『kenta475699』です。
貴重な税金を浪費する中国地方の施設&第三セクターを紹介します。あくまで個人の主観で選んでいることをご理解下さい。

目次

 ・意外と潤っている中国地方?

 ・道路大好き

〇貴重な税金を浪費する施設&第三セクター
  1.サンデン交通(山口県)

  2.やぐちタクシー(広島県)
  3.山陰近畿自動車道(鳥取県)
  4.苫田ダム(岡山県)
  5.風の国温泉(島根県)
  6.山口県国際総合センター(山口県)
  7.新サッカースタジアム(広島県)
  8.鳥取市庁舎(鳥取県)
  9.井原鉄道(岡山県)
 10.ホテル宍道湖(島根県)
 11.中山川ダム(山口県)
 12.広島高速5号線(広島県)
 13.若桜鉄道(鳥取県)
 14.笠岡ふれあい空港(岡山県)
 15.グラントワ(島根県)
 16.山陰自動車道(山口県)
 17.燕趙園(鳥取県)
 18.宍道湖・中海淡水化干拓事業(島根県)
 19.中国地方のテーマパーク
 20.下関北九州道路(山口県)

 まとめ

意外と潤っている中国地方?

中国地方5県の年度予算(H30~H20年度の平均)と人口は以下の通りである。
山口県:約6700億円(人口140万人)
鳥取県:約3500億円(人口57万人)
島根県:約6000億円(人口70万人)
岡山県:約7000億円(人口190万人)
広島県:約9500億円(人口280万人)

 一人当たりの予算額がもっと多いのは島根県(約85万円)、もっとも少ないのは広島県(約34万円)だった。ただし、予算額の大小で地域経済の良し悪しを図ることはできない。島根県は人口の割に年度予算が多いように思える。しかし、たまたま公共工事(高速道路やダムの新設・改良等)が重なっているだけ、という可能性もある。広島県はその逆で、大型工事が少ない(街の開発がほぼ終わっている)だけかもしれない

 中国地方の財政状況はお世辞にも良いとは言えない。各県が多額の借金を抱えており、苦しい自治体経営を余儀なくされている。年度予算も県民への行政サービスや、改修が必要な公共施設、道路などに充てられ、地域経済の発展・改善に投資できるお金は非常に少ない・・・

 中国地方の5県は、限られた予算を正しく使えているとは到底言えない状況にある。社会保障、行政サービスなど、県民の生活に直結する部分は押さえているが、公共工事や公共事業への投資額はおかしいと感じる部分が非常に多い。残念ながら、予算を投じる「場所(施設や人)」を間違えていると言わざるを得ない。

道路大好き

 中国地方は道路が大好きである。もちろん「性的に」ではなく、建設することが、だ。なかでも「高速道路」にかけられている予算は凄まじい。交通網を改善・整理することは、地方経済に大きな恩恵をもたらす。物資の輸送時間やコストは大幅に改善されるだろう。また、地域住民などが都市間を積極的に移動すれば、人の往来が増えた街は発展する

 道路が新設され、都会と田舎町がつながれば、良いことばかり起きるように思える。役人たちは競い合うように高速道路などの公共工事に投資し、道を綺麗にすれば地域経済が発展する、もしくは潤うと確信している。しかし、日本の現状を見れば、その考えが間違いなのは火を見るよりも明らかだ。

 今回は貴重な税金を浪費する中国地方の施設(高速道路・ダム・テーマパーク等)と第三セクターを紹介する。予算が少ないと頭を抱える役人たちは、「県民が本当に必要とする」施設に税金を投入せず、「無駄なハコモノ」ばかり建設したがることを知ってほしい。理由はこれから紹介する「中国地方の問題児20」の中で説明しよう。「車の通らない」高速道路に5000億円以上を投資する余裕があるのなら、住民税を引き下げろと言いたい

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貴重な税金を浪費する施設&第三セクター

サンデン交通(山口県)目次に戻る

 最初に紹介するのは、山口県内の路線バス等を運行している第三セクター『サンデン交通㈱』だ。まもなく設立100周年を迎える歴史のある会社だが、慢性的な赤字に苦しめらめ、県が投入した補助金は5億円を超えた。人員・運行本数の削減等を行ってはいるものの、経営状況はなかなか改善されずにいる。

 地方都市のバス利用者は年々減少傾向にある。人口が減少していく今の日本ではどうしようもないと思いそうになるが、私は「街自体の魅力」が無くなっている点も原因のひとつだと考えている。サンデン交通は主に山口県西部でバスを運行している。利用者は①地域住民、②市外から訪れる方、③他県の方、の3区分に分けることができ、①は固定客である。

 運行する地域(街)の魅力が無くなると、②③は少なくなり、運賃収入は自ずと減る。会社は赤字になり、運行を本数を減らし①はバスでなく車やその他の交通機関(あればだが)に乗り換えてしまう。サンデン交通のような路線バスの運行会社は全国に溢れており、皆慢性的な赤字に苦しめられている。

山口県は、公共交通機関を担う第三セクターへの補助金が財政の「大きな負担」になっとると考えとる。赤字を垂れ流す企業に税金を投入するこたぁ、確かに無駄な投資じゃ思えるね。
企業努力で支出を減らすこたぁ大切じゃ。けど、地域全体で助け合わにゃあ、利用客が増えるこたぁほぼねえ。街の魅力を底上げする為にゃあ、民間と行政が力を合わせる必要があるんじゃ。

 第三セクターへの風当たりは強く、「廃止しろ」という意見も多い。過去の不正(天下り、談合等)を考えると、明らかに不要な組織が存在することも事実だ。しかし、公共交通機関を担う会社への支援(補助金)を打ち切れば、「利用客の大切な足」を奪うことになる。サンデン交通の累計補助金投入額は5億円、単年では数千万円ほどだ。県の財政状況を考えれば、小さなコストを削減することも大切に思える。しかし・・・

 山口県はサンデン交通を必ず存続させなければならない。数千万円の補助金をカットする前に、まずは6000億円以上をかけて建設中の高速道路計画を見直すべきだ。毎年数十億円の赤字を垂れ流す「利用者のいない公共施設(ハコモノ)」を手放せば、サンデン交通を生かすことなど簡単である。地域住民の大切な足を奪えば、「県は住民よりハコモノが大切」と思われるだろう。

まとめ
利用者の見込めない高速道路計画を見直せば、サンデン交通への数千万円など簡単に工面できる。
毎年数十億円もの赤字を垂れ流す利用者のいない豪華な体育館、アリーナ、テーマパークを清算(民間への譲渡、除却)すれば、県民が本当に必要とする公共交通機関を維持できる。

形態第三セクター
税金投入額5億円以上
経営状況赤字
役立たず度(5段階)☆☆☆☆☆ 0

外部サイトへのリンク
サンデン交通㈱ 公式ホームページ

やぐちタクシー(広島県)目次に戻る

 広島県広島市に本社を置く『(有)やぐちタクシー』は、「民間の」タクシー事業者である。非常に素晴らしい取り組みを15年以上行っており、他の第三セクターや地方自治体も参考になると思い、紹介することにした。

 この会社では「やぐちおもいやりタクシー」という取り組み(事業)を行っている。片道300円、当日往復であれば400円、小学生以下は無料という条件で、乗り合い専用の「ジャンボタクシー」を運行しており、地域住民の足として重宝されているのだ。自治体は、「利益を度外視した」おもいやりタクシーに毎年150万円の補助金を補填している。

 おもいやりタクシーの最も素晴らしい点は、地域住民のコミュニティを強化できる点にある。助け合いや思いやりの精神を皆で共有しても、街の過疎化は止まらないかもしれない。しかし、「故郷愛」が醸成されれば、若者たちの都市部への流出を防ぐキッカケにはなる。 

地方再生=公共施設への投資と考えがちじゃが、ハコモノを作っても人は集まらん。魅力ある街を目指す第一歩は、地域住民が自分たちの住む土地を愛することから始まる。故郷の為に頑張る人が増えた時、地方再生への扉も開かれる。
地域住民の郷土愛が育まれりゃあ、その土地で頑張る民間(個人、企業)の力も自ずと増幅される。国や県は、彼らが地方で頑張る「サポ―ト」をすべきじゃ。ただし、やみくもに補助金を投入すりゃええ、というものでもねえ。

 赤字で運行している路線バスや鉄道は、いつ廃線になってもおかしくない。民間企業であれば、会社の存続に関わる問題だろう。地方自治体は公共交通機関を担う企業(第三セクター含む)を全力で助けてほしい。もちろん、経営努力やコスト削減は徹底させなければならないが、もし倒産することになれば、苦しい思いをするのは自治体とそこに住む住民である

 民間企業への補助金投入は慎重に慎重を期す必要がある。「天下り役人」を儲けさせることなど言語道断であり、税金の無駄遣い以外のなにものでもない。しかし、地域の為に頑張る、もしくは頑張りたい会社であれば、数百万、数千万円の補助金は迷わず投資すべきだろう

まとめ
・やぐちおもいやりタクシーは、助け合い、相互扶助の精神で成り立っている
・助け合いや思いやりの精神が育み、住民たちの郷土愛を醸成することが大切である

形態民間企業
税金投入額150万円(単年)
経営状況健全
役立たず度(5段階)☆☆☆☆☆ 0

外部サイトへのリンク
㈲やぐちタクシー 公式ホームページ

山陰近畿自動車道(鳥取県)目次に戻る

 鳥取県を起点とする『山陰近畿自動車道(石破道路)』の新設工事(未開通部分)には、何と6000億円もの税金が投入されることになっている。10年近くかかる工事なので、単年で考えると500億~600億円。鳥取市から日本海側の過疎地域を延々と走り、「京都縦貫自動車道」に接続される予定だ

 インフラの老朽化は大きな社会問題になっており、その中でも生活に欠かせない道路の改修は最重要課題のひとつだろう。地方に住む人々は、繁華街を通る重要幹線ばかり綺麗になることを不満に思っている。しか、車がほとんど通らない地域に高速道路を建設して欲しいとは考えていない

 山陰近畿自動車道の未開通部分を新設しても、恩恵を受ける住民は少ない。それどころか、「そもそもいらない」という意見が大半を占めるという。車が通らない高速道路新設より、舗装がボロボロになった国道や県道を綺麗にしてほしいのだ。しかし、役人たちは頑なに高速道路にこだわり、県民が必要とする旧道の改修は後回しにされてしまう。

役人は数千億円規模の工事にしか興味がねえ。理由は自分の取り分(賄賂や献金)をガッポリ確保してーけぇじゃ。大手ゼネコン幹部も同じじゃなぁ。地方自治体は役人に忖度し、旧道の改修は後回しにされる。
鳥取県民の多くは、山陰近畿自動車道未開通部分の新設に懐疑的じゃ。けど、「せっかく予算がついたのであれば」、という考えが大勢を占めとる。利用者の少ねえ高速道路の維持管理費も税金から補填されると理解しとるのじゃろうか・・・

 山陰近畿自動車道の未開通部分が繋がれば、輸送時間の短縮や効率化、「災害時のルート確保」という意味では効果があるのかもしれない。しかし、鳥取県の年度予算を考えると、単年500億~600億円の工事費用はとんでもない支出と言わざるを得ない。それだけの予算があれば、改修の進まないボロボロの旧道を綺麗にできるだろう。

 高速道路の新設を否定する気はないし、インフラの重要性は理解しているつもりが。しかし、公共事業は順序を誤ると取り返しのつかない事態を招くこともある。ダムばかり造り河川の増強を怠った地域では、大雨の影響で「放水」が開始された途端、下流域の堤防が決壊し街が水没、多数の死者を出した。基礎(旧道)の補強や改修を怠り、上物(高速道路)ばかり造っていると、いつか手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。

まとめ
・インフラの整備は大切。しかし、県民が必要としない高速道路ではなく、改修が必要な国道や県道を優先すべし
数千億円の税金を投入し高速道路を造っても、地方再生には全く繋がらない。儲かるのは役人と大手ゼネコン幹部だけ、汗水たらして働いた地元の零細建設企業は、「おこぼれ」を貰える程度と考えよう。

形態高速道路
税金投入額6000億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
1.2兆~1.8兆円
役立たず度(5段階)★★★☆☆ 3

外部サイトへのリンク
山陰近畿自動車道 Wikipedia

苫田ダム(岡山県)目次に戻る

 『苫田(とまた)ダム』は岡山県苫田郡の山中に造られた「ロックフィルダム」である。県内を流れる一級河川「吉井川」を水源とし、2006年の夏に発生した大雨では、下流域の水量調整に大活躍したと言われている。なお、貯水容量は県内で三番目に大きく、「利水効果」についても大きな役割を果たしている。

 日本には、国民の安全と安定した生活を縁の下から支える「優良ダム」と、治水・利水効果ゼロの役立たずな「ハコモノダム」が存在する。前者であれば、税金を投入して建設する価値はある。しかし、後者は税金を無駄にし、さらに維持管理費を永続的に支払い続けねばならないただの「負債」でしかない。

 苫田ダムの総事業費は2000億円を超える。下流域の洪水を防ぎ、県民に水を供給していることを考えれば、必要な投資と考えることもできるだろう。しかし、岡山県は「余ったダム内の水」に毎年6億円以上の経費をかけ、さらに維持管理費に数億円の税金を投じているという。

岡山県は余った水が緊急時に役立つと考え、毎年6億円もの予算を計上しとる。吉井川に少しずつ放水しても問題ねえが、万一を考えとるのじゃろう。
維持管理費等を含めると、毎年10億円もの税金が苫田ダムに費やされとる。県民の生活を守るためと考えりゃあ仕方がねえ気もすが、何か手立てはねえのじゃろうか?

 苫田ダムは吉井川流域の住民を守り、水の安定供給にも貢献している。総事業費2000億円は途方もない額だが、「県民の命を守る為に費やした」と考えれば、大抵の人は納得してくれるはずだ。しかし、岡山県の対応には理解し難い部分がある。余った水の為に毎年6億円を費やす意味が全く理解できない。

 地震等で水道設備が利用不能になれば、岡山県がダムに確保した「6億円分の水」も供給できない。ペットボトル等に詰め役場等で保存している、というなら納得できる。しかし、ただ6億円を「運営費」として支払っているだけであり、残念ながらただの無駄遣いと言わざるを得ない。苫田ダムが「優良」でも、管理する役人たちが「無能」では意味がないのだ。岡山県民は、余った水の購入代として計上される6億円が天下り役人のポケットに納まっていると知れば、怒りを爆発させるだろう。

まとめ
治水・利水効果の高いダムは国民の安全と安定した生活を守る縁の下の力持ち
・維持管理費がかかるのは当然。しかし、余った水に計上する6億円は論外。吉井川の水量を確認しながら下流に流せば良いだけだ。役人(天下り含む)を儲けさせる必要は全くない。

形態ダム
税金投入額2000億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
4000億~6000億円
役立たず度(5段階)★★☆☆☆ 2

外部サイトへのリンク
岡山県 公式ホームページ

風の国温泉(島根県)目次に戻る

 島根県江津市に建設された『風の国温泉』は、第三セクターが運営する県営リゾート施設である。旅館、温泉、キャンプ場、テニスコートなどが設けられており、市の観光業を担う期待のホープとして1992年に開業した。しかし、利用客は一向に伸びず、開業年から赤字経営を余儀なくされる

 風の国温泉は、「バブル時代」に乱造されたホテルやテーマパークのひとつだ。この時代は、「ハコモノを建てれば人が勝手に集まる」と誰もが信じていた。銀行は儲けが出るかも分からない第三セクターに何百億円も出資し、バブルが弾け、役立たずのホテルやテーマパークは不良債権と化し、辺りを見渡せば死屍累々。風の国温泉も毎年赤字だけを生み出す残念なハコモニに認定された。

 風の国温泉の総事業費は約30億円である。他県のホテルやテーマパーク等に比べても、初期投資はかなり低く抑えられており、毎年の維持管理費もそこまでかからなかった。(宮崎県シーガイアの総事業費は5000億円)開業年から赤字経営に陥ることは大きな問題だが、「身の丈に合った」ハコモノであったため、江津市が受けた傷は比較的浅かったと言える。

役人たちはハコモノへの初期投資を惜しまん。豪華で立派なホテルやテーマパークが一番と考え、利用者が集まるかも分からん施設に税金を投入する。けど、風の国温泉は自治体の経済状況等を考慮し、総事業費を低う抑えとった。
江津市が根拠のねえ「希望的観測」で風の国温泉を建設したこたぁ間違おらん。けど、初期投資を低う抑えたことで、毎年の赤字は2000万円弱で済んだ。もし総事業費が300億円じゃったら、赤字額も10倍以上に膨れ上がったかもしれん。

 民間企業がホテルやテーマパークを建設する時は、初期投資を限界まで低く抑える。なお、毎年の維持管理費は、総事業費(初期投資)に比例する。銀行から受けた「融資」を返済する為には、黒字を達成せねばならず、維持管理費を低く抑えるほど有利になることは説明するまでもないだろう。

 風の国温泉を民間企業に売却した判断は素晴らしいと思う。投入された税金は総額6億円ほどだが、江津市はこれ以上無駄な投資はできないと判断したのだろう。高速道路やダムの新設に比べれば「はした金」かもしれない。しかし、金額の大小に関係なく、血税を無駄にすることは許されないのだ。他の地方自治体も、赤字しか生み出さないハコモノはさっさと売り払う、もしくは解体してほしい。なお、民間企業に売却された風の国温泉は無事営業を再開、黒字を達成すべく現在も努力を続けている

まとめ
初期投資を低く抑えた施設は黒字を達成しやすい
・やみくもに豪華なハコモノを作っても、人が集まるとは限らない。身の丈に合った投資を行うことが大切だ。
赤字しか生み出さないハコモノは売り払う、もしくは解体すべし。まさに百害あって一利なしだ。

形態リゾート施設
税金投入額30億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
60億~90億円
役立たず度(5段階)★★☆☆☆ 2

外部サイトへのリンク
風の国温泉 公式ホームページ

山口県国際総合センター(山口県)目次に戻る

 山口県下関市に建設された『山口県国際総合センター』は、無駄に豪華な施設が印象的な「会議・展示施設」である。全面ガラス張りの高層ビル「海峡ゆめタワー」がシンボルとして建ち、県民からは「海峡メッセ下関」と呼ばれている。「アリーナ(展示品・見本市限定)」、国際貿易ビル、会議場、テナントスペースなどがあり、県民が利用できる施設は非常に少ない。

 県と市合わせて270億円を投入して建てた国際総合センターは、高額な「維持管理費」に苦しめられている。テナント収入はあるものの、それだけで黒字化が図れるわけもなく、頼みの来場者も年々減少。夜景を見に来る県民は多いようだが、大きな収入源にはならず、毎年5億円以上の赤字を下関市が負担している状態だ

 役人たちは、国際総合センターを「下関市の顔」にしたかった。海沿いに立つガラス張りのビルは、確かに目立つ。しかし、この地を訪れる観光客は、国際貿易ビルや会議場を見に来るわけではない。観光収入がないと赤字になるのなら、なぜ県民や観光客を誘致しやすい施設にしなかったのだろうか。

見栄を張って豪華なハコモノを建てたおかげで、維持管理費は毎年10億円を超える。テナントの数も少のう、国際会議場や見本市限定のアリーナは使用用途も限られとり、使われとらんことが多いい。
下関市の人口減少と高齢化率は、全国平均を大きゅう上回っとる。10年間で人口が4万人以上減ったというけぇ驚きじゃなぁ。毎年5億円以上の借金を垂れ流す国際総合センターは、下関市の大きな負担になるかもしれん。

 会議場やアリーナが全く必要ないとは思わない。大きな国際会議が開かれる時は、間違いなく役に立つだろう。しかし、「普段使い」できない施設に270億円もの予算をかければ、維持管理費だけで大赤字になることは子供でも分かる。

 役人たちは、各国首脳が集まる「G20」や「G7(先進国首脳会談)」を想定して立派なハコモノを建てたのかもしれない。山口県の力を鼓舞したい気持ちは理解できなくもないが、垂れ流される赤字は国民の血税で補填されるのだ。見栄えばかり気にしても、中身が無ければ人は集まらない。なお、昨年のG7会場はカナダのケベック州にあるのどかな田舎町で開催された。トランプ大統領たちが小さなテーブルを囲み話し合う姿は非常に興味深かった。

まとめ
・利益を上げることが目的でない施設(会議場、図書館、公園など)は、初期投資を低く抑えること。総事業費と維持管理費は比例する
・山口県国際総合センターは、利用用途を改めない限り毎年5億円以上の赤字を垂れ流し続ける。

形態会議・展示施設
税金投入額270億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
540億~810億円
役立たず度(5段階)★★★★☆ 4

外部サイトへのリンク
山口県国際総合センター 公式ホームページ

サッカースタジアム(広島県)目次に戻る

 広島県には全国区のプロスポーツチームが2つある。「広島カープ」と「サンフレッチェ広島」の名を知らない方は非常に少ないだろう。ここで紹介『新サッカースタジアム』は、建設が予定されているスポーツ施設だ。費用の大半は県が負担する予定だが、法人や個人からの寄付金の集まり次第では、「官民連携」で工事が進められるかもしれない。

 私は「県民が必要とする」スポーツ施設であれば、ぜひ補助金を投入すべきだと思う。建設後はプロスポーツチームが施設を運営し、県や市に負担が発生しないのであればなおさらだ。観戦チケットやグッズ等の売り上げはプロスポーツチームのものになるが、県や市には「税金(法人税等)」という新たな収入が発生する。

 投資額は慎重に検討する必要があるものの、成功した時に得られる利益は計り知れない。サンフレッチェ広島は「Jリーグ」創設期から名を連ねる歴史のあるチームだ。チケットの売り上げはもちろん、チームが実力をつければスタジアム以外でも関連グッズ等の収益が発生する。さらに街の知名度、サッカーに関連する消費(スタジアム周辺の飲食店、居酒屋など)も向上することが予想される。

プロスポーツチームに関連する売り上げが増加しても県や市のものにゃあならん。けど、彼らから支払われる税金が増えりゃあ、恩恵を受けることができる。
税金を投入する以上、投資額は慎重に検討せにゃあならん。チームや市民の意見を聞くことも大切じゃが、投資に見合うた利益が上がらんのであれば、スタジアムの規模を縮小したり、法人からの寄付金を募ってもええじゃろう。

 新サッカースタジアムの総事業費には200億円ほどかかる予定だという。なお、投入される補助金の額は決まっていないが、サンフレッチェ広島とスポンサーの資金、法人・個人からの寄付金等を考慮すると、50億~100億円の間で収まるのではないかと予想する。税金が投入されることには変わりないため、官と民でしっかり話し合いの場を持ち、結論を出してほしいと思う

 先述の通り、成功したプロスポーツチームが街にもたらす影響は計り知れない。サンフレッチェ広島が向上し続けられるかは分からないが、200億円を投資して毎年数億円の赤字を垂れ流す「役立たずのハコモノ」に比べれば、広島県が受ける恩恵ははるかに大きいだろう。今後は、スタジアム建設予定地での反対運動等も予想される。ぜひ前向きに話が進むことを願いたい。

まとめ
・初期投資はかかるが、プロスポーツチームの打ち上げが税金として納付される。
・官と民が連携し、建設地付近に住む住民や団体との協議・交渉を行っていく。
税金が投入されることを忘れてはならない。誰もが納得できるスタジアムにしてほしい。

形態サッカースタジアム
税金投入額50億~100億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
なし
役立たず度(5段階)★☆☆☆☆ 1

外部サイトへのリンク
サンフレッチェ広島 公式ホームページ

鳥取市庁舎(鳥取県)目次に戻る

 『鳥取市庁舎』は、2019年10月に工事が全て完了した。建て替え理由は、旧庁舎の耐震設計に問題があったためだ。しかし、2000年に新庁舎の建設計画を立案するも、費用がかかりすぎるため断念。それから9年後に実施された耐震調査の結果、大きな揺れに耐えられないことが判明した。

 鳥取市は旧庁舎の建て替え(移転)計画を策定するも、総事業費100億円に一部の市民が猛反発し、住民投票が行われる事態に発展。投票の結果、建て替えより「旧庁舎の耐震補強案」が多くの指示を集めた。しかし、耐震補強の費用も40億円を超えることが分かり、鳥取市長は建て替えを選択。これに怒った市民団体は市を提訴したが、2016年に原告敗訴が確定している。

 旧庁舎の耐用年数は65年であり、2029年には必ず建て替えを行わなければならない。普通の思考であれば、耐震補強に40億円などかけず、綺麗にした方が良いと思うだろう。「延命処置」を施しても、いずれ必ず建て替えなければならない運命なのだから・・・

いずれ建て替えにゃあならん旧庁舎に40億円を投入し延命処置を図るか、100億円で新庁舎を建てるか・・・反対した市民は、「いつも」税金を無駄遣いする役人たちが許せなんだようじゃなぁ。
100億円は確かに大金じゃが、他の地方自治体にゃあ500億円以上かけた豪華な庁舎げーくつもあるんじゃ。鳥取市民は、役人どもが「私服を肥やす姿」をずっと見とり、やっちもねえ存在であると感じとったのじゃろう。「信頼」が無けりゃあ、市民はついてこんし、反発することぐれー分かるはずじゃ。

 新庁舎に投入された100億円が妥当かは判断しかねるが、建て替え自体には賛成する。耐震補強に40億円を費やしても、耐用年数を考えれば誰もが妥当と考えるだろう。しかし、住民投票の結果を無視した「市長」、そして、長きに渡って私腹を肥やし続けた役人の罪は非常に重い。

 市民から「信頼」される政治を行っていれば、建て替えに反対する市民など一人も出てこなかっただろう。反対運動に参加した住民は、「役人たちの不逞な行い」に怒りを爆発させた(一部の極左集団を除く)。鳥取市は、市民の半数以上が住民投票に訪れたことを忘れてはならない。失った信頼を取り戻すには長い時間がかかる。役人の肩ばかり持っていると、いつか寝首を掻かれるだろう。

まとめ
・市民は建て替えより、役人たちの不誠実な行いに怒っている
・耐震補強に40億円かけるより、建て替えに100億円かける方が賢明。
住民投票(法的拘束力なし)の結果は市民の意思である。それを無視した市長の責任は非常に重い。

形態市庁舎
税金投入額100億円
ライフサイクルコスト
(一生涯にかかる維持管理費)
200億~300億円
役立たず度(5段階)★★☆☆☆ 2

外部サイトへのリンク
鳥取市 公式ホームページ

井原鉄道(岡山県)目次に戻る

 『井原鉄道』は、約42kmの区間を走る岡山県のローカル鉄道だ。なお、運営会社の「井原鉄道㈱」は、県や民間企業から出資を受ける第三セクターである。以前は赤字続きの苦しい経営を余儀なくされていたが、2015年から2018年まで3期連続で黒字を達成するなど、業績は回復傾向にあった。

 井原鉄道は、昨年発生した「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」の影響で線路が甚大な被害を受けた。その後、復旧までに時間がかかったことで利用者離れが加速。2019年度業績は約3000万円の赤字に転落する見通しだ。なお、井原鉄道には毎年1.5億~2億円の補助金が投入されてきた。

 井原鉄道は一定額の補助金が投入されることで、何とか経営を維持している。しかし、他の地方都市のローカル鉄道同様、「廃線」を検討する案(確定ではない)が出ているそうだ。先述した「サンデン交通」と同じような状況であり、補助金が市の財政を圧迫していることは理解できる。岡山県も赤字路線を手厚く保護する気にはならないのだろう

井原鉄道が廃線になれば、利用者は大切な移動手段を失う。また、鉄道がのうなった地方都市は確実に衰退への道を辿る。2億円の補助金を削減するめーに、2000億円かけて建設したダムの運用方法を変えてへーかがじゃろうか?
苫田ダムの「余った水」を購入する為に計上される6億円があれば、井原鉄道を維持させるこたぁ簡単じゃ。赤字を改善させる努力は絶対に必要じゃが、補助金を打ち切り廃線を決断すりゃ、足を奪われた人たちは「役人は住民よりハコモノが大切」思うじゃろう。

 公共事業は「順番」間違えると大変な事態を招く。大金が動くダムばかり建設した結果、河川工事は疎かにされ、大雨で堤防が決壊、大水害を招いた地域もある。コスト削減も順番を間違えてはならない。井原鉄道㈱の経営状況はしっかり見直しを図る必要がある。しかし、ただ補助金が勿体ないという理由で廃線を決断しても利用者は納得しない。理由は、削減すべきハコモノがあることを知っているからだ

 街と街を繋ぐ鉄道は、地方再生の重要なカギを握る。田舎町に新しい路線を通せとは言わないが、今あるものはぜひ継続してほしい。人の行き来する「手段」が無くなれば、街は必ず衰退する。岡山県は2000億円をかけて造った「苫田ダム」の余った水を購入すべく、毎年6億円以上の無駄金を費やしている。コスト削減の順番を間違えれば、後で必ず後悔するだろう。

まとめ
・赤字経営を改善する努力が必要。補助金依存の体質を改善したい
・2億円の補助金を出し渋る前に、無駄なハコモノと意味不明は支出を見直さなければならない
鉄道は県民の大切な足である。予算がないという理由だけで廃線すれば、街は必ず衰退する。

形態第三セクター
税金投入額2億円(単年)
経営状況赤字
役立たず度(5段階)★☆☆☆☆ 1

外部サイトへのリンク
井原鉄道㈱ 公式ホームページ

ホテル宍道湖(島根県)目次に戻る

 島根県が職員の福利厚生施設として開業した『ホテル宍道湖』は、2017年に閉鎖された。なお、一般人も利用可能なホテルではあったが、そもそも黒字経営など目指しておらず、運営は全て補助金で賄われていた。総事業費には50億円ほどかかっているが、バブルを迎えつつあった時代に建てられて施設としては、控えめな額と言えるだろう。

 ホテル宍道湖は利用者に比較的支持されていた。この付近には観光名所の松江城や温泉などが多数あり、週末になるとかなり混在する。似たような規模のホテルがあちこちにあるものの、県営で宿泊料金も安いため、一定の支持を集めていたのだろう。売り上げが予想以上に伸びたため、毎年の赤字額は数百万円規模にまで縮小した

ホテル宍道湖は、耐震設計が規定値を満たしとらず、補強工事が必要と判断された。県は予算を確保できんちゅう理由で、閉館を決定する。利用者に支持されていただけに、残念でならん。
補強工事にかかる費用は公表されず、2017年3月末でホテル宍道湖は41年の歴史に幕を下ろした。建物は現在もそのままの状態で残っとり、今後の動向が注目される。

 耐震工事の費用が分からないため、県の判断が妥当かは判断しかねる。なお、閉鎖を惜しむ声も多数あったようだ。今後、跡地がどのような形で利用されるかは決まっていない。建物をリプレースする場合は、耐震補強工事を確実に行う必要があるため、それを踏まえても利益を上げれると民間企業が判断すれば、面白い物件になる気がした

 ホテル宍道湖は松江市の観光地に近く、通行量の多い国道54号線に面しており立地は文句ない。さらに道の反対側には山陽本線(JR西日本)の駅もあり、目の前には宍道湖の美しい景色が広がっている。島根県は人気観光地ではないが、一定の利用者が見込める土地であれば、ホテル、またはホテル以外の使い道を検討する価値はあるだろう

 ホテル宍道湖が閉鎖したことで、周辺の施設(飲食店、娯楽施設、温泉等)は何らかの影響を受けているはずだ。観光客が離れれば、県の収入にも大きな影響を与える。跡地の利用計画が発表される日を待ちたい。

まとめ
・松江市は、耐震補強工事の費用が工面できないため閉鎖を決断した
・ホテル宍道湖は利用客から一定の評価を受けており、毎年の赤字は数百万円だった