◎東京五輪・パラ五輪の中止の決断は国際オリンピック委員会(IOC)が下すことになっている。
2021年5月14日/日本、東京2020組織委員会の本部前に設置された五輪(EPA通信)

5月14日、宇都宮 健児 弁護士は東京五輪・パラ五輪の中止を求める請願書を東京都に提出した。請願書には日本の総人口の0.3%に相当する35万人以上が署名した。

宇都宮弁護士は記者会見で、「国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府、東京都、そして組織委員会に大きな圧力をかけることができたと思う」と述べた。「国民は東京五輪を望んでいません」

しかし、請願書を受け取った東京都の小池都知事は記者団に対し、「安全安心な大会の開催に向けて粛々と準備を進めていきます」と述べた。

保健当局と政府のコロナウイルス分科会によると、日本の感染状況はここ数週間で大きく悪化し、主要都市の医療機関は崖っぷちに追い詰められているという。

政府はオリンピックのメイン会場である東京都を含む主要都市に非常事態を宣言し、感染者の抑え込みを図っているが、5月14日時点で大きな成果は現れていない。

政府は1年延期された東京五輪の開催に向けた動きを加速させ、安全安心な大会にすると繰り返し主張してきた。しかし、菅義偉首相は今週初めの会見で、「オリンピックは最優先事項ではなく、最終決定はIOCに委ねられるだろう」と述べた。

IOCと東京都の契約の「大会の中止」に関する規定は非常に単純で、中止の決断はIOCが下すことになっている。国際スポーツ弁護士のアレクサンドル・ミゲルメストレ氏によると、「オリンピックの所有者はIOCであり、契約を終了するかどうかはIOCが決める」という。

「コロナウイルスのパンデミックは第二次世界大戦レベルの脅威と見なされる可能性があり、中止を正当化できると思います。IOCは、大会の参加者が深刻な脅威にさらされると判断すれば、中止を決断するでしょう」

五輪憲章には「アスリートの健康を確保する」と書かれている。

一方、メルボルン大学のジャック・アンダーソン教授は現地メディアの取材に対し、「日本が一方的に契約をキャンセルした場合、それに関連する全ての損失は組織委員会が背負うことになるだろう」と述べた。

2021年5月14日/日本、東京都に東京2020五輪・パラ五輪の中止を求める請願書を提出した宇都宮 健児 弁護士(AP通信/Eugene Hoshiko)

アンダーソン教授は、「コロナウイルスの大流行と現在の状況は予測できなかった」と述べた。「契約は不測の事態を考慮したものになっていますが、現在の状況は前例のないものであり、関係者は非常に困惑しているでしょう」

「オリンピックは世界最大のスポーツイベントです。スポンサー契約は数十億ドル規模にのぼり、大会を中止すればIOCと日本政府は損失を補填しなければなりません」

専門家によると、最善のシナリオはIOCと日本政府が中止を受け入れたうえで、契約の枠組みに留まることだという。双方が契約に基づき中止を受け入れた場合、損失は保険で賄われる。

アンダーソン教授は、「東京五輪が中止になった場合、保険会社は史上最大規模の支払いに直面するだろう」と述べた。「保険は大会の費用(スタジアムの建設費、人件費、スポンサー損失など)を補填しますが、間接的な投資は恐らく対象外です。五輪の観光客需要に期待して資金を投入したホテル、レストラン、その他の様々な施設は大変です」

IOCは先日、大会に出場する選手や関係者にファイザー・BioNTechワクチンを提供すると発表した。対象は各国の選手、コーチ、関係者、スタッフ、幹部、ゲストなど。ただし、接種するかどうかは各国の判断に委ねられている。

IOCのトーマス・バッハ会長は5月6日の声明で、「ファイザーワクチンは東京五輪を安全かつ確実に開催するために役立つだろう」と述べ、IOCは大会の中止など微塵も考えていないと示唆した。

専門家は、「日本政府は様々な圧力に直面している」と指摘する。「政府を悩ませている問題はキャンセル料だけではありません。東京五輪は来年2月に開催される北京冬季五輪に大きな影響を与えます。中国は五輪の準備を全力で進めており、驚異的な勢いで国内のワクチン接種を進めています。しかし、東京大会が中止になれば、世界は共産党に圧力をかけるでしょう。共産党が大会を強行するようであれば、ボイコットを表明する国が出るかもしれません」

日本のワクチン接種は他の主要先進国に比べると大きく遅れをとっており、5月15日時点で少なくとも1回接種を終えた人は人口の約3%にとどまっている。

<ワクチン接種数/少なくとも1回接種した人の割合/5月15日時点
アメリカ:2億6,700万回/46%
中国:3億6,700万回/15%
インド:1億7,800万回/10%
イギリス:5,500万回/53%
ブラジル:5,000万回/16%
ドイツ:3,900万回/36%
トルコ:2,500万回/17%
イスラエル:1,100万回/63%
日本:560万回/3%

NHKの最新の世論調査(回答者2,331人)によると、東京五輪の中止を支持した回答者は36%、再延期は28.3%、予定通りは32.4%だったという。

東京五輪は7月23日、パラ五輪は8月24日に開幕する。

2021年2月2日/日本、東京都の自民党本部、森 喜朗 前組織委員会長
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