『kenta475699』です。
貴重な税金を浪費する東北地方と北海道の施設&第三セクターを紹介します。あくまで個人の主観で選んでいることをご理解下さい。
目次
・東北地方と北海道の年度予算
・雪の降る街
〇貴重な税金を浪費する施設&第三セクター(東北&北海道)
1.福島空港(福島県)
2.最上小国川ダム(山形県)
3.秋田内陸縦貫鉄道(秋田県)
4.復興関連予算(宮城県)
5.防潮堤(岩手県)
6.ブラジルサンバカーニバル旅行(青森県)
7.JR北海道(北海道)
8.除染作業(福島県)
9.ぶらっとぴあ(山形県)
10.成瀬ダム(秋田県)
11.吉田川堤防(宮城県)
12.オガール紫波(岩手県)
13.アウガ(青森県)
14.東郷ダム(北海道)
15.あぶくま高原道路(福島県)
16.秋田県立美術館(秋田県)
17.簗川ダム(岩手県)
18.YSアリーナ八戸(青森県)
19.夕張市(北海道)
20.福島第一原発(福島県)
まとめ
東北地方と北海道の年度予算
東北地方6県と北海道の平成30年度予算、人口、県民一人当たりの予算は以下の通りである。
H30予算(億円) | 人口(万人) | H30予算/人口 | |
福島県 | 14400 | 185 | 約78万円 |
山形県 | 6000 | 108 | 約55万円 |
秋田県 | 5800 | 97 | 約60万円 |
宮城県 | 16100 | 230 | 約70万円 |
岩手県 | 9500 | 123 | 約77万円 |
青森県 | 6600 | 125 | 約53万円 |
北海道 | 38700 | 528 | 約73万円 |
各県、北海道の予算は年度によって異なる。なお、福島県、宮城県、岩手県には「東日本大震災」関連の復興予算がプラスされている。大型公共工事(新幹線、高速道路新設など)が控えている場合も、同じように予算が多く配分されている可能性が高い。
東北地方の太平洋側は、2011年3月11日に発生した東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。特に沿岸部の被害は深刻で、あらゆるものが破壊され、人的被害、経済被害とも、日本の自然災害史上最悪を記録した。しかし、国を挙げて復興に取り組んだ結果、「目に見える」震災の傷跡はだいぶ薄れている。
チェルノブイリ原発事故に匹敵する規模となった「福島第一原発メルトダウン事故」の影響で、福島県民の一部は故郷を失い、同県の復興はまだまだ道半ばである。しかし、福島県はもちろん、東北地方に住む人々は力強く前を向き、信じられない勢いで街の活気を取り戻した。それを成しえたのは行政と住人の努力、他県からのボランティアや応援、復旧工事に携わった人々のおかげである。
雪の降る街
東北地方と北海道は「豪雪地帯」である。温暖化の影響で積雪量は減少しているようだが、それでも例年雪の事故や災害が後を絶たず、対応に苦慮している住民の姿を見ると気の毒に思う。東北地方の6県は除雪や雪の運搬搬出、委託料などに費用を投じねばならず、他の地方にはない対策費用に数十億円、北海道に至っては200億円をこえる予算を充てている。
北海道は47都道府県の中で一番の面積を誇り、人口も500万人を超えている。土地が広く人口も多いため、当然インフラ設備の量を多くなる。結果、インフラ設備の改修や修繕、除雪費用に多くの予算を投じねばならず、年度予算は巨大都市の大阪府や神奈川県に匹敵する規模となった。
東北地方の6県と北海道は、雪から県(道)民を守り、さらに行政サービスも充実させなければならない。復興事業も道半ばなので、予算を無駄にする余裕などないはずだ。しかし、他の地方自治体と同じく、役に立たないハコモノへの投資は震災以降も継続して行われている。
今回は東北地方と北海道の無駄な公共施設、公共事業、第三セクターなどを紹介する。なお、全て私の主観で選んでいることをご理解いただきたい。限りある予算は県(道)民のために正しく使われるべきだが、残念なことに無駄遣いされている事案が散見される。必要な予算(社会保障や福祉など)を確保した上で無駄をなくせば、復興事業はさらに加速するはずだ。
貴重な税金を浪費する施設&第三セクター
福島空港(福島県)(目次に戻る
福島県の空の玄関口『福島空港』は、他の地方空港と同じく厳しい経営環境に置かれている。1993年に開業し、利用者は順調に推移、1999年の年間利用者数は75万人を突破した。しかし、路線の廃止や便数の減少などの影響を受け、利用者は年々減少。唯一の国際線だった「上海・ソウル線」も廃止され、東日本大震災が発生した2011年の利用者数は過去最低の20万人にまで減少した。
総事業費 ※改修・増強費込み | 利用者数(国内外) 2018年度 | 経常損益 2018年度 | |
東京国際空港 | 2兆円 | 8100万人 | 677億円 |
新千歳空港 | 1兆円 | 2300万人 | 126億円 |
鹿児島空港 | 58億円 | 600万人 | 3.6億円 |
新潟空港 | 3000億円 | 110万人 | △15億円 |
釧路空港 | 2000億円 | 77万人 | △9.4憶円 |
福島空港 | 850億円 | 27万人 | △5.6億円 |
福島空港の利用客数は1999年から右肩下がりだったものの、滑走路などの増強に200億円以上を投資している。しかし、いくら空港の設備を充実させても、利用者の増加は見込めないだろう。インフラ系事業(高速道路・鉄道・空港など)の利用者確保のカギは、地域の魅力向上以外に考えられない。
福島県の魅力を日本だけでなく世界が知れば、観光客数は増加し自ずと福島空港の利用者も増えるはずだ。企業の進出も進み、優秀な人材が集まり、街は活性化、利用者を確保できれば、路線/便数の増加にもつながる。赤字の状態で滑走路を増強しても、年間の維持管理費が膨らむだけである。結果、同空港の赤字額は年々増加していった。
福島空港には毎年7億~8億円規模の補助金が投入されている。利用者数は2011年以降少しずつ増加しているものの、黒字を達成するにはさらなる努力が必要だ。インフラ系事業で利益を上げるコツは、初期投資(総事業費)を限界まで抑え、可能な限り年間の維持管理費を低く抑えることに尽きる。もちろん安全と品質をしっかり確保したうえでの話だが、無駄に豪勢/立派な施設など必要ないのだ。
東日本大震災と福島第一原発事故は大きな足かせ/ハンデだと思う。しかし、わずか8年で街の多くは復興し、人々は一定の生活を取り戻すことに成功した。福島県民のガッツと根性がフルに発揮されれば、福島空港の復活も夢ではない。本当の勝負はこれからだ。
<まとめ>
・利用者数は年々減少し、最盛期の1/3まで落ち込んでいる。
・施設を改修/増強しても利用者は増えないし、維持管理費の増加で自分の首を絞めるだけだ。
・福島空港・行政・県民が協力し、さらなる街の魅力向上に努めれば、利用者は必ず戻ってくる。
形態 | 空港 |
総事業費 | 560億円 |
累積税金投入額 | 850億円以上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 1120億~1680億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<福島空港 公式ホームページ>
最上小国川ダム(山形県)(目次に戻る
山形県内を流れる「最上小国川」は、天然アユが釣れる清流として知られている。同河川および最上川の治水目的で建設が進められる『最上小国川ダム』は、2015年に工事着工した。なお、同ダムの建設に反対する訴訟は2019年7月に原告側が敗訴したものの、判決を不服とし控訴、裁判は現在も続いている。
最上小国川は自然の状態が維持されている区間が多く、河川改修や堤防の増強は長い期間をかけてゆっくり進められている。同ダムの建設も治水事業の一環で、過去に発生した水害等を踏まえて計画されたものだった。なお、最上小国川は台風や大雨の影響で頻繁に氾濫を起こし、2018年8月には河川流域で大規模な浸水被害が発生している。
最上小国川ダムの建設に反対する「漁業組合」は、自然環境を壊すとアユの生態に深刻な影響を及ぼすと主張。一方、反対派に対立する行政と団体(観光組合など)は、同河川の氾濫が続ければ、町民の命と生活はもちろん、観光産業にも甚大な影響を及ぼす主張している。
治水事業は、自然に悪い影響を与える可能性が高い。仮にダムでなく河川改修や堤防の増強に方針転換したとしても、アユに一定の影響を与えることは確かだろう。なお、同ダムは「穴あき状態」で運用され、大雨時のみ水を貯め込むことになる。溜まった水は天候と河川の水量が落ち着き次第、一定の流量で放水されるという。
最上小国川ダムの総事業費は100億円以下であり、5000億円クラスの巨大ダムに比べると規模はかなり小さい。河川流域の住民を守ることを考えれば、必要な投資にも思えるが、アユの生態に影響を与えれば、山形県の観光産業は大きな打撃を受けるだろう。高等裁判所の判決に注目したい。
<まとめ>
・同ダムが建設されれば、アユの漁獲量に影響を与える可能性がある。
・最上小国川は過去に何回も氾濫を起こしており、治水事業は喫緊の課題。
・アユの漁獲量に影響が出れば、大切な観光産業は打撃を受ける。しかし、最上小国川の氾濫を防ぐことも大切だ。両者の対立は高等裁判所に委ねられた。
形態 | ダム |
総事業費 | 88億円 |
累積税金投入額 | 同上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 176億~264億円 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<山形県 公式ホームページ>
夜の最上小国川ダムの建設現場。 pic.twitter.com/QXBMyFzfuF
— kazu_ma (@kazu_ma634) October 10, 2016
秋田内陸縦貫鉄道(秋田県)(目次に戻る
秋田県内を走る「秋田内陸線(全29駅)」は、周辺住民の大切な移動手段/足として親しまれている。しかし、国鉄時代から利用者は年々減少し、民営化以降は赤字経営が続いている。同路線を運営する第三セクター『秋田内陸縦貫鉄道㈱』の目標は、赤字額を2億円未満に収めることだ。
雪の多い地域の鉄道事業者は、「除雪」という大きなハンデを抱えている。線路に積もる雪を除雪する「除雪車両」の運行と維持管理。さらに線路周辺の除雪は専門業者に委託しており、それらの費用は駅数、線路長に比例して大きくなる。雪の降らない地域に比べると、数億円の余計な出費が発生するため、より一層の経営努力が求められるのだ。
同第三セクターの存続条件は、「年間の赤字額を2億円以下に収めること」である。自治体の条件を受け、無駄の削減、さらなる経営改善に努めた結果、収支は確実に改善され、赤字額2億円以下を達成した。仮に収支が改善されなければ、秋田内陸縦貫鉄道㈱は解体、同路線の管理は自治体もしくは民間企業に変更、最悪の場合は「廃止/廃線」になる可能性もあった。
天下り役人の杜撰な経営でも存続できる「悪徳第三セクター」が存在する現実を知れば、頑張っている第三セクターへの投資など可愛く思える。東京都の某第三セクターは、毎年100億円もの赤字を計上しても一切お咎めを受けず、天下り経営者には役人報酬までしっかり支払われている。100億あれば、秋田内陸縦貫鉄道㈱を50年存続させることが可能だ。
前述の通り、同第三セクターの収支は確実に改善され、2018年度も赤字額2億円以下という目標はしっかり達成されている。除雪というハンデを抱えながらも頑張る姿勢は、他の第三セクター事業者も見習うべきだろう。なお、今後発生するであろう車両の更新、線路の改修等に備え、さらなる収支改善が求められるため、厳しい戦いはまだまだ終わりそうにない。今の収支改善ペースをさらに伸ばし、来るべき時に備えてほしい。
<まとめ>
・鉄道の廃止/廃線は、利用者の大切な移動手段を奪う。補助金が無駄という理由だけで廃線を決定すると、「住民より金が大切」と批判を受けかねない。
・天下り役人が経営する「悪徳第三セクター」に投入された税金の総額は数兆円規模。頑張っている第三セクターは救われず、クソの役にもたたないゴミが生き残っている現実。
形態 | 第三セクター |
単年の補助金投入額 | 2億円 |
累積補助金投入額 | 50億円 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | - |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<秋田内陸縦貫鉄道株式会社 公式ホームページ>
復興関連予算(宮城県)(目次に戻る
まず始めに、東日本大震災の『復興関連予算』は無駄ではない。しかし、予算を過剰に要求する、建設業者が確保できないという理由だけで工事単価を上げるなどすれば、「無駄遣い」と批判されるだろう。2011年に発生した震災以降、宮城県に充てられる同予算の累計は10兆円を突破する勢いだ。
震災が発生した直後であれば、まともな予算要求などできず、予算残を出すことも致し方ないと思う。しかし、復興の見通しがたった現在でも、予算の執行残は継続されているという。震災発生直後に閣議決定された復興関連予算は15兆円、そのうち4割が使われず、1兆円以上が国庫に返納された。
予算が余ったなら返納すればいい、と割り切りたくなるが、過剰な予算要求は他の地方自治体に大きな影響を与える。被害の大きかった宮城県に過剰な予算が割り振られた結果、他の地方自治体の予算は当然カットされるのだ。つまり、行われるべき/行わねばならない公共事業などが後回しにされる事態を誘発しかねない。震災の復興に予算を充てるのは当然だが、余るほどの予算を被災地に配分した結果、他の地域の河川改修等が遅れ災害が発生すれば、目も当てられないだろう。
被災した住民の生活を取り戻すためであれば、惜しみなく予算を使ってほしい。しかし、注意しなければならないのは公共事業である。破壊されたインフラ設備や公共施設を復旧させるのは当然だ。しかし、過剰に予算を投入し、豪華すぎる施設や利用者を確保できない下水道設備、道路などを造ったとしよう。数年後、それらの維持管理費は宮城県の財政を圧迫、最後に苦しい思いをするのは、税金を納める宮城県民である。
過剰な予算は過剰な公共事業/公共施設を生む。バブル時代の失敗を見れば、誰でも理解できるはずだ。ただし、被災者に罪はない。何も考えずに予算を配分する日本政府、そして予算執行のためにインフラ設備や公共施設を乱造する宮城県に問題があるのだ。豪華なハコモノを建設すれば、街の復興に役立ったように思える。しかし、最後は県民の首を絞めることになるため、適正な予算要求、予算執行に努めてほしい。
<まとめ>
・復興関連予算は無駄ではない。しかし、予算を過剰に要求する、工事単価を上げる、インフラ設備や公共施設の乱造は無駄遣いである。
・過剰に予算を要求すれば、他の公共事業に大きな影響を与える。行わなければならない事業(河川改修や堤防の増強)が遅れ、その結果氾濫や洪水が発生するかもしれない。
形態 | 復興事業 |
単年の復興予算規模 | 約1兆円 |
宮城県の復興予算累計 | 約10兆円 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | - |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<宮城県 公式ホームページ>
NHK福島(8/29):復興概算6年減額から増額にhttps://t.co/OvtioPk1tQ「復興庁は、来年度予算案の概算要求で、東日本大震災の復興関連予算について、道路整備などの公共事業や原子力災害からの再生事業を中心に、1兆6980億円あまりとする方針を固め、要求額は6年続いた減額から増額に転じました」 pic.twitter.com/nXGQoABupK
— momo4leaf (@Momo4leaf) September 6, 2019
防潮堤(岩手県)(目次に戻る
前述の「復興関連予算」は、岩手県と福島県にも計上されている。ここでは、岩手県の海岸線に建設が進められている『防潮堤』を紹介しよう。政府は津波から沿岸部を守るために、高さ10m超、全長400kmの壁を海岸線沿いに建設している。総事業は1兆円規模になり、工事の竣工は2028年頃の予定だ。
震災当時、防潮堤の建設は必須という意見が大勢を占めた。しかし、いざ街の復興が進むと、巨大過ぎる防潮堤の建設に反対する意見が出始める。理由は以下の通りだ。
①10m超の津波が押し寄せれば、防潮堤は意味をなさない。
②1兆円をかけても、街を守れる保証はない。
③海が見えなくなる。大切な観光資源である海/景色が失われてしまう。
④同じ地域で東日本大震災クラス(M9.1)の地起きる可能性はかなり低い。今は東南海・南海地震に備えるべきだ。
私は防潮堤の建設に賛成だが、①②の意見には反論できないし、確かにその通りだと思う。④に関しては「備えあれば患いなし」だろう。しかし、発生が危惧されている「東南海・南海地震」の対策も早急に進めなければならない。ちなみに、防潮堤は岩手県沖だけでなく、宮城県、福島県沖でも建設工事が進められている。
防潮堤の建設には賛否あるが、今は予算の許す範囲でできる限りのことをする以外手はない。建設工事は既に始まっているので、あとは竣工に向け歩を進めるのみである。仮に同地域で巨大津波が発生し防潮堤がそれを防げば、政府は賞賛されるだろう。しかし、東南海・南海地震が発生し、関東、中部、近畿地方が壊滅すれば、なぜ防潮堤の予算を同地方に回さなかったのか、と非難されるかもしれない。
岩手県沖に建設中の防潮堤が、沿岸部に住む人々の命を守る「最後に砦」になってくれれば嬉しい。復興に関連する予算が適切に使われ、被災者の生活が全て元通りに戻れば言うことなしだ。あとは、地震/津波を100%予知できるシステムが開発されれば大変素晴らしい。「水防事業」は災害が発生するリスクの高い場所/地域、経済(損失)規模などを考慮し行われている。防潮堤が無駄にならないことを祈ろう。
<まとめ>
・防潮堤建設には賛否あるものの、今はできることを計画的に進める以外手はない。
・防潮堤の建設要否は、現在のテクノロジーでは判断できない。
・防潮堤は、岩手、福島、宮城県の沿岸部で生活する人々を守るために建設されている。
形態 | 防潮堤 |
単年の復興予算規模 | 500億円 |
防潮堤建設にかかる総予算 | 約1兆円 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 2兆~3兆円 |
役立たず度(5段階) | ☆☆☆☆☆ 0 |
外部サイトへのリンク
<岩手県 公式ホームページ>
ブラジルサンバカーニバル旅行(青森県)(目次に戻る
青森県には素晴らしい特産品やイベント、観光地などがある。日本中で愛されている「リンゴ」の生産量はダントツの日本一。また、300万人近い来場者を記録する「青森ねぶた祭」を知らない人はいないだろう。しかし、2015年に発生した恥ずかしい事案の影響で、青森県のイメージは大きく低下してしまった。
2015年、二人の青森県議会議員は、「ねぶた祭りの山車」をブラジルで披露する市の事業になぜか同行。提出された報告書(A4用紙1枚)には、「ブラジル人の反応を見れてとても良かったです」と記載されていた。なお、同議員は『ブラジルサンバカーニバル』もちゃっかり視察しており、大変満足した様子だったという。その事実を知った「弘前市民オンブズパーソン(行政監察委員)」は青森県知事を告訴、議員二名に支払われた旅費140万円を返還させる訴訟に発展した。
2019年、仙台高等裁判所は原告の訴えを支持し、議員二名に支払われた旅費140万円の返還を命じる。青森県知事はこれを不服とし最高裁判所に上告するも、同年10月に棄却され判決は確定した。議員二名のブラジル視察は無意味、つまり旅行同然だったという訴えは認められたのだ。
議員が海外視察に行く理由は様々だが、成果をしっかり持ち帰ってくる方たちもいる。以下はその一例である。成果、報告書、そして実績を上げれば、文句を言うものなど出てくるはずもない。
①海外の地方再生手法を視察。事前に確認する地域、場所、人などを精査し、無駄なく現地調査を済ませ、議会に持ち帰る。
②視察で得た知識を元に報告書を作成。そしてそれを活かした議題を提案する。さらに、県民にも広く情報を発信し、勉強会などを開くとなお良い。
海外の地方再生手法が日本で通用するかは分からないが、自分なりに考えをまとめ、地域のため、そして県民のために全力を尽くしていれば、その頑張りは必ず評価される。サンバカーニバルでブラジル女のお尻を視察しても、県民の怒りを買い、訴えられるだけだ。なお、旅費返還を命じられた「神山久志」は、2019年4月に行われた県議会議員選挙で落選、「寺田達也」は見事再選を果たしている。
<まとめ>
・公金で海外視察を行うのであれば、報告書はもちろん、成果と実績を上げねばならない。
・サンバカーニバルでブラジル女のお尻を追いかけた罪は重い。
・議員の海外視察が度々問題になっているが、しっかり成果を持ち帰る/実績を上げる方もいる。
形態 | 県議会議員 |
ブラジルサンバ旅行の旅費 | 140万円 |
神山久志の選挙結果 寺田達也の選挙結果 | 落選 当選 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 数千万円 ※寺田達也議員の給与 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<青森県議会議員 寺田達也 公式ホームページ>
【リオリンピック2016】待ち遠しい!もうひとつの楽しみ!それはブラジルサンバ!カーニバル!【画像集】 https://t.co/hRamWrmPf0 pic.twitter.com/FbY18d6irs
— オリンピック東京 (@olympictokyoco) May 30, 2016
JR北海道(北海道)(目次に戻る
雪国北海道の鉄道事業を担う『JR北海道』は、1987年の国鉄分割民営化以降、営業黒字を達成したことはない。政府は北海道での鉄道事業で収益を上げることは最初から不可能と認め、「経営安定基金」を設立、その運用益を営業損失に補填することを前提に経営/運営されることが決まったのだ。
基金の規模は7000億円弱、毎年の運用益は200億~300億円、それを営業損失に補填しても営業黒字を達成することはできていない。2018年度の営業損失は550億円にものぼり、国は安全対策費用などへの「財政支援」を行うと公表した。
JR北海道が収益を上げられない理由は以下の通りである。
①除雪費用という大きなハンデ。その費用は年間100億円超。
②広大な土地をカバーするため、路線長が長くなる。点検、修繕、改修費用が膨大。
③人口の少ない都市を結ぶローカル路線が多い。街ひとつ当たりの人口は少ないため、乗車率は当然低い。JR北海道の運行する路線は、全て赤字である。
④便数を増やすほど赤字額は膨らむ→便数を減らす→住民は車を使わざるを得ない→利用者が減り赤字が膨らむ、という負のスパイラル。
⑤北海道新幹線新設が更なる負担を生んだ。借入金、同路線の単年赤字50億~100億円は、経営状況のさらなる悪化につながりつつある。
JR北海道が営業黒字を達成する、国からの財政支援を受けないためには、路線を減らす以外に手はない。(電気を一切使わない画期的なシステム、除雪不要のスーパートレインが開発されれば話は別だが、まずあり得ないだろう)現在、同社と地方自治体で話し合いが行われており、バスへの切り替えやさらなる便数減で調整が進められている。
収益を上げるには、赤字を生み出す路線を切り捨てればいい。しかし、車を持たない高齢者や学生の生活も守りたい。政府は、赤字ありきでJR北海道に同地域の鉄道事業を任せた以上、最後まで面倒を見なければならないだろう。財政支援を打ち切れば、「北海道民より金が大事」「北海道民を見捨てた」と見なされるのだ。この「無理ゲー」をクリアする方法は、今のところない。なお、地方自治体が運営するバス事業も赤字が規定路線、補助金ありきの経営を余儀なくされている。
<まとめ>
・除雪費用、広大な土地、そして新幹線の新設が大きな負担。
・路線を減らせば利用者は困る。バスを増やせば自治体の負担(補助金)が増える。まさに打つ手なしの状態だ。
・JR北海道はさらなる経営改善に努めなければならない。そして政府も、同社に北海道の鉄道事業を任せた以上、最後まで面倒を見なければならないだろう。
形態 | 民間企業 |
予定されている財政支援 | 400億円 |
財政支援の累計 | 1000億円超 |
2018年度の営業損失 | 550億円 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<JR北海道 公式ホームページ>
除染作業(福島県)(目次に戻る
『除染作業』とは、放射能に汚染された物を除去、もしくは覆うなどして放射線量を下げることである。「福島第一原発メルトダウン事故」の影響で、同原発の周辺地域は放射能に汚染され、住民は大切な財産を失った。一部の地域は立ち入り制限を解除されているものの、東日本大震災から8年経った今も除染作業は延々と続けられている。
東京電力は国営化され、除染作業は政府が主体となって進められている。投じられた費用は2兆円を超えたものの、終わりは全く見通せない状況だという。土、施設、あらゆる物質の放射線量を下げねばならず、除染作業員にかかる負担も尋常ではない。なお、除染作業を行うには特殊な装置や防護服、ノウハウ等が必要であり、政府(東京電力)の発注する工事は、スーパーゼネコンなどが独占して行っている。
除染作業は金を生む。500億円規模の工事はざらにあり、スーパーゼネコンの貴重な収入源になっているのだ。前述の通り、特殊な装置や防護服、ノウハウがないと行えないため、特定の企業が利益を独占できる点に問題を感じるものの、今のところ打つ手はない。なお、公共事業の入札は複数社での「競争入札」を基本とするが、除染作業に関しては決まった企業が工事をバランスよく分担、1社での入札も普通に行われている。
除染作業に関連する工事と東京電力には批判が相次いでいる。その代表例は下記の通りだ。
①除染作業を特定の企業が独占している=ノウハウを持っている企業が少ないため、現状打つ手なし。
②国営企業になった東京電力の平均給与(約750万円)が高すぎる。また、役員報酬も普通に支給されている。
③現場で命を懸ける除染作業員は、非正規雇用の労働者が大多数を占める。
福島県民の生活を取り戻すためとはいえ、一部の企業が利益を独占していること、そして国営企業になった東京電力の現状には怒りを覚える。しかし、現場で命を懸けて働く除染作業員に罪はない。福島第一原発のメルトダウン事故は、国民に恐ろしい負担を強いることになった。しかし、除染作業にかかる5兆円の負担など始まりに過ぎない。地獄の門はまだ開いてもいないのだ。
<まとめ>
・除染作業には特殊な措置や防護服、ノウハウ等が必要。
・除染作業に関連する工事は、特定の企業(主にスーパーゼネコン)が独占している。
・国営企業になった東京電力、そして破損した福島第一原発に投じられる税金は、常軌を逸した額になる。
形態 | 除染作業 |
これまでにかかった費用 | 2兆円以上 |
除染にかかる費用※推定 | 5兆円以上 |
失われたもの | 福島県民の財産 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<東京電力ホールディングス 公式ホームページ>
福島原発が爆破された後の除染作業の様子。初公開。放射線が強く、青白く光っている。 pic.twitter.com/gzxco2v3R1
— 世界銀行300人委員会 (@someone5963) December 23, 2018
ぶらっとぴあ(山形県)(目次に戻る
1994年3月、道の駅『ぶらっとぴあ』は山形県西村山郡に建設、開業した。総事業費は約5億円、人口1.7万人の河北町にとっては大きな支出だったが、地域再生に寄与すると期待されていた。しかし、翌年3月、ぶらっとぴあは運営会社との委託契約を更新せず、休館が決まる。
ぶらっとぴあで営業を行っていたレストラン経営者は、突然の休館宣言に怒りを爆発させる。自治体(JA)は経営者と「5年契約」を口約束していたのだ。同レストランは施設に発電機等を持ち込み営業を続行するも、河北町はこれを阻止すべく営業停止の仮処分申請を裁判所に提出した。これにブチ切れた経営者は、負けじと「営業妨害に対抗する訴訟」を起こす。二つの案件はどちらも棄却され、両者は即時抗告、訴訟合戦に発展した。
訴訟の詳細は割愛する。ぶらっとぴは開業からやずか1年で休館、トイレのみオープンという状態が3年近く続いた。1998年、河北町は紛争部分を除く一部施設の営業を開始。そして2000年、ようやく全施設で営業が再開された。しかし、売り上げは思ったほど伸びず、営業損益は毎年赤字、これまでに投入された補助金の総額は1億円を超えた。
全国には1100を超える道の駅がある。そして、その大半は赤字経営を余儀なくされているのだ。代表的な理由は以下の通りである。
①過剰な設備投資。利益で維持管理費を補填できず、補助金に頼らざるを得ない。
②利用者が少ない。初期投資を抑えても、利用者を確保できなければ収益を上げることはできない。
③施設に魅力がない。どこでも手に入る野菜、菓子、レストランに人は集まらない。
ぶらっとぴあの初期投資(5億円)はある程度抑えられている。しかし、それでも施設の売り上げで維持管理費を補填することはできなかったのだ。しかし、赤字続きだった道の駅が復活した、という例は多々ある。同道の駅はさらなる営業努力を、そして行政と地域住民が一体となって町全体を盛り上げ、特産品等の販売力を向上させれば、形勢逆転も十分可能だ。
群馬県にある「道の駅川場田園プラザ(総事業費25億円)」は、赤字経営を脱却し、毎年15億円以上の利益を上げるまでに成長した。営業努力、そこにしかない特産品販売、官民一体の町おこし(イベントの開催)などを駆使すれば、現状は必ず打破できる。
<まとめ>
・1999年、河北町とレストラン経営者の訴訟合戦は、同町の勝訴で結審した。
・道の駅(ハコモノ)を建設すれば人が集まる、という考えは間違い。市場調査等をしっかり行い、利益を上げれる公算がなければ、計画断念が妥当。
・初期投資をある程度抑えているため、今後の頑張り次第で黒字転換も十分可能。
形態 | 道の駅 |
総事業費 | 5億円 |
累積税金投入額 | 1億円 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 10億~15億円 |
役立たず度(5段階) | ★★☆☆☆ 2 |
外部サイトへのリンク
<ぶらっとピア 公式ホームページ>
成瀬ダム(秋田県)(目次に戻る
『成瀬ダム』は、秋田県雄勝(おがち)郡を流れる「成瀬川」の上流で建設が進められている多目的ダムだ。成瀬川および、同河川の本流「皆瀬川」と「雄物(おもの)川」流域の治水、利水を目的としており、2022年の運用開始を目指している。
建設に反対する住民訴訟については、2017年に原告敗訴で結審済みである。反対派は環境破壊、過剰な負担金(事業費)を違法と訴え控訴したものの、棄却され工事の正統性が認められた。成瀬ダムは成瀬川他の流域住民を一定の確率で守れるとは思う。しかし、同河川に関連する治水事業は、ダムに集中し過ぎている可能性が極めて高い。
成瀬川、皆瀬川、雄物川の3河川は、氾濫や越水を幾度となく繰り返している。理由は以下の通りだ。
①3河川は高低差の少ない地域を流れており、さらに堤防が非常にもろい。
②堤防の改修/増強工事は予算の都合で思うように進んでいない。
県内を流れる成瀬川、皆瀬川、そして雄物川の河川改修/堤防増強は喫緊の課題である。河川上流に建設されるダムは、その地域で大雨が降れば治水に一定の効果を発揮する。しかし、雨のポイントが少しずれれば、河川に流れ込む水を抑えることはできない。昭和に発生した水害を含めると、3河川の氾濫/越水実績は10回を軽く超える。
ダムに偏った治水事業は非常に危険だ。成瀬ダムが治水に効果を発揮することは間違いないものの、まずは河川本体の改修/堤防増強を急がねば、水害は繰り返されるだろう。特に雄物川の氾濫/越水実績は酷い。5000戸以上の浸水被害が5回、死者を出した水害も3回発生している。
秋田県内の河川改修工事は一定のスピードで進められている。しかし、成瀬ダム他のダム事業にかけられる予算は、同工事のスピードを間違いなく減退させるだろう。繰り返しになるが、ダムに偏った治水事業で水害は防げない。まずは河川本体の弱点部を改修、さらに堤防等を造ることで防御を固めなければならない。成瀬ダムに注力し河川の改修が進まず、過去と同規模の水害が発生すれば、辛い思いをするのは河川流域の住民たちだ。
<まとめ>
・成瀬ダムが建設される成瀬川、同河川の本流「皆瀬川」「雄物川」では、氾濫/越水被害が頻発している。
・3河川の堤防は非常にもろい。平成に入ってからも水害が頻発しているため、河川改修が順調に進んでいるとは到底言えない。
形態 | ダム |
総事業費 | 1530億円 |
累積税金投入額 | ー |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 3060億~4590億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<秋田県東成瀬村 公式ホームページ>
今日の成瀬ダム特別見学会
— 愛犬家(クロ) (@kuro96ef) October 26, 2019
紅葉も楽しめる見学会 pic.twitter.com/sCYDKszxRL
吉田川堤防(宮城県)(目次に戻る
2019年10月に関東、東北地方を襲った台風19号は、各地に甚大な被害をもたらした。ここで紹介する『吉田川堤防』もそのひとつである。同河川にはダムが建設されておらず、治水事業の要(かなめ)は河川改修と堤防の増強だった。
吉田川堤防のある大郷町(おおさとちょう)は、河川改修と堤防の増強を過去から宮城県と国に要望し続けていた。しかし、小さな町の公共事業は後回しにされ、巨大都市の大規模開発、第三セクター、そして震災復興関連事業が優先された。結果、吉田川堤防の改修予算は確保されず、弱点箇所は長期間放置されることになった。
吉田川は台風19号の大雨で水位が上昇、氾濫危険レベルを超え、弱点箇所の堤防は何と100mに渡って崩壊した。同河川流域の大郷町は「水没」し、家屋、農地などに甚大な被害をもたらした。唯一の救いは、水没した大郷町から一人の死者も出なかったことである。吉田川流域では過去から氾濫/越水被害が多発していた。そのため、今回も大雨が降り始めた時点で住民の大半は避難を済ませており、最悪の事態だけは免れたのだ。
公共事業の無駄が日本中で話題になったものの、無駄なハコモノや施設、第三セクターへの投資は一向に無くならない。首都TOKYOの機能を際限なく増強し、第三セクターに1000億円規模の補助金を投入すれば、地方に回す予算が少なくなるのも当然だ。吉田川堤防の決壊は天災ではなく人災である。予算を確保すべく大郷町は尽力したが、結果は見ての通りだ。
吉田川堤防にかかる費用(10億円)が安いとは思わないものの、大郷町が受けた甚大な被害を見れば、安い投資と言わざるを得ない。水没した大郷町住民の半数は、転居を余儀なくされた。公共事業、第三セクターへの無駄遣いが無くならない限り、今回と同じような事案は日本中で発生し続けるだろう。
過去に氾濫/越水を起こしたことのある堤防の改修は、ダム建設より急がねばならない。その他の弱点箇ももちろん同じだ。無駄なハコモノに費用を投じ、本来予算を投じねばならないものがなおざりにされれば、取り返しのつかない事態を招くだろう。
<まとめ>
・吉田川堤防の決壊は天災ではなく人災。
・小さな町が要求した10億円は出し渋り、無駄な公共事業と第三セクターに予算を回す現実。
・治水事業の失敗は致命的な事態を招く。予算の許す範囲で弱点箇所の改修を早急に進めなければならない。
形態 | 堤防 |
総事業費 | 10億円 |
台風19号の被害額 ※宮城県のみ | 1000億円超 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | ー |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<宮城県大郷町 公式ホームページ>
R45東松島市上下堤冠水で進めず。脇道から吉田川堤防に上がったけど車進まず。2枚目は田んぼ…途中、稲刈り前のも見たけど、つらいな… pic.twitter.com/L3LG0jSbD7
— こっぱたん (@koppatan) October 13, 2019
オガール紫波(岩手県)(目次に戻る
岩手県紫波(しわ)郡紫波町の一区画に整備された『オガール紫波』は、地方再生事業のモデルケースと呼ばれ、日本中から視察、見学者がひっきりなしに訪れるという。官民が一体となって行われた開発事業は、「補助金に頼らない」街づくりを目指した。
地方自治体は、地方再生という大義名分をかざし、立派な商業施設、ホテル、道の駅などをあちこちに乱造。ハコモノを建設すれば人が集まり、街が活性化すると確信し、訳の分からない開発事業を次々に行った。さらに、この「法則」は公共施設にも採用される。ここまで紹介してきた通り、立派な高速道路、新幹線、空港を建設すれば、勝手に人が集まり、踊り狂い、酒を酌み交わし、酒池肉林の宴が連日連夜繰り広げられ、人口と税収は爆発的に増加すると夢想したのだ。
オガール紫波で展開された「オガールプロジェクト」は、民間主体で行われた。そのため、区画内に建設する施設は用心に用心を重ね、本当に利益を上げることができるのか、初期投資(事業費)は適正か、テナントはどうするのか、といったことなどを数年かけて徹底的に検証した。
オガール紫波内に造られた施設は、官民が連携して運営を行っている。総事業費を限界まで抑えた「紫波町図書館」の利用者は年間70万人を超え、施設内にあるテナント(レストラン、アウトドア用品店、地域の特産品を販売する「紫波マルシェ」など)の売り上げに大きく貢献。さらに、スポーツ関連の施設(アリーナ、体育館、ジムなど)なども充実。さらに、バイオマス燃料を使った自家発電所(もちろん事業費は限界までカット)まで建設し、オガール紫波内の電力を賄っている。
役人たちのハコモノ乱造プロジェクトを「反面教師」にすれば、成功への道は必ず開ける。しかし、オガール紫波の街づくりを真似すれば全て上手くいくと思うのは間違いだ。同プロジェクトを進めた優秀な人材たちは、「努力に努力を重ねて」オガール紫波を造った。形だけマネして費用を投入しても、ハコモノ乱造プロジェクトと同じ結果を招くだけだろう。
<まとめ>
・民間企業は利益を追求し、無駄を一切省く。
・オガール紫波は、行き当たりばったりのハコモノ乱造プロジェクトとは正反対の事業方針を徹底した。
・オガール紫波の形だけを真似しても、経営は必ず行き詰る。
形態 | 官民連携プロジェクト |
総事業費 | 50億円 |
累積税金投入額 | 0円 ※利益で補填済み |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 100億~150億円 ※施設は少しずつ増強されている |
役立たず度(5段階) | 💛💛💛💛💛 文句なし |
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<オガール紫波 公式ホームページ>
アウガ(青森県)(目次に戻る
青森県青森市の中心市街地に建設された複合商業施設『アウガ』は、地方再生事業の成功モデルとしてもてはやされ、全国から見学/視察者が相次いだ。同施設を含む「都市開発計画」は、バブル景気で日本がイケイケドンドン状態の中で策定された。
アウガを建設/運営管理するために設立された第三セクター「青森駅前再開発ビル㈱」は、同施設を建設するために銀行からの借り入れと青森県からの補助を受けた。付帯工事/周辺の開発等を含めると総事業費は200億円以上。アウガは、青森駅前の活性化、企業誘致、そして人口増などを期待されつつ、2001年にグランドオープンした。
同年、アウガの最終損益は2億円超の赤字を記録、青森駅上空に暗雲が立ち込める。しかし、自治体関係者と青森駅前再開発ビル㈱は自分たちの置かれた状況を理解できなかったようだ。200億円以上をかけて造った立派な複合商業施設が赤字を計上した理由は以下の通りである。
①利用者が想定よりはるかに少なかった。
②テナントの魅力ゼロ。施設に魅力がなければ人は集まらない。
③銀行からの借入金と施設の維持管理費>>>>>>>アウガの収益
アウガと同じ運命をたどった公共施設/複合商業施設は全国に腐るほどある。大阪市に建設された「アジア太平洋トレードセンター(通称バブルの塔)」の総事業費1500億円超、運営する第三セクターは1000億円以上の負債だけを残し経営破綻した。しかし、アウガレベルの知名度はない。
青森県および国が犯した最大の過ちは、同施設を地方再生事業の成功モデルとして全国の自治体に宣伝したことだ。開業年から赤字を記録したハコモノは、全国の役人たちのハートをガッチリキャッチ、結果、全国でアウガに似た複合商業施設が乱造された。
前項で紹介した「オガール紫波」とは正反対の計画「行き当たりばったりのハコモノ乱造プロジェクト」が成功する確率は限りなく低い。2015年、青森駅前再開発ビル㈱は事実上経営破綻。銀行からの借入金は不良債権(踏み倒し)となり、アウガは青森市が所有することになった。なお、同施設のテナントには青森市役所の部署が入り、維持管理費は青森県民から徴収した税金で支払われている。
<まとめ>
・アウガは成功モデルとして全国展開され、同じような施設が乱造される事態を招いた。
・行き当たりばったりのハコモノ乱造プロジェクトが成功する確率は限りなく低い。
・役人に複合商業施設を造らせてはいけない。「くさい」「ダサイ」「アウト・オブ・眼中」「マジ卍w!」と馬鹿にされるだけだ。
形態 | 複合商業施設 |
総事業費 | 200億円 |
累積税金投入額 | 200億円以上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 400億~600億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<アウガ 公式ホームページ>
アウガ【青森市】
— ヨハン・シュトラウス2世 (@straussmania) November 16, 2018
魚市場を地下に作るという常軌を逸した造りのせいで服屋が多数入居していたのに魚臭いエレベーター
再開発の成功例として全国から視察が来ていたが経営状態は公開されず。市長が変わり情報公開請求したら開業以来一度も黒字になっていなかったことが発覚
#クソ物件オブザイヤー2018 pic.twitter.com/eFJVz51jex
東郷ダム(北海道)(目次に戻る
『東郷ダム』は、北海道富良野市の山中に建設が計画された。石狩川水系沢川を水源とし、富良野市の農業/生活用水を供給する役目を期待され、工事はスタートする。なお、沢川の河川流域には人がほとんど住んでおらず、過去に水害が発生した実績はない。同ダムの建設工事は1970年代に始まったが、未だに竣工の目途はたっていない。
東郷ダムの建設地とその周辺に集落や民家はなく、反対運動等は一切起きなかった。工事は順調に進み、1993年に本体が完成。しかし、いよいよ事業開始と思った矢先に問題が発生する。川の水を引き込んでも水が一向に溜まらなかったのだ。大雨が降ってもなぜかダムは枯れたまま。地質調査を行った結果、当ダムの地盤/岩盤には複雑な亀裂があり、水がダダ漏れになっていることが判明する。
同ダムを所管する農水省は、ダムの漏水個所を補強すべく追加工事を実施。しかし、地盤/岩盤の亀裂を塞ぐことはできず、これまで水が貯められたことは一度もない。さらに、富良野市は農業/生活用水に困ったことが一度もなく、市民は同ダムの存在自体を忘却の彼方に葬り去った。
東郷ダムは利水への利用価値ゼロ。さらに水を貯めることもできず、雨が降ると地盤の亀裂から水が染み出し、沢川の水位調整すらできない状態である。前述の通り、同ダムの追加工事は現在も継続中だが、竣工の目途はたっていない。
東郷ダムの問題点は以下の通りである。
①水の供給に困っていない地域に利水目的のダムを建設。
②地質調査および工事計画調査不足。地盤の亀裂に気づいていれば、対策を打てたかもしれない。
③治水利用しようにも、水を貯めることすらできない。
富良野市の「オブジェ」と化した東郷ダムは、念願の貯水を達成すべく追加工事が進められている。しかし、農業/生活用水供給の仕事を奪われた時点で、水を垂れる意味はないと思う。なお、同ダムに投じられた費用は400億円超。まさに「無駄無駄無駄無駄無駄無駄」である。
<まとめ>
・富良野市は農業/生活用水に困っていなかった。
・どんなダムにも一定の治水効果がある。しかし、東郷ダムは水を貯めることすらできない。
・同ダム建設にかかった400億円はドブに捨てたも同然。
形態 | ダム |
総事業費 | 200億円 |
累積税金投入額 | 400億円以上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 400億~600億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★★ 6 |
外部サイトへのリンク
<東郷ダム グーグルマップ>
あぶくま高原道路(福島県)(目次に戻る
「道路建設は税金の無駄遣い」とよく批判されているが、全ての道路が無駄だとは思わない。AからBを結ぶルートがひとつしかなく、台風や地震等で寸断されてしまえば、物質の供給や避難に大きな影響を与える。「代替えルート」の確保は、災害や事故から国民の命と安全、生活を守るために欠かせない。
街と街が高速道路もしくは一般道でつながり、そこを物資が通る。さらに人が行き来し、日本の経済は大きく発展してきた。新しい道路は災害時の代替えルート兼慢性的な渋滞の解消、日本の経済を発展させる大切な公共施設である。これを言い換えると、街と街を結ぶルート(代替えルートを含む)が確立され、渋滞が発生していない地域に新しい道路を造る意味はない、ということだ。
ここで紹介する『あぶくま高原道路』は、福島県の山中に建設された全長約36kmの高速道路である。「西白河郡矢吹町(人口17000人)」と「田村郡小野町(人口9500人)」を結ぶ新ルートの総事業費は1300億円超。なお、両町を結ぶ県道は複数本存在し、災害時の代替えルートは既に確保されていた。
災害を考慮した代替えルートが「複数本」確立されている地域に建設された高速道路は、無駄以外の何ものでもない。なお、あぶくま高原道路と並行して走る複数本の県道が渋滞することはほとんどないという。渋滞緩和に一定の効果を果たせばまだ救いようがあるものの、それすら必要ないのだ。1300億円あれば、同地域の県道と歩道の整備、付帯設備(信号機やガードレールなど)の改修、周辺樹木の伐採などを満遍なく行えるだろう。
高速道路建設は大金が動く。役人は「ひいきのゼネコン」を儲けさせるため、そして地元の有力者の「票」を確保するために、無意味な高速道路建設を推進する。あぶくま高原鉄道の費用は、言うまでもなく国の財源から支出されている。今後の修繕や改修はNESCO(民間)が行うものの、無駄な高速道路のせいで「道路公団の債務返済(民営化時点で40兆円)」はさらに遅れてしまうのだ。
残念ながら、災害時の代替えルートが確立された地域に建設され、かつ1日1500台しか通行量を確保できない高速道路に存在価値はない。なお、あぶくま高原鉄道の通行料は普通車が310円、ETCは利用できない。
<まとめ>
・災害時の代替えルートが複数本確立された地域に新しい道路は不要。
・あぶくま高原道路の通行料は非常に少ない。1300憶円をかけて造った道の通行量は1日1500台だ。
形態 | 高速道路 |
総事業費 | 1300億円 |
累積税金投入額 | 同上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 2600億~3900億円 ※維持管理はNESCOが行う |
役立たず度(5段階) | ★★★★★★ 6 |
外部サイトへのリンク
<福島県道路公社 公式ホームページ>
あぶくま高原道路も東北道もスイスイ〜♪お天気最高 pic.twitter.com/cjbJIdMFvz
— nemo (@NyanNemo) February 25, 2017
秋田県立美術館(秋田県)(目次に戻る
公営の文化施設(美術館や博物館など)は日本中に数えきれない乱造され、そのほとんどが「赤字ありき」で管理、運営されている。理由はここまで色々なハコモノを見てきた方ならすぐ分かるはず。自治体は、同施設の役割は「感性や人間性」を育む場であり、すなわち収益など上げる必要がないと勝手に判断しているのだ。しかし、それならなぜ使用料/見学料を徴収するのだろうか・・・
文化施設は国民の感性や人間性を育てる上で重要な役割を果たすだろう。しかし、数百億円をかけて立派なハコモノを建設する意味は絶対にない。そこを訪れる方は、ハコモノではなく展示品を見学する。つまり、展示品が充実していれば、小学校の体育館で美術/博物展を開催しても利用者は満足するのだ。
ここで紹介する『秋田県立美術館』は、標準的な赤字を垂れ流す文化施設とは少し違う。同美術館の建設は秋田県と「財団法人平野正吉美術館」が協力して行った。さらに、総事業費の一部は「平野正吉」本人が負担(寄付)し、展示品も同財団法人が寄贈している。秋田県の支出は1.5億円、それに5000万円の寄付が加わり、同美術館は2億円をかけて建設された。
秋田県立美術館は初期投資(総事業費)および維持管理費を低く抑えた。結果、同施設は利益を上げることに成功したのだ。利用者の確保には苦戦しているものの、単年の赤字は多くて1000万円程度。過去の営業収益を合算すれば、初期投資の改修も夢ではない。
東京都の「江戸東京博物館」は総事業費580億円(単年の営業損失90億円)、大阪府の「なにわの海の時空間(閉館)」は180億円(単年の営業損失3億円)。日本中に乱造された文化施設の大半は、国民の感性と人間性を育てるという大義名分をかざし、赤字を税金で補填している。そして、これらの施設運営企業は「天下り役人」の大切な再就職先、「第三セクター」が大半を占めているのだ。
秋田県立美術館は、公営では非常に珍しい「利益を上げる文化施設」である。年々減少傾向にある利用者を確保できれば、秋田県に収益をもたらす素晴らしい公共施設に認定されるだろう。
<まとめ>
・文化施設を訪れる利用者は立派なハコモノではなく、展示品を見に来る。
・公営文化施設の大半は赤字→過剰な初期投資が原因。
・利用者が少なくても、維持管理費(総事業費)を抑えれば、利益を上げることは十分可能だ。
形態 | 美術館 |
総事業費 | 2億円 |
累積税金投入額 | 2億円弱 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 6億~8億円 |
役立たず度(5段階) | 💛💛 頑張れ |
外部サイトへのリンク
<秋田県立美術館 公式ホームページ>
簗川ダム(岩手県)(目次に戻る
『簗川(やながわ)ダム』は、岩手県内を流れる一級河川「北上川」の支流「簗川」の中流で建設が進められている。建設地の岩手県盛岡市は、過去に両河川の氾濫/越水により水害を受けたことが複数回あり、その都度河川改修/堤防増強を行ってきた。
2019年10月の台風19号は、岩手県にも甚大な被害をもたらした。河川の氾濫、越水、道路の崩壊などが各地で相次ぎ、死者も出ている。しかし、北上川と支流の簗川は、氾濫危険レベルまで水位が上昇したものの、あと一歩のところで踏みとどまった。なお、両河川の下流域は住宅密集地であり、氾濫が発生すれば壊滅的な被害を受けていた可能性が高い。
国と岩手県は北上川および簗川の改修/堤防増強を計画的に進めており、その成果が氾濫、越水防止につながった。現在建設中の簗川ダムが完成すれば、さらに治水能力は強化されるだろう。しかし、両河川以外の対策はまだまだ万全とは言えない。今、国と岩手県が進めなければならない案件は以下の通りである。
①堤防が決壊した河川(成瀬川や阿武隈川など)の改修と堤防増強。
②弱点箇所の改修とダム建設をバランスよく行う「総合治水事業」をさらに加速させる。
北上川と簗川は氾濫を免れたものの、例年の異常気象を考えると、さらなる水位調整機能が欲しいところだろう。両河川が氾濫すれば、盛岡市は水防し、民家、企業、農地などは壊滅的な被害を受ける。ダムが建設されても、大雨による被害を確実に防げるわけではない。しかし、600億円を投資し、数千億円規模の経済圏と住民を守れる可能性が高まるなら、安い投資と考えるべきだ。
河川流域の住民を水害から守るには、ダム事業と河川改修をバランスよく進めなければならない。ダム事業にばかり特化しても、下流域で大雨が降れば堤防は決壊する。全ての河川堤防を増強するには数十兆円規模の予算と莫大な時間を有するため、洪水調整機能を持つダムを効果的に配置し、費用と時間を削減する。バランスのとれた「総合治水事業」を円滑に進め、強靭な国土を造ることが何より大切だ。
<まとめ>
・同ダムの水源「簗川」および本流の北上川では水害が多発していた。
・台風19号の影響で、両河川の水位は氾濫危険レベルを超えた。仮に氾濫していれば、河川流域の盛岡市は甚大な被害を受けていただろう。
・過去の水害実績、大雨時の水位上昇等を考慮し、北上川と簗川の河川改修およびダム建設は計画的に進められてきた。
形態 | ダム |
総事業費 | 600億円 |
累積税金投入額 | 同上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 1200億~1800億円 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<岩手県 公式ホームページ>
【ニュースリリース】
— 清水建設株式会社【公式】 (@Shimizu_now) June 14, 2019
簗川ダムの堤体コンクリート打設が間もなく完了
~ダムコンクリート自動打設システムを初適用~
コンクリートの製造・運搬・打設を繰り返す「ダムコンクリート自動打設システム」によって、打設作業のサイクルタイムを約10%短縮しています。
★https://t.co/rgXmBdScxl pic.twitter.com/f2VfqMqCJ9
YSアリーナ八戸(青森県)(目次に戻る
青森県八戸市の長根公園内で建設が進められていた「長根屋内スケート場」は、ネーミングライツによる公募の結果、『YSアリーナ八戸』に名を変え、令和元年9月にオープンした。世界最高水準の屋内スケートリンクは国際大会仕様に整備されており、様々な大会の誘致が期待されている。
本州最北端に位置する青森県は、雪国らしくスケート競技が盛んに行われており、県民の競技人口率もかなり高い。その中でも八戸市は特にスケート競技が盛んなことで知られ、戦後初の冬季国体は同市で開催。以降、八戸市で開催された冬季国体は11回を数える。さらに、実業団のアイスホッケー全国大会(1932年)も同市で始まり、その後日本各地に広まった。「氷都八戸」の歴史=スケートリンクの歴史、と言っても過言ではない。
YSアリーナ八戸の総事業費は約130億円、施設の維持管理費(単年)には5億円ほどかかる。あくまで試算だが、現時点では毎年数千万円の赤字を計上する可能性が高いという。同アリーナも、一歩間違えればこれまで紹介してきたハコモノと同じ末路(赤字を税金で補填)を辿るかもしれない。しかし、一つの競技(スケート)に特化している点が大きなアドバンテージになるだろう。
仮にYSアリーナ八戸が数千万円の営業損失を出したとしても、スケート競技者/選手を八戸市に呼び込めば、街は確実に潤う。選手は八戸市のホテルに宿泊し、周辺をうろつき食事、買い物をする。国際大会が開催され、1000人規模の外国人選手、コーチ、監督、そして観客が八戸市に押し寄せるところを想像してほしい。
公営のスポーツ施設は以下の事項を遵守すれば、街を大きく発展/活性化させる可能性が極めて高い。
①一競技特化型など、他の地域にはない、真似できない特化型施設を目指す。
②コストは可能な限り削減しつつ、世界レベルの選手に支持される施設を造る。
③ベストは営業収益を上げること。しかし、数千万円程度の営業損失であれば、街に潤いを与えるための投資/必要経費と割り切れる。(自治体は赤字でも、街自体の商業が活発になり利益をもたらせばOK)
スポーツ施設は非常に魅力のある投資案件だと思う。しかし、公金を使う以上、凄まじい額の赤字を垂れ流す施設は造れない。自治体の予算規模によって投資費用は異なるため、建設を予定している場合は慎重にマイナス効果とプラス効果を見極める必要があるだろう。
<まとめ>
・世界最高水準の一競技特化型アリーナであれは、国際大会以外の需要も開拓できる可能性が極めて高い。
・現時点では数千万円の営業損失が出ると予想。赤字を抑えるほど、施設の価値は向上する。
・同アリーナのマイナス効果は営業損失。それを帳消しにするほどのプラス効果を八戸市と青森県にもたらせば、優良公共スポーツ施設として崇め奉られるだろう。
形態 | アリーナ |
総事業費 | 130億円 |
累積税金投入額 | 同上 |
ライフサイクルコスト※概算 (一生涯にかかる維持管理費) | 260億~390億円 |
役立たず度(5段階) | 💛 大化けするかも |
外部サイトへのリンク
<八戸市 公式ホームページ>
夕張市(北海道)(目次に戻る
2007年、北海道『夕張市』は「財政再生団体」に指定された。同市は銀行からの借入金、公営企業や第三セクターなどの負債総額が500億円を超え、事実上財政(経営)破綻。国から低金利の支援を受けることになった。夕張市の「再建期間」は約18年の見込み。
夕張市が破綻した経緯を簡単にまとめると以下の通りだ。
①同市は炭鉱の町として知られていた。しかし、炭鉱の時代は終わり、それに関連する第三セクターや公営企業/炭鉱、その他の施設は解体、残されたのは600億円近い負債だけだった。
②北海道や国から財政再建の指導を受けるも、同市の役人はそれを無視し、積極的に公共工事等を推進。行き当たりばったりのハコモノプロジェクト(スキー場・テーマパーク・公共施設の乱造)を展開するも、事業は軒並み失敗する。
③負債を返済するために資金(負債)を調達する悪循環。いわゆる自転車操業状態に陥った。
④無能な役人の無計画な自治体運営。
財政再生団体に指定されると、国からの様々な支援措置を受けられない。負債を完済し、正常な自治体運営が可能になった時点で指定は解除されるが、その道は遠く険しいものになる。まず、あらゆる支出を抑えねばならず、行政サービスにも甚大な影響を与える。すなわち、辛い思いをするのは夕張市民なのだ。
調子に乗り過ぎた夕張市の役人は「粛清」されたものの、最後に苦しい思いをするのは市民である。行政サービスは全国最低、市民税などの負担は全国最高では、土地に愛着のある住民も逃げ出さざるを得ない。夕張市は大切なものを全て失い、「終末都市/世紀末都市」と呼ばれるようになった。
なぜ地方自治体は赤字を垂れ流す公共施設や第三セクターへの投資を続けるのだろうか。夕張市の惨状を見れば、クソの役にも立たない投資は控えようと思うはず。「新しい雇用の創出」「天下り役人の再就職先確保」「儲かるかもしれない」といった理由で税金を無駄遣いし負債だけを増やしていけば、自治体運営が行き詰まるのは時間の問題だ。大切なものを失ってから後悔しても、時すでに遅しである。
<まとめ>
・炭鉱産業の衰退と行き当たりばったりのハコモノプロジェクトがダブルパンチとなり、夕張市は財政破綻した。
・行政サービスは全国最低、市民税などの負担は全国最高。まさに終末都市である。
・後悔先に立たず。他の地方自治体は、夕張市の惨状から学び、同じ過ちを繰り返すな。
形態 | 地方自治体 |
負債額 | 500億円超 |
税金投入額 | 360億円 |
人口減少率 2007年→2018年 | 33% 12307人→8211人 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<夕張市 公式ホームページ>
財政破綻した夕張市の破綻してる感がすごかった pic.twitter.com/tXi7ae3dUv
— きくち (@zebra_stripe_) August 3, 2018
福島第一原発(北海道)(目次に戻る
「原子力発電」は火力、水力、風力、太陽光発電などとは比べ物にならない発電量を誇る。初期投資は数千億円規模だが、一度造ってしまえば、生み出す電力/利益は他の発電設備とは次元が違うのだ。「使用済み核燃料」の処理には膨大な費用がかかるものの、それらを差し引いても電力会社が得られる利益は大きい。そして、二酸化炭素の発生量が少ない点も評価すべきだろう。
原子力発電は使用済み核燃料の問題、そして「事故」さえ発生しなければ、日本の経済を支える最強のエネルギーと言っても過言ではない。しかし、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」を境に、全てが変わった。ここで紹介する『福島第一原発』は、日本の国土、経済に壊滅的な被害をもたらし、その影響は今後数十年に渡って続くことが確定している。
同原発は、地震後の大津波で施設内の電源を全て喪失。際限なくエネルギー/熱/放射線を放出し続ける「核燃料の冷却システム」も機能を停止した。核燃料を制御するためには、常に冷却を継続せねばならず、それを怠れば核燃料を包む原子炉は熱により破損する。格燃料が原子炉容器の外に出た後は、大気中に際限なく致死量の放射線を放出し続け・・・
福島第一原発の廃炉作業は困難を極める。原子炉外に露出した核燃料の除去は、まさに未知の作業である。その費用は国営化された東電の試算によると20兆円超。しかし、あくまで工程/計画通りに作業が進めば、の話である。なお、民間のシンクタンクは80兆円を超えると試算しており、日本中の度肝を抜いた。
日本の経済発展を支えてきた原子力発電所は大きな転換点を迎えている。温暖化が問題になっている昨今、二酸化炭素の排出量が少ないという点には魅力を感じる。しかし、トラブルが発生した時の影響は、他の発電所とは比べ物にならない。使用済み核燃料の処理も大きな課題である。そして福島第一原発のような事態を招けば、国家を転覆させかねない。
福島第一原発の廃炉作業は2050年頃の完了を予定している。最大の山場は破損した原子炉容器の底に溜まった「燃料デブリ」取り出しで、作業期間は10年から20年を想定。費用は東京電力が徴収する電気料金と国費で賄われる。
<まとめ>
・原子力発電所は日本経済を支えてきた。しかし、福島のような事態が発生すれば、失われるものはあまりに甚大。
・福島第一発電所の廃炉費用は、一企業が工面できる規模ではない。日本国民がその負担を背負わされることになった。
形態 | 原子力発電所 |
これまでにかかった費用 | 数兆円 |
廃路にかかる費用※推定 | 22兆円(東電試算) 81兆円(民間試算) |
失われたもの | 命、国土、福島県民の財産 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★★★ 7 |
外部サイトへのリンク
<東京電力ホールディングス 公式ホームページ>
まとめ
今回は東北&北海道の税金を浪費する施設、第三セクターなどを紹介した。なお、全て私の主観で選んでいることをご理解いただきたい。限りある予算は、県(道)民の生活に欠かせないもの、命や安全を守るものに「正しく無駄なく」投入されなければならない。赤字を垂れ流すハコモノばかり造っていると、夕張市のような事態に陥り、住民に愛想を尽かされるだろう。最後までお読みいただきありがとうございました。