競技場がもたらす収益は以下の通りだ。なお、チケット代は予選、準々決勝、準決勝、決勝、そしてA席~C席で価格が大きく異なる。決勝のA席は45,000円とかなりの高額だが、予選のC席であれば3,500円で観戦可能だ。ここでの計算では、各ラウンドの平均価格より少し高めに設定し、満員御礼を想定した。
競技名 | 開催数 | チケット単価 | 収容人数 | 売り上げ |
ビーチバレー 予選 | 7/25~ 8/3 計10日間 | 8,000円 | 12,000人 | 9.6億円 |
ビーチバレー 準々決勝 | 8/4 8/5 | 11,000円 | 12,000人 | 2.6億円 |
ビーチバレー 準決勝 | 8/6 | 14,000円 | 12,000人 | 1.7億円 |
ビーチバレー 決勝 | 8/7 8/8 | 27,000円 | 12,000人 | 3.2億円 |
総観戦者数/総売り上げ | 180,000人 | 17.1億円 |
競技日数、チケット単価、収容人数はここまでで最高を記録したが、総事業費/仮設費を超える利益を上げることはできなかった。やはり競技単体で利益を上げるのはかなり難しいと言わざるを得ない。しかし、期間中の総観戦者数は180,000人、これに選手とその関係者、施設見学者等を含めると、潮風公園だけで200,000人以上の来場者が訪れる結果になった。
チケットの売り上げで総事業費を工面することはできなかったが、連日数万人単位の来場者が潮風公園周辺に集まることを考えると、約20億円の赤字なら街への投資と割り切ることもできる。維持管理費、改修費等のかからない「コストを抑えた」仮設競技場は、想像以上に多くの利益を街にもたらしてくれそう