2021年夏に開催できない場合、東京オリンピック2020は中止される

国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、東京オリンピック2020が来年夏に開催できなかった場合、バックアップ計画はないと述べた。

2020年7月24日~8月9日に予定されていた東京オリンピックは、コロナウイルスの影響で1年延期された。この結果、様々なスポーツ大会、大会に関連する事業、イベントが日程変更を余儀なくされた。同大会の延期に伴う経済損失は数千億円にのぼるという。

バッハ会長は、1年延期された同大会がコロナウイルスの影響で仮に開催できなかった場合、中止も視野に入れているようだ。同氏は、「東京オリンピック組織委員会に関連する雇用人数は3,000人から5,000人。彼らの雇用期間をこれ以上伸ばすことはできない」と述べた。

同大会の再編成作業は、現在粛々と進められている。しかし、課題が山積しており、それを全てクリアできるか否かは不透明な情勢だという。さらに、最大の懸念事項、コロナウイルスの扱いをどうするかは、完全に未知の状況である。

バッハ会長曰わく、ウイルスワクチンの開発は大会のタイムラインに加えていないという。各国政府はワクチン開発に全力を注いでいるものの、これが1年後に完成するという保証はなく、また、IOCがそれに携わることもできない。つまり、完全に運頼み、政府と科学者、医療関係者たちを信じて待つしかないのである。

ウイルスは沈静化した、という条件で再編成を行いつつ、最悪の事態に備える。バッハ会長はBBCの取材に対し、「無観客」での開催に否定的な態度を示したが、あらゆる可能性を考慮し、時間をかけて検討しなければならないと述べ、「東京オリンピックで全世界が結束する。コロナウイルスに勝利したと世界中にメッセージを送り、皆で祝いたい」と付け加えた。

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安部首相は、日本がコロナウイルスを抑え込めなかった場合、同大会を開催することは難しいかもしれないと認め、日本医師会の会長もワクチン開発の成否に依存することを示唆した。

大会中止に同意するか否かを尋ねられたバッハ会長は、「我々は世界保健機関の助言に頼っている。オリンピックは全関係者に安全な環境を提供しなければならない。1年後、世界がどうなっているかは誰にも分からない。我々は世界保健機関のアドバイスに従い、適切なタイミングで決断を下すことになる」と述べた。

2021年の夏までにコロナウイルスが収束しなかった場合、2022年夏への再繰り越しは非常に厳しいと言わざるを得ない。北京冬季五輪は2022年冬開催。この間わずか6カ月、さらにFIFAワールドカップ、各競技の世界選手権などの日程を組み合わせると、スポーツ界全体にとてつもない影響を与えるだろう。

バッハ会長は安倍首相に対し、2021年夏が「最後の選択肢」であることを伝えている、と述べた。「組織員会の雇用問題、ありとあらゆるスポーツ組織、連盟を巻き込んだ世界的なスケジュールの再々編成作業をクリアすることはできない。それに振り回されるアスリートたちのことも考えねばならないだろう。次に行われるオリンピックの日程を考慮しなければならないことは、日本も理解している」

東京オリンピックの開催に向けたありとあらゆるシナリオが想定されており、「無観客」も現実味を帯びつつあるようだ。来年夏、日本国内で社会的距離の確保およびその他のウイルス予防対策が継続されていれば、それも十分あり得るだろう。

バッハ会長は、「オリンピックは各国の選手と観客を団結させる。それこそがオリンピックの精神、根幹をなす普遍の原則である。世界中のファン、選手がオリンピックスタジアムに集まり、その中で同大会は開催されねばならない。我々は、アスリート、スポーツ連盟、世界保健機関、大会組織委員会との協議にもう少し時間をかけたい」と述べた。

IOCは同大会の延長に伴い、8億ドル(約850億円)の追加予算を確保した。なお、日本政府および組織委員会にかかる総費用は20億ドル~60億ドル程度になると試算されている。

21日、世界のコロナウイルス累計感染者数は500万人を突破、32万人以上が死亡した。欧州の感染者数及び死者数は減少傾向にあり、ロックダウンの段階的な緩和が進められているものの、アメリカ、南米大陸、アフリカ大陸、中東地域では依然予断を許さない状況にある。

5月に入り、日本国内の感染者数は大幅に減少した。47都道府県を対象としたロックダウンも、一部地域を残し解除されている。三密を避け、社会的距離の確保、マスクの着用、手洗いうがいの徹底が成果となって現れた。

しかし、2021年時点で日本がコロナウイルスとの闘いに勝利していたとしても、他国で感染が続いていればオリンピックの開催は難しいだろう。IOCと大会組織委員会は難しい舵取りと判断を迫られている。

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