『kenta475699』です。
貴重な税金を浪費する中部地方の施設&第三セクターを紹介します。あくまで個人の主観で選んでいることをご理解下さい。
目次
・中部地方の年度予算
・無駄な公共事業などない・・・
〇貴重な税金を浪費する施設&第三セクター(中部地方)
1.清津川ダム(新潟県)
2.桃花橋ループ(山梨県)
3.新湊大橋(富山県)
4.北陸新幹線(福井県)
5.県民ふれあい会館(岐阜県)
6.浅川ダム(長野県)
7.静岡空港(静岡県)
8.南アルプス完熟農園(山梨県)
9.あおなみ線延伸事業(愛知県)
10.えちごトキめき鉄道(新潟県)
11.樽見鉄道(岐阜県)
12.氷見市役所(富山県)
13.リニア中央新幹線(岐阜、長野、山梨)
14.徳山ダム(岐阜県)
15.しなの鉄道(長野県)
16.フォルテ(静岡県)
17.あいちトリエンナーレ(愛知県)
18.西尾市のPFI事業(愛知県)
19.富山市のコンパクトシティ政策(富山県)
20.森山 榮治(福井県)
まとめ
中部地方の年度予算
中部地方9県の平成30年度予算、人口、県民一人当たりの予算は以下の通りである。
H30予算(億円) | 人口(万人) | H30予算/人口 | |
愛知県 | 25000 | 750 | 約33万円 |
山梨県 | 4600 | 81 | 約57万円 |
静岡県 | 11900 | 364 | 約33万円 |
長野県 | 8500 | 214 | 約40万円 |
岐阜県 | 8100 | 207 | 約39万円 |
福井県 | 4800 | 78 | 約62万円 |
富山県 | 5500 | 104 | 約53万円 |
石川県 | 5100 | 115 | 約44万円 |
新潟県 | 12400 | 222 | 約56万円 |
各県の予算は年度によって異なる場合が多々ある。たとえば、東京オリンピックを2020年夏に控える東京都の2019年度予算は、例年より2兆円以上多い。大型公共工事(リニア、新幹線の新設)などが行われている県も、同じように予算が多く配分されると思ってよい。
中部地方の「都市圏」の公共施設とインフラ設備は非常に充実している。新幹線、高速道路、鉄道、空港、アリーナ、複合商業施設など、あれば便利だなと思うものが完璧に揃っており、本当に羨ましい。なお、私の住む鹿児島県日置市吹上町には、今紹介した施設はひとつもない。
地方自治体は限られた予算を使って社会保障、医療、行政サービスを県民に提供し、公共工事などもバランスよく行わなければならない。なお、この中で最も削減しやすいのは公共事業に割り当てられる予算だ。今ある施設を点検・修繕しつつ、県民の生活を第一に考えて予算を正しく使うことができれば、その県の行政は及第点を与えられる。
無駄な公共事業などない・・・
中部地方の公共施設・公共事業を調べると、無駄と思われるものがあまりに多い。「無駄な公共事業などない」と偉そうに言う方もいる。しかし、人がほとんど通らない山間部に立派な橋を建設する、水が有り余っている地域のために数千億円を投じてダムを造る、同じ地域内に3本目の高速道路を新設することが無駄でないというなら、一度病院で診察を受けるべきだ。
地方自治体が公共事業に割り振れる予算は限られている。しかし、それが適切に使われているとは到底言えない状況だ。残念ながら、無謀な公共事業計画がそのまま推し進められると、最後にその割を食うのは県民である。誰も望まない豪華な道路、施設を建設したがる理由は、地元にお金が落ちる(ゼネコンが設ける)ためだ。
今回は中部地方の無駄な公共施設と、興味深い第三セクターを紹介する。なお、私の主観で選んでいることをご理解いただきたい。予算がないといいつつ、無駄な公共事業が「当然」と言わんばかりの勢いで行われている現状を皆さんにもぜひ知ってほしい。
県民の命と生活を守る事業であれば、予算をかき集めてでも行うべきだ。しかし、役人とゼネコンを儲けさせるだけの「無意味なハコモノ事業」は、今すぐ止めなければならない。予算をドブに捨てる「背任行為」がこれからも平然とまかり通るようであれば、日本の未来はお先真っ暗、地獄へ真っ逆さまに落ちるだろう。
貴重な税金を浪費する施設&第三セクター
清津川ダム(新潟県)(目次に戻る
まず始めに、新潟県及び長野県内を流れる「信濃川」の支流、清津川の上流に建設が予定されていた『清津川ダム』を紹介しよう。1960年代から調査が始まったものの、2002年に中止が決定した案件である。「日本三大渓谷」のひとつとして知られ、新潟県の大切な観光スポットでもある「清津峡」が完全に水没してしまうことから、激しい建設反対運動が行われた。
清津川ダムは「多目的ダム(発電・利水・治水)」としての働きを期待され、総事業費は2500億円以上を予定していた。費用の約1/3(約700億円)を新潟県が負担する、という超大型公共事業だ。なお、工事は中止になったものの、調査工事等で既に60億円以上が執行されていた。
清津川ダムが「本当に」必要だったか否かは判断しかねる。しかし、工事の中止理由に問題があったため、敢えて紹介させてもらった。国と新潟県は、水需要が想定よりも伸びず、水の購入を予定していた下流域の自治体が事業からの撤退を相次いで表明したため、清津川ダム建設を「意味がない事業」と判断し中止したのだ。
令和元年。大型の台風19号が日本に上陸し、信濃川やそれに繋がる千曲川などが大規模氾濫を起こした。下流域の住宅や田んぼが水に浸かり、新潟県の産業被害は100億円を超えた。さらに、目に見える被害以外にも、観光客の減少、農作物への風評被害、被災者の県外移転なども想定される。
清津川ダムが建設されていたとしても、信濃川の氾濫を防げたかは分からない。しかし、国と新潟県は「水が売れない」と言う理由だけで建設計画を中止すべきではなかった。また、信濃川が大規模氾濫を起こしたことで、治水事業が適切に行われていなかったことも露呈した。
「ダムは無駄」という理由だけで建設計画を中止する判断には賛成しかねる。計画・調査の段階で、ダムが「県民の命と生活」を確実に守れると分かっていたのなら、反対住民を全力で説得し、建設を推し進めるべきだろう。
<まとめ>
・ダムに頼らない治水事業は大切だ。しかし、河川の改修だけでは「水量の増加」に対応しきれないと分かっているのなら、ダムの力を借りるべき。
・利水・治水効果を期待できないダムは無駄はハコモノ。
形態 | ダム |
税金投入額 | 60億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | なし |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<令和元年台風19号 Wikipedia>
千曲、阿武隈川で堤防決壊 阿賀野、信濃川で氾濫 5人死亡、台風影響
— Keis/”怒りの”脱原発者! (@Keisshirai) October 13, 2019
10/13(日) 7:37配信 (毎日新聞)
長野市穂保地区を流れる千曲川。中央左が決壊した堤防=2019年10月13日午前8時15分、本社ヘリから pic.twitter.com/GKJF5IjDmz
桃花橋ループ(山梨県)(目次に戻る
山梨県南アルプス市に建設された『桃花橋(とうかきょう)ループ』は、無駄な公共事業の典型とやり玉に挙げられることが多い。1日の通行料は非常に少なく、近隣の方もほとんど利用しないことから、悪評が広まってしまったのだろう。
桃花橋ループは数百メートル離れたところからでも、一目でその姿を確認できる。巨大な円形の道路なので、良い目印にはなるだろう。なぜわざわざループ形状にしたのか、と疑問に思うものの、中心部の空洞スペースには桜の木が目印の「桃花橋公園」も整備されており、夜になると夜景を楽しめる観光スポットに様変わりする。ここから見える富士山、そして夜景は決して悪くない。
桃花橋ループと関連する付帯工事等の事業費は、合わせて約60億円。維持管理には毎年3億円近い予算が計上されている。頻繁に車が通行し、周辺地域の渋滞緩和に役立っているのであれば無駄とは言えないが、桃花橋ループの通行料は非常に少ない。残念ながら、今のままでは「無駄なハコモノ公共事業」と言わざるを得ないだろう。
南アルプス市の失態は後述する。桃花橋ループは通行料が少ない現状を打破しなければならない。「市民の生活に欠かせない道路・スポット」になれば、汚名を注ぐことができるだろう。しかし、それを達成するには様々な障害が待ち構えている。
桃花橋ループと公園にかかる維持管理費を帳消しにする効果が街にもたらされれば、市民も納得するはずだ。汚名返上作戦の対策案は以下の通りである。なお、本気で実行するのであれば、行政は地域住民の力を借りなければならない。
①桃花橋公園でのイベント開催。夜景スポットの情報を全国に発信。
②公園の利用申し出(市場、店舗の設置など)は、基本断わらない。公園内での各種行為が禁止されているのなら、法を改正する。
<まとめ>
・桃花橋公園に人が集まれば、街全体に利益をもたらす。桃花橋ループの通行料も自ずと増えるだろう。
・利用者のいない道路や橋は存在価値ゼロ。行政は無駄な公共事業と揶揄されていることを真摯に受け止め、通行料を増やす努力を継続してほしい。
形態 | 橋 |
税金投入額 | 60億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 120億~180億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<やまなし観光推進機構 公式ホームページ>
新湊大橋(富山県)(目次に戻る
橋の建設には膨大な費用がかかる。四国と本州を結ぶ「明石大橋」は約5000億円。「瀬戸大橋(鉄道あり)」は1.1兆円と、かなりの大事業であることが分かる。ここで紹介する『新湊(しんみなと)大橋』には、富山県の年度予算の1/10に近い500億円が費やされた。
前述した「桃花橋」で述べた通り、利用者のいない道路と端に存在価値はない。新湊大橋は海を隔てた東西の陸地を結び、以前のルート(南側を迂回)に比べ移動時間は5分程度短縮されたという。通行料がかからないこともあり、周辺地域の渋滞緩和にも一役買っているようだ。
新湊大橋が建設される以前の東西陸地を結ぶルートは、南側の迂回路と「富山県営渡船」が主たる通行手段だった。なお、渡船の乗船料は無料、1日60便ほど運行されており、維持管理には約1億円(単年)が計上されている。新湊大橋は歩行者も通行可能なため渡船は不要に思えるが、周辺地域は高齢者も多く、廃船は困るという意見が大勢を占めているようだ。
新湊大橋には毎年15億円以上の維持管理費が計上されている。射水市の財政状況は人口の減少に伴い右肩下がりの状態で、この支出は痛いと言わざるを得ない。また、付近の渋滞緩和に貢献している点は評価できるものの、新湊大橋自体は頻繁に渋滞を引き起こしており、残念感は否めない。
日本は「超高齢社会」に突入し、人口は年々減少している。ほぼすべての地方自治体が、人口減少による税収減に苦しめられているのだ。射水市は高齢者のために渡船を存続させつつ、新湊大橋にかかる維持管理費を工面し続けなければならない。過剰な公共事業への投資は市の財政を圧迫し、その結果住民税の引き上げ、若者のさらなる県外流出と、負のスパイラルに拍車をかけるだろう。
<まとめ>
・移動時間を5分短縮し、付近の渋滞緩和に成功した点は評価できる。
・500億円の橋にかかる維持管理費は毎年15億円以上。人口9万人の射水市にかかる負担は計り知れない。
・富山県営渡船は不要に思えるが、周辺に住む高齢者のことを考えると廃線は難しい。
形態 | 橋 |
税金投入額 | 500億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 1000億~1500億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★★☆ 4 |
外部サイトへのリンク
<とやま観光ナビ 公式ホームページ>
「明日に架ける橋」
— 加藤慎哉 (@snykt1) April 27, 2020
新湊大橋にて。 pic.twitter.com/ZBXbZc6DzC
北陸新幹線(福井県)(目次に戻る
『北陸新幹線』の敦賀以西新ルート問題は、全国ニュースでもそこまで話題にならず、あっという間に国会承認されてしまった不思議案件である。北陸新幹線は2015年に高崎-金沢駅間が開業しており、現在新たに金沢-敦賀駅(新駅)間が着工している。なお、将来的には敦賀-小浜(新駅)-新大阪駅が繋がる予定だ。
敦賀以西新ルート問題で、福井県が受ける影響は後述する。残念ながら、国会承認された敦賀駅ー小浜-京都駅間は、「最適ルート」とは到底言えない。敦賀駅の南東にある「米原駅(東海道新幹線)」を繋げば、工事費は約1/4で済むのだ。
ルート | 敦賀-米原 (×) | 敦賀ー小浜-新大駅 (◎) | 敦賀-舞鶴-新大阪 (×) |
距離 | 50km | 140km | 190km |
総事業費 | 5900億円 | 2兆700億円 | 2兆5000億円 |
敦賀-新大阪駅間の所要時間 | 67分 | 43分 | 60分 |
要望する自治体等 | 滋賀県 | 福井、富山、石川、JR西日本 | 京都府 |
米原駅に北陸新幹線の乗り入れが開始されれば、「超混雑路線」と呼ばれる「東海道新幹線」の混み具合はさらに悪化する恐れがある。そのため、JR西日本は敦賀-小浜ルートを選択し、国に要望したのだろう。総事業費は2兆円を超えるものの、要望する自治体も多かったため、あっさり承認されてしまった。
北陸新幹線は、開業さえすればJR西日本が維持管理を行うことになるため、地方自治体は自分の県を通過するルートを推奨する。しかし、工面する事業費は税金から支払われることを忘れてはいけない。20分の時間短縮のために1兆5000億円を使って新ルートを建設するメリットが本当にあるのか非常に疑問だ。
ここまで福井県にはほとんど触れなかったが、北陸新幹線が開業することで、同県を走る在来線(第三セクター管理)は危機的状況に陥ることが確実視されている。また、富山ー福井ー金沢間で運行する特急「サンダーバード」も廃止がほぼ決まっており、在来線利用者、沿線地域は大きな影響を受けると予想されている。新幹線を地方再生の切り札と期待する声もあるが、デメリットもしっかり把握すべきだろう。
<まとめ>
・北陸新幹線が開業(2023年)することで、福井県の第三セクター路線は毎年10億円近い赤字を計上することが確実視されている。なお、福井県は北陸新幹線開業後の対応策として、2019年8月に新第三セクター会社を設立した。
・新幹線は確かに便利。しかし、既存のルートや県民の生活に与えるデメリットも考慮すべき。
形態 | 新幹線 |
税金投入額 | 1.4兆円 ※金沢-敦賀駅間のみ |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | なし |
役立たず度(5段階) | ★★★★☆ 4 |
外部サイトへのリンク
<JR東日本 公式ホームページ>
県民ふれあい会館(岐阜県)(目次に戻る
「旧岐阜総合庁舎」は、岐阜地域の公共機関(保健所、土木事務所など)が入居する公共施設だった。80年以上の歴史を持つ美しい建物だったが、耐震基準を満たしていないことが判明。その後釜として『県民ふれあい会館(通称OKBふれあい会館)』が建設された。
OKBは14階建ての本館、9階建ての別館で構成され、全面ガラス張りの東面は圧倒的な存在感を放つ。なお、2棟とそれに関連する施設(駐車場など)の総事業費は700億円を超えている。施設の建設目的は「県民の文化交流とふれあいの促進」らしいが、その姿を一目見た瞬間、「やっちまったなぁ!」と叫びたくなるはずだ。
総合庁舎の建て替えは、耐震基準の都合もあり避けることはできなかった。しかし、元々3階建ての施設に納まっていた行政機関を移転させるだけなら、同規模の建物で十分だと思う。他の機関もまとめて移転させたかったのだろうが、14階+9階の2棟立ては完全に「やっちまったなぁ!」である。
ガラス張りの豪華なハコモノを建設しても、県民の文化交流とふれあいは促進できなかった。役人たちは立派なビルさえあれば全て上手くいくと考えたようだが、大きな間違いである。旧総合庁舎と同規模程度の建物でも、行政と県民が連携してイベントや催しを行えば、いくらでも交流は促進できる。企画さえしっかりしていれば、空き地にテントを建てるだけで文化交流などいくらでも図れるぞ。
700億円のハコモノを建設した代償はあまりに大きい。貸施設の利用状況が芳しくないのは、OKBに入れば一瞬で分かる。巨大なガラス張りの建物に入った瞬間、人気(ひとけ)が無くてビックリするはずだ。岐阜県民は、20億円以上の維持管理費を延々と払い続ける「罰ゲーム」に強制参加させられた。これ以上の「やっちまったなぁ!」が他にあるだろうか。
<まとめ>
・県民の文化交流とふれあいを促進したいなら、ハコモノでなく企画で勝負すべき。
・OKBの維持管理費は20億円を超える。
・役人の感性を疑うレベル。やっちまったなぁ!
形態 | 公共施設 |
税金投入額 | 700億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 1400億~2100億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<県民ふれあい会館 公式ホームページ>
今日から一週間くらいの予定で、岐阜県民ふれあい会館に来てます♪ここは吹き抜けだから、少し蒸し暑くなるとしんどいですが頑張ってきます╭( ・ㅂ・)و ̑̑ pic.twitter.com/CLpfh5Bdgs
— お〜が🍀 (@ogrediva) July 23, 2019
浅川ダム(長野県)(目次に戻る
『浅川ダム』は、信濃川水系浅川の上流に建設された重力式コンクリートダムである。長野県といえば、前県知事の「脱ダム宣言」を知らない方はいないだろう。ダムに頼らない「総合治水事業」を宣言し大きな注目を集めたが、平成18年の県知事選で敗北した。凍結されていた浅川ダム計画は、新知事の就任で再起動し、2017年に無事工事竣工を迎えた。
浅川ダムは治水に特化した「穴あきダム」である。普段は水を一切貯めず、有事の際に放水口を閉鎖。浅川上流で降った大雨をダム湖内にため、河川の水量を調整する役目を担う。一度は前県知事の脱ダム宣言で「無駄」と判断されたものの、浅川では過去に幾度も水害が発生しており、同ダムが効果を発揮することは明白だった。
ダム建設に特化した治水事業には限界がある。素晴らしい治水効果を発揮するダムでも、上流地域で雨が降らなければ役に立たないのだ。だからといって「全てのダムが無駄」という訳ではない。前県知事の脱ダム宣言は極端すぎる気もするが、「県民の命と生活を守る」ためのダム建設は積極的に行うべきだと思う。
ダムの建設を進めつつ、氾濫の恐れが高い河川の改修(堤防強化など)を同時に進めることができれば、水害を防げる確率は格段に高くなる。1000年に一度の大雨が降った時はどうなるか分からないが、まずは今できる最善を尽くすしかない。県民の命と生活を守る総合治水が「適切に」行われれば、ダムの素晴らしさ・凄さを誰もが理解するはずだ。
ここ数年、「50年に一度の大雨」が全国各地で発生している。ダムだけに頼り、河川の改修を怠ってきた地域は、治水事業の考え方を改めるべきだ。上物(上流域のダム)ばかり立派でも、基礎(下流域の河川)がガタガタだと有事の際に足元をすくわれかねない。これは、あらゆる公共事業に共通して言える。海岸線沿いに高速道路を一生懸命建設しても、「防潮堤」が機能しなければ大地震からの津波で全て押し流されてしまうだろう。
<まとめ>
・ダムだけに特化した治水事業は間違い。河川の改修も同時に進めなければ、恐ろしい被害を招く。
・治水効果の高いダムは建設すべし。ただし、「昔から予定していた」という理由だけで工事を進めてはならない。限られた予算で県民の命と生活を守るためには、調査工事の結果を厳しく審査する必要がある。
形態 | ダム |
税金投入額 | 400億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 800億~1200億円 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<長野県 公式ホームページ>
静岡空港(静岡県)(目次に戻る
静岡県の空の玄関『静岡空港(通称富士山静岡空港)』。採算の取れない地方空港が増加する中、2009年に開港した。総事業費1900億円の巨費を投じて空港を建設した理由(役人の目論見)は以下の通りだ。
①工事を推進する役人たちは、大手ゼネコンに工事を受注させ、賄賂をGET
②静岡県内の零細建設会社に仕事を与え、賄賂をGET
③新たな観光客を呼び込み、空港でガンガン儲けると同時に天下り先をGET
静岡空港の年間利用者数は約70万人ほどである。なお、静岡県を訪れる年間観光客数は2100万人を超える。数字を見れば、静岡空港が観光客に支持されていないことは明白だ。ちなみに、約60億円で建設されて「鹿児島空港」は、年間利用者数800万人、毎年10億円以上の収益を上げている。
静岡県のインフラはかなり充実している。日本の大動脈「東名高速道路」「新東名高速道路」「東海道新幹線」が通過し、地方都市を結ぶ道路、鉄道の敷設状況も素晴らしいと思う。東京・大阪まで新幹線に乗れば1時間ちょっとで到着できるのだ。静岡空港はしっかり整備された「ガチでヤバいインフラ」の影響をモロに受けた。
静岡空港は利便性が悪く、利用者のことをあまり考えていない。「魅力的な空港」でなければ、東海道新幹線や東名高速道路から利用者を「奪う」ことは一生できないだろう。残念ながら、静岡空港は開業から10年連続で赤字を達成し、投入された税金(補助金)は50億円を超えた。なお、役人の目論見③は外れたものの、天下り先はガッチリキープしている。
インフラが完璧に整備されていれば、後はその状態を維持することが大切だ。静岡県民、観光客、ビジネスマンは、静岡県内を走る新幹線、高速道路、鉄道に十分満足しており、「不便な空港」に出番がないことは「生まれたての赤ちゃん」でも分かる。毎年赤字を計上する「1900億円のハコモノ」は、静岡県の財政を圧迫し続けるだろう。
<まとめ>
・インフラが完璧に整備されている中で「不便な空港」を建設する愚行。
・初期投資が大きくなれば、それに比例して維持管理費も増える。
・まずは利用者のことを考えた「魅力的な空港」を目指せ。共有の電源プラグ、バスを待つ人向けのテーブルやイスは必須。
形態 | 空港 |
税金投入額 | 1900億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 3800億~5700億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<静岡空港 公式ホームページ>
連休最終日に静岡空港へ
— 正 夫 (@RF4sk) January 5, 2020
雲ひとつない天気で富士山がとてもキレイでした🗻#富士山静岡空港 pic.twitter.com/cVnUbn5Wff
南アルプス完熟農園(山梨県)(目次に戻る
全国の地方自治体が積極的に取り入れている「6次産業化プロジェクト」。その概要は以下の通り。
生産者(1次産業)+加工者(2次産業)+販売者(3次産業)=生産加工販売(6次産業)
6次産業化プロジェクトで立ち上げた施設・第三セクターは、地域を代表する特産品等の生産、加工、販売(流通)をまとめて行い利益を上げる。成功すれば地域の活性化と再生、知名度向上による観光客の増加等に繋がる「夢のプロジェクト」だ。
山梨県南アルプス市プロデュースの『南アルプス完熟農園』は、6次産業化を目指して作られた施設である。果物王国山梨の特産品を農園で生産し、それを商品(ジュースやジャム)に加工。現地で販売する計画だったが、同施設は既に閉園し、現在立ち入りが禁止されている。なお、南アルプス市は地権者から土地を借りているため、荒れ果てた農園には毎年1000万円近い補助金が投入されている。
南アルプス完熟農園が達成した「スピード破産記録」は全国にとどろき、同市の知名度は爆発的に向上した。なお、他の自治体はこの事象を「対岸の火事」と考え、同じような失敗が全国各地で幾度となく繰り返されている。今のままでは第二の南アルプス市がいつ誕生してもおかしくない状況だ。同施設の経営が行き詰った要因は以下の通りである。
①ハコモノを作れば人が集まり勝手に繁盛するという間違った考え、驕り
②市場調査・営業活動への投資はゼロ。なお、ハコモノには8億円以上の税金を投入した
③商品の売値が高いうえに魅力を感じない。そもそも、果物を使った加工品(ジュースやジャム)であれば、近所のスーパーやコンビニに行けば安価で購入できる。
同施設は開業から4カ月後に運転資金が枯渇、市から5000万円の融資を受けている。これが民間企業であれば、施設の建設前に市場調査・営業活動を徹底的に行い、採算が取れないと分かった時点で計画自体を取りやめるだろう。また、事業を行う場合も初期投資を限界まで抑え、「資金不足」に陥らない対策をとる。南アルプス完熟農園は「伝説のハコモノ」として未来永劫語り継がれることになった。
<まとめ>
・ハコモノを作れば人が集まる、という幻想を捨てろ!
・4カ月で資金が枯渇するなど論外。元役人に運営管理を任せたのが大きな間違い。
・施設を作る前に市場調査・営業活動を徹底的に行うこと。採算が取れないと分かった時点で撤退し、新しい事業を考えればよい。
形態 | 農園・第三セクター |
税金投入額 | 20億円以上 ※負債額込み |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 1000万円(単年) ※地権者への支払い |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<南アルプス市 公式ホームページ>
ニュース速報///CEEK
— News Japan (@news_type_c) January 18, 2019
跡地借り上げ難航 南ア・完熟農園 (山梨日日新聞)
再開発事業が遅れている完熟農園跡地=南アルプス市寺部 南アルプス市が計画している「完熟農園」跡地の再開発事業が遅れ…https://t.co/pzh7A0p3iP#ニュース#超速NEWS速報 pic.twitter.com/9vtKT4rvxw
あおなみ線延伸事業(愛知県)(目次に戻る
中部地方の空の玄関口「中部国際空港」は、名古屋市の南にある人工島に建設された巨大空港だ。施設の規模が大きいため、市街地の近くには建設できず、繁華街から離れた場所が選ばれた。なお、2018年度の利用者数は1200万人を超え、今年度も過去最高記録更新する勢いだ。
ここで紹介する『あおなみ線延伸事業』は、中部国際空港へのアクセス路線を増やす目的で計画されている。なお、現時点ではまだ計画扱いであり、工事が実施されるかは分からない。仮に実現すれば、1000億円規模の大型公共工事になることが予想される。
現在、中部国際空港に乗り入れる鉄道は「名鉄常磐線」のみである。バスも運行されているが、空港利用者の大半は同路線を支持。収益は好調に推移し、利用者が多すぎる影響で車両編成を3両から4両に変更せざるを得なかったという。中部国際空港の利用者はさらに増えると予想されるため、愛知県は空港へのアクセス路線を増やしたいと考えた。
あおなみ線を延伸させれば、空港へのアクセス手段が増えるため、利用者は間違いなく歓迎するだろう。しかし、投資額に見合った収益を上げれる保証はない。緊急時の「代替えルート」として延伸する価値は十分あるように思えるものの、工事実施前の詳細調査は必須だ。1000億円を投資するだけの価値が本当にあるのか、皆で慎重に議論しなければいけない。
愛知県のポテンシャルを考えれば、あおなみ線延伸事業には大きな可能性を感じる。名古屋市には東海道宇新幹線も乗り入れており、陸と空のアクセスが良くなればさらに観光客を呼び込める可能性も高い。しかし、ここまで紹介してきた「ハコモノ公共事業」と同じく、ただ施設を新しく建設する「だけ」では税金を無駄にしかねない。役人は自分の仲間だけでなく、民間(ゼネコンを除く)の意見もしっかり聞き入れたうえで、あおなみ線延伸始業の可否を判断してほしい。
<まとめ>
・空港へのアクセスを増やせば、利用者は喜ぶだろう。しかし、投資効果に見合った収益を得られない時は、再検討要。
・役人だけで実現可否を検討すれば、利益の有無に関係なく工事を進める可能性が高い。
形態 | 鉄道 |
税金投入額 | 2000億円(海底トンネル) 1000億円(名鉄と接続) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 4000億~6000億円(海底トンネル) 2000億~3000億円(名鉄と接続) |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<あおなみ線 公式ホームページ>
名古屋港の浚渫土砂島への夢のあおなみ線延伸計画作ったけど、途中のコンテナ埠頭になんもないんだよね。名鉄線接続乗り入れは空港線の夢の跡ってことで・・・、あと、ナガシマスパーランドへ行く鉄道欲しいけどみんなクルマかバスで行くよね? pic.twitter.com/dlJXDpU39m
— みるく艇 (@akuneru_miku) October 10, 2016
えちごトキめき鉄道(新潟県)(目次に戻る
『えちごトキめき鉄道(通称トキ鉄)』は、新潟県に本社を置く第三セクター方式の鉄道事業者である。2010年に設立され、「妙高はねうまライン」と「日本海ひすいライン」の2線路を運営している。なお、経営状況はお世辞にも良いとは言えず、2018年度の赤字額は7億円を超えた。
トキ鉄は2020年に運賃を「3割値上げ」すると発表した。社長は引責辞任し、経営体制は見直されたものの、さらなる利用者離れが懸念されている。運賃を値上げし、収支を回復させたい気持ちは痛いほど理解できる。しかし、3割値上げのインパクトはかなり大きい。利用者はトキ鉄の利用方法を見直さざるを得ないだろう。
運賃を3割値上げすれば、利用者は確実に減る。車を持っている人は通勤(通学)経路を見直すはずだ。しかし、免許を持たないお年寄りは電車を利用せざるを得ない。トキ鉄にはこれまで以上のコスト削減・経営努力を求めたいが、極端な経費削減は鉄道の安全運行にも影響を与えかねない。
トキ鉄はできる限りの努力で観光客や利用者を集めてほしい。しかし、どうしても運賃値上げは避けられないというのであれば、行政が力を貸す以外に手はないだろう。新潟県とトキ鉄は以下の事項を遵守しなければならない。
【新潟県】
①クソの役にも立たない公共施設を破棄、公共事業を取りやめる。ダム建設の500億円があれば、トキ鉄の収支が改善されなくても、70年以上赤字を補填できるぞ。
②利用者がいる限り、トキ鉄を存続させる。予算が足りないという理由で廃線にすれば、市民より金が大切と認めたことになる。
【トキ鉄】
①コスト削減は大切。しかし、鉄道事業者の一番の使命「安全運行」を忘れてはならない。
②観光客を呼び込む営業努力を継続すること。赤字体質を脱却し黒字を達成した三セク鉄道はたくさんある。
トキ鉄は安全運行と営業努力を継続した上で、自分たちの魅力を全国に発信し、地域住民・観光客需要を開拓してほしい。運営管理者の新潟県は、トキ鉄の努力をしっかりチェックし、足りない部分は是正させよう。利用者・観光客需要が高まれば、赤字を補填してでもトキ鉄を存続させたいと思うはずだ。
<まとめ>
・トキ鉄の営業努力で新潟県の観光需要が高まれば、赤字を補填するだけの価値はある。
・三セク鉄道は地域住民の大切な足。事業者は努力を継続、行政は存続に力を注いでほしい。
形態 | 第三セクター |
税金投入額 | 50億円以上(累計) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 今後の経営次第 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<えちごトキめき鉄道 公式ホームページ>
樽見鉄道(岐阜県)(目次に戻る
ここで紹介する『樽見(たるみ)鉄道』も、前述の「えちごトキめき鉄道」と同じ第三セクター方式の鉄道事業者である。岐阜県内を走る「樽見線」を運営管理しており、かつては「貨物事業」を主な収入源としていた。しかし2005年、大株主の「住友大阪セメント」はセメント輸送の終了を決める。
貨物事業の収益が大幅に減少したことで、樽見鉄道は赤字に転落。沿線5市町村から約1億円の補助金を受けつつ、旅客事業を何とか継続した。その後も経営はなかなか上向かず、支援の打ち切りも検討されたが、地道なコスト削減と営業努力の成果で赤字額は徐々に縮小した。1億円の補助金を毎年受けてはいるものの、最終損益で黒字を達成できるまでに経営は回復し、現在も運行を継続している。
樽見線の沿線5市町村は、限られた予算の中から樽見鉄道への補助金を支出していた。人口数千人規模の町や村にとってみれば、数千万円の支出は大きな負担になるだろう。しかし、支援の打ち切り(廃線)が本当に実行されれば、取り返しのつかない事態を招くところだった。樽見鉄道の営業努力、そして補助金の支出継続を決断した自治体は本当に素晴らしい。
岐阜県の役人は、樽見鉄道の努力と5市町村の英断を見て何を思っただろう。支援の打ち切りが検討されたのは、上位機関(県)からの指示によるものだ。1億円を渋らせるコスト削減努力は確かに必要だと思う。しかし彼らには、まず自分の行いを恥じろと言いたい。前述の「県民ふれあい会館(OKBふれあい会館」に投入された税金は700億円以上。閑古鳥の鳴くハコモノの維持管理費20億円(単年)があれば、樽見鉄道の補助金20年分を賄える。
正しくない公共事業に700億円もの税金を投入し、県民の生活に欠かせない大切な鉄道への支援を打ち切ろうとする役人に生きる資格などない。樽見鉄道は収支を改善させつつあるが、苦境に喘ぐ三セク鉄道は日本中に数えきれないほどある。赤字経営の三セク鉄道を抱える地方自治体は、まず自分たちが進めている公共事業の見直しから始めてほしい。
<まとめ>
・樽見鉄道の収支は改善しつつある。今の調子を継続すれば、補助金依存体質から抜け出せるかもしれない。
・岐阜県の役人は、鉄道利用者の足を奪うために1憶円を出し渋るのではなく、己の愚行を恥じ、ハコモノ建設事業を改め、潔く腹を切らねばならない。
形態 | 第三セクター |
税金投入額 | 10億円(累計) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 今後の経営次第 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<樽見鉄道 公式ホームページ>
#明日死ぬかもしれないので未公開にならないうちに#外出自粛だし過去の鉄道写真上げまくろうぜ
— えびきた@e131 (@ebi_kita) May 6, 2020
2007.3.30
大垣駅
113系
313系荷物下ろし
樽見鉄道 pic.twitter.com/tqu1cNPXIf
氷見市役所(富山県)(目次に戻る
ここまではあきらかに無駄な施設(ハコモノ)と、一概にそうとは言えないものを紹介してきた。しかし、次に紹介する『氷見市役所』は、これまでの施設とは格が違う。1900億円の「静岡空港」、1兆円超えの「北陸新幹線」、700億円を投じて建設されたアホ施設「県民ふれあい会館(岐阜)」。氷見市役所はこれらが無に思えるほどの成果と実績をあげた。
50年以上の歴史をもつ旧氷見市役所は、耐震基準性能が低いと診断され、建て替えを行うことになった。ここまでハコモノ事例を見てきた方は、「2000億円の市役所爆誕」と期待に胸を膨らませるはずだ。しかし、当時の氷見市長、そして議会は思いもよらぬ決断を下す。
新氷見市役所の建設費用は約50億円と試算され、これを見た市長と議会は設計の見直しを指示する。しかし、有事の際(地震、台風なそ)、市役所は市民の避難場所にもなるため、防災面を考慮すれば50億円の支出は致し方ないように思えた。
廃校の体育館をリノベ―ションした氷見市役所は、外から見ればただのキレイな建物に見える。しかし、足を踏み入れた瞬間、氷見市の熱い想いに目頭が熱くなるはずだ。市民から集めた血税を1円たりとも無駄にしない努力。そして、役目を終えた既存の公共施設を再利用する柔軟な発想。2014年に完成した新氷見市役所は、様々な団体から数えきれないほどの賞を受け、市民の生活を支える拠点になっている。
氷見市役所は2年間で5000人以上の観光客(見学者)を誘致し、市の観光産業にまで貢献してしまった。そこを訪れた観光客は氷見市内の宿に泊まり、特産品の「氷見うどん」を堪能するのだ。全国の地方自治体は、氷見市役所の事例を参考に、柔軟な発想でコスト削減に取り組んでほしい。ただし、氷見市と同じように廃校を利用しろ、と言っている訳ではない。税金を無駄にしない、させない努力が必要なのだ。
<まとめ>
・役目を終えた公共施設をリノベーションする発想と、それを実現させた関係者は凄い。
・市民から集めた血税を無駄にはしない、という熱い想いが伝わってくる。
・ハコモノ建設ばかり推奨する無能な役人は、氷見市役所の事例を1000回読み返し、腹を切れ!
形態 | 市役所 |
税金投入額 | 20億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 40億~60億円 |
役立たず度(5段階) | 💛💛💛💛💛 最高 |
外部サイトへのリンク
<氷見市 公式ホームページ>
リニア中央新幹線(岐阜、長野、山梨)(目次に戻る
『リニア中央新幹線』は2040年頃の開業を目指し工事が進められている超大型公共事業だ。品川-名古屋間の工事費は5.5兆円、名古屋-大阪間が3.5兆円、総事業費は約9兆円を予定している。なお、施主は「JR東海」で、工事の実施に伴い約3兆円の「公的資金」が投入されるという。
リニアが開業すれば、東京名古屋間の所要時間は約40分、東京大阪間は約1時間で結ばれる。東海道新幹線と飛行機は「お役御免」になりそうな雰囲気だ。しかし、インフラは既に十分すぎるほど整備されている。開業後の維持管理費はJR東海が全て担うものの、公的資金3兆円を投入して建設する価値が本当にあるのだろうか。
国道交通大臣はリニア建設に当たり、「三大都市圏を短時間で結べば、経済活動に好影響をもたらす」とコメントした。確かに最もだと思う。東京-名古屋-大阪が1時間で結ばれれば、人の行き来も活発になり、三大都市圏に分散している企業の支店・営業所等が統廃合され、経営のコンパクト化、無駄が削減されるかもしれない。しかし、メリットの裏にはデメリットが隠されていることを忘れてはならない。
リニア建設・開業のメリット・デメリットの一部を下記に記載する。
【メリット】
・スーパーゼネコンは大きな利益を上げる。下請け、孫請け企業にも恩恵をもたらすだろう。
・三大都市圏を訪れる人々が増える。企業は無駄な支店・営業を削減し、コスト削減に成功する。
・東海道新幹線や空路で事故が発生した時の代替えルートの役目を果たす。
【デメリット】
・儲けるのはスーパーゼネコン・下請け・孫請けの「役人」だけ。一生懸命働いた作業員の給料は数千円あがれば良いほうだ。下級国民はボロボロになるまで奴隷のように働かさせる。
・三大都市圏もしくは東京に全てが集中する。地方都市に住むティーンエイジャーは、1時間あれば東京に行けると喜び、自分の住む街で遊んだり買い物をしなくなるだろう。
駅の建設費用は全てJR東海が負担し、県の支出はゼロの予定だ。しかし、周辺の開発事業には県も予算を準備しなければならない。岐阜、長野、山梨の3県は、自分たちが受けるであろうメリット・デメリットを念頭におき、慎重に開発事業を進めてほしい。
<まとめ>
・駅が建設される3県は、メリットとデメリットを念頭に置き、慎重に開発事業を進めてほしい。
・地方自治体は駅(ハコモノ)を造れば人が勝手に集まるという幻想を捨てよ。物に投資することも大切だが、街を立派にしても魅力的な企業や人がそこにいなければ、三大都市圏に全て吸い上げられてしまうぞ。
形態 | 鉄道 |
税金投入額 | 3兆円 ※公的資金 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 未知数 |
役立たず度(5段階) | 未知数 |
外部サイトへのリンク
<JR東海 公式ホームページ>
徳山ダム(岐阜県)(目次に戻る
日本最大の総貯水量を誇る岐阜県の『徳山ダム」。発電・利水・治水の機能を有す「多目的ダム」として、木曾川水系揖斐(いび)川の上流に建設された。総事業費は約3500億円、現在計画中の導管路事業には約900億円が支出される予定だ。
2008年に完成した徳山ダムは、木曾川と揖斐川の治水に大きな効果をもたらすと期待されている。1959年の伊勢湾台風、1983年の木曾川大洪水(4000戸以上が浸水)、2002年の揖斐川越流のような水害を防ぐことができれば、万々歳だろう。
徳山ダムの建設計画策定は1960年代、運用開始が2008年なので、約50年かけて完成した長期案件であることが分かる。建設地の住民は反対運動を展開し交渉は難航。移転が完了したのは1998年だった。この時、徳山ダム建設の疑問点が話題になった。
①過大な利水計画。木曾川流域の水重要は大幅に減少しており、計画の見直しが必要と指摘される。
②環境対策の不備。建設予定地付近には特別天然記念物に指定されたイヌワシなどの猛禽類が多数生息している。なお、環境アセス法の指定を受けていないため、厳格な環境調査は行われていない。
徳山ダムは周辺地域に水を供給する(売る)ことを想定し設計されていた。しかし、導管路が完成しなければ、水は垂れ流しになり施設の維持管理費を賄うことはできず、赤字は税金で補填されることになる。徳山ダムの維持管理費は100億円(単年)を超えるため、水が売れなければ大きな財政負担になることは間違いない。
徳山ダムには木曾川と揖斐川流域の住民を守る使命がある。しかし、無駄に過大な設備、過剰な投資は、自治体と県民の首を絞めかねない。中京経済圏の水需要予想は、建設が始まった2000年頃には分かっていたはずだ。なお、ダムの効果を多目的から「治水」に変更するだけで、工事費は1/5以下、条件によっては1/10以下に圧縮できる。
<まとめ>
・県民の命と生活を守ることは大切だ。しかし、必要以上に過大な設備はいらない。
・徳山ダムの水が売れなければ、岐阜県と県民は過剰な投資の代償を払うことになる。
・木曾川、揖斐川本体の改修(堤防強化)工事はまだ道半ばである。
形態 | ダム |
税金投入額 | 3500億円 (導管路900億円) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 7000億~1兆500億円 (導管路1800億~2700億円) |
役立たず度(5段階) | ★★★☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<ぎふの旅ガイド 公式ホームページ>
初めて行った時の徳山ダム、これ以来放水シーンには出会えてません pic.twitter.com/rkpnJcD2fx
— ゆめぴかり@慢性胃炎 (@yumepikariXX) May 3, 2020
しなの鉄道(長野県)(目次に戻る
長野県の中心部と周辺地域を結ぶ『しなの鉄道』。三セク鉄道の中でもトップクラスの優等生として知られ、2005年から13期連続で黒字を達成している。しかし、JRから長野県に「移管」された1997年からの8年間は赤字続きだった。県から補助を受けてはいたものの、赤字が資本金を上回る債務超過の状態に陥ったこともある。
しなの鉄道は、赤字経営・補助金体質を脱却すべく、新社長に民間の経営者を抜擢。徹底的なコスト削減と経営体質改善が行われた。特に第三セクター特有の「お役所仕事体質」を改善した点は素晴らしいと思う。安全運行を最優先に掲げつつも、可能な限り無駄を削り落とし、さらに観光客誘致の営業活動も継続したのだ。その結果、毎年補助金として約1億円が投入されてはいるものの、2018年には1.5億円以上の収益をあげており、このまま順調に売り上げを伸ばせば補助金体質から脱却できる日も近いだろう。
しなの鉄道は100億円の設備投資を5年に分けて行うことになった。会社にとってはかなりの負担だが、安全運行を継続するためには致し方ない投資だと思う。なお、資金は借入金と補助金で賄われる。しなの鉄道にかかる期待はとてつもなく大きい。県民の足として重宝されるだけでなく、観光客の誘致にも成功しており、さらなる活躍が期待されているのだ。
ここまで紹介してきた他の三セク鉄道同様、しなの鉄道にも可能な限り支援を継続すべきだ。県民の大切な足であることはもちろん、県内の広い範囲をカバーしているため、観光産業への影響も計り知れない。毎年1800万人以上が長野県を訪れており、しなの鉄道が県内の利便性を高めていることで、飲食店やホテル、その他の施設も大きな恩恵を受けていることは想像に難くない。
新型車両への投資は、あくまで安全運行を見込んでのことだ。設備投資の影響で、しなの鉄道は今後数年間、赤字経営に陥ることが予想されている。しかし、観光客の集客と満足度の向上、それらの影響で周辺地域の商業や観光業が盛り上がれば、しなの鉄道の赤字額を大きく上回るプラス効果を期待できる。数億円の補助金で県全体が大きく盛り上がれば、税金を納めている長野県民も大満足だろう。
<まとめ>
・新型車両への設備投資により、数年間は赤字経営に陥る可能性が高い。
・しなの鉄道がもたらす周辺地域へのプラス効果は計り知れない。
・県民と1800万を超える観光客、そして周辺地域にもたらすプラス効果を考えれば、数億円の補助金など喜んで払うべき。
形態 | 第三セクター |
税金投入額 | 24億円(累計) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 今後の経営次第 |
役立たず度(5段階) | ★☆☆☆☆ 1 |
外部サイトへのリンク
<しなの鉄道 公式ホームページ>
フォルテ(静岡県)(目次に戻る
静岡県浜松市の繁華街に建設された『フォルテ』は、計画性ゼロの「だらしないハコモノ」として非難され、2008年に天寿を全う(解体)した。建設当時は浜松市のシンボル、素晴らしい「複合商業施設」になると期待されていたが、世の中そんなに甘くない。建設にGOを出した当時の役人は、入居テナントのことなど一切考えず、「ハコモノありき」で工事を進めてしまった。
イオンなどに代表される複合商業施設を建設する時は、まずその地域で本当に採算が取れるのかを入念かつ慎重に検討する。民間企業の場合、投資額に見合った収益を確保できなければ、経営はすぐに行き詰まる。資金を銀行から借り入れていれば、失敗は死を意味するのだ。そのため、恐ろしい時間をかけて調査が進められ、「否」と判断されれば計画断念、撤退を決めることになる。
「採算が取れる」と判断した場合も、建設がすぐ始まることはない。次は入居するテナントを確保すべく、営業活動と厳しい審査が行われる。複合商業施設の収入源は、「テナント料」と「直営販売店の売り上げ」が大半を占める。イオンは老若男女に支持される数百の人気テナントから使用料を集め、店舗を維持すると同時に収益を上げているのだ。
地方自治体は銀行から資金を借り入れる必要がない。「予算」という名の打ち出の小づちを使えば、「採算度外視、赤字経営上等、テナントなどクソくらえ」状態でも建設にGOサインが出てしまう。フォルテは市場調査とテナント確保の「事前準備」を一切行っていなかった。
ハコモノの建設が始まると、フォルテの関係はテナント探しを開始。しかし、民間企業(テナント候補)は浜松市のポテンシャル、人口、立地条件、使用料などを考慮し、入居することは「自殺行為」と判断した。使用料(家賃)を支払うだけの収益を確保できなければ、経営が成り立たないことはサルでも分かる。結果、フォルテに入居したのは「浜松市の関連団体」と、土地所有者の第三セクター「遠州鉄道㈱」の関連企業が大半を占めた。
浜松市は、フォルテの維持管理費にかかる5億円と、関連団体(すべて公営)が第三セクターに支払う使用料を同時に工面していた。なお、意味不明なテナントばかりのハコモノが収益を上げれるはずもなく、経営は赤字続き。1990年から2008年の清算するまでの間に投入された税金は200億円を超える。
<まとめ>
・役人はまず経営手法をしっかり勉強すること。
・フォルテの失敗事例を、全国の地方自治体にプロパガンダのように延々と発信し続けるべし。
・フォルテは「市場調査なし、営業なし、テナントなし」を全て兼ね備えた無駄なハコモノ。
形態 | 複合商業施設 |
税金投入額 | 320億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 解体済み |
役立たず度(5段階) | ★★★★★ 5 |
外部サイトへのリンク
<浜松市 公式ホームページ>
あいちトリエンナーレ(愛知県)(目次に戻る
日本人の大半は、『あいちトリエンナーレ』という芸術祭が愛知県で開催されていることを知らなかったはずだ。2010年から3年周期で開催され、私も仕事の関係で訪れたことがある。開催期間は約2か月、期間中の来場者数は60万人ほどなので、全国規模のイベントでないことはお分かりいただけるはずだ。しかし、2019年に開催された企画のひとつ「表現の不自由展・その後」は、日本だけでなく世界にもその名を知らしめた。
愛知県と名古屋市はあいちトリエンナーレに補助金を交付し、実行委員会はその予算を使ってイベントを運営している。愛知県は「民」が芸術祭を開催すれば、地域に人が集まり活性化を図れると考えた。民(実行委員会)は、自分たちの作品を見てもらい、同時に収益を上げ新しい作品を作りたいと考えたのだろう。両社の目的が達成されれば、「Win-Win」の関係を構築できる、はずだった。
実行委員会には「爆破テロ予告」と「職員射殺予告」がFAXで届き、事件は全国ニュースで大々的に取り上げられた。犯人は捕まったものの、あいちトリエンナーレが展示を予定していた平和の少女像を模した展示品は、全国から猛烈なバッシングを受ける。イベントを許可した愛知県、名古屋市もやり玉に挙げられ、「補助金の無駄」「韓国政府の策略」などと激しく非難された。
第4回あいちトリエンナーレ自体は予定通り開催されてものの、表現の不自由展・その後は抽選を勝ち抜いた数十組にのみ公開され、役目を終えた。なお、平和の少女像が一般公開されなかったことに対して、韓国政府は「遺憾の意」を表明、日本政府も負けじと「遺憾砲(遺憾の意)」をぶっ放した。
右寄りの方は、税金を使って開催するのは不適切と声を荒げていた。しかし、日韓関係悪化、平和の少女像、日本製品の不買運動、これらの問題に地方自治体は一切関わるべきでない。外交は安部ちゃんに任せればいいのだ。
実行委員会は芸術の力で愛知県に人を集めるべく行動した。韓国が嫌い、イベント反対と騒ぐ方たちは、地方自治体が抱える問題、それに立ち向かう難しさを1mmも理解していない。なお、愛知県知事は第5回あいちトリエンナーレを開催すると正式に表明した。
<まとめ>
・あいちトリエンナーレは、いろんな意味で愛知県の知名度向上に貢献した。
・地方自治体は日韓関係など気にせず、まずは自分たちが抱える問題を解決しなければならない。
形態 | イベント |
税金投入額 | 15億円(第4回) |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | なし |
役立たず度(5段階) | ★★☆☆☆ 2 |
外部サイトへのリンク
<あいちトリエンナーレ 公式ホームページ>
西尾市のPFI事業(愛知県)(目次に戻る
愛知県西尾市は「PFI」を斬新なアイデアで改変し、全国の注目を集めた。当時の関係者が編み出した「西尾市方式PFI」は、上手く機能すれば官民の力を倍増させる相乗効果があると期待されていた。
PFIとは、官の施設や土地を民間に貸し出し使用料を得る。官民で費用を折半し、運営は民の責任で行い、官は使用料を得る、といった手法だと理解していただければ良い。PFIを採用した場合、民間が利益を上げなければ経営は成り立たない。すなわち、「利益を上げる事業にのみ適用できる」ということだ。
西尾市方式PFIは、公共施設の「解体→設計→建設」を民間に全て委託する手法に改変された。西尾市は契約を締結した民間企業に、新しい公共施設の「大まかな条件」を提示。契約した予算の範囲内で新しい公共施設を建設させ、そこから従来のPFIで民間企業に運営を委託する、という流れを予定していた。
西尾市は市民からの要望等を踏まえ、30近い公共施設の「運営・解体・改修・新設」を西尾市方式PFIで一括発注すること決める。建設業界、その他の関係団体は反対運動等を行ってこれを阻止しようとするも、西尾市議会は同事業を認可した。
2017年。工事着工後に行われた西尾市長選挙に勝利したのは、西尾市方式PFIに反対する候補者だった。新市長は200億円の工事を中断、公平に競争入札が行われなかったこと、そして、税金で建設される公共施設を民間に「丸投げ」する手法は間違いだ、と指摘した。
西尾市方式PFIの主な問題点は以下の通りである。
①提示された予算で正しく施設が建設される保証はない。民間企業が費用を安く抑える可能性あり。民間企業は不正な利益を得る。
②民間企業が行政の無理な要求を拒否できず、少ない予算で過大な施設を建設させられる可能性あり。民間企業は赤字に陥るも、契約の都合上泣き寝入りせざるを得ない。
③建設業法、PFI法、中小企業基本法及び官公需法違反の可能性あり。
新市長は思い切って工事を中断しPFIの検討を開始したものの、工事を受注した民間企業とその下につく下請け、孫請け業者は激しく反発した。西尾市をより良い街にすべく、全力で工事を行っていたのであれば、怒って当然だろう。準備した資機材、リース機器、工事従事者などを集めるにはお金がかかる。彼らの会社や生活にも大きな影響を与えかねないだろう。
2019年。工事契約者の一部は西尾市を相手に「国家賠償訴訟」を起こすと発表した。西尾市方式PFIを巡る問題は泥仕合の様相を呈してきた。
<まとめ>
・PFIは民間が儲ける事業限定の手法。公共施設の建設、解体に採用するのは間違い。
・西尾市の都合で勝手に工事を止められれば、民間企業は怒って当然。責任は競争入札を正しく行わず、PFIを自所の都合で改変した西尾市にある。
形態 | PFI |
税金投入額 | 200億円 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 未知数 |
役立たず度(5段階) | ★★★★☆ 4 |
外部サイトへのリンク
<西尾市 公式ホームページ>
議席を増やし、上位当選を果たした西尾市議の前田おさむさん、牧野じろうさんと地域を周ってます!「おめでとう!PFI事業見直しの審判をくだしたな!」安倍政権への怒りも託された、西尾市議選の結果を、東京都議選そして解散総選挙に繋げるため、愛知で強い党をつくるぞ! pic.twitter.com/LWcsJvw1Dv
— すやま初美 (@suyama_hatsumi) June 30, 2017
富山市のコンパクトシティ政策(富山県)(目次に戻る
廃校を再利用した「氷見市役所」は素晴らしい好事例だった。そんな富山県の県庁所在地、富山市で全国に先駆けて推進されているのが『コンパクトシティ政策』である。これは、街の機能(人・物・金)を一か所に集約し、地域の活性化を図るというものだ。イギリス発の政策は「地方再生」の最終兵器としてもてはやされ、地方自治体はこぞってコンパクトシティ開発に乗り出している。
役人たちは、街の機能を一か所に集約すべく、駅周辺や繁華街の再開発に着手する。豪華な複合商業施設を爆誕させ、駅前広場には綺麗な公園・噴水を設置、道路と歩道の舗装をピッカピカに改修、巨大アリーナ、美術館、新しい道路等を狭いエリアに乱造した。コンパクトシティ政策を採用している自治体の大半は、他府県には負けないと言わんばかりの勢いで開発事業をガンガン推進している状態だ。
街が活気を取り戻せば、人が集まり新しい店が次々とオープンし、経済はグルグル回り、夜になるとそこら中で可愛い女の子たちがキャーキャー騒ぎ、酒池肉林の宴が朝から晩までぶっ通しで催され、MDMAが飛び交い、道路は住人、観光客、外国人、犬、猫、イノシシ、タヌキ、酔っぱらったオヤジに占拠され、金が宙を舞い、財政はフィーバー状態になるだろう。これを実現させるためには何が必要か。ここまで紹介してきたハコモノ事例を見て頂ければ、答えはサルでも分かる。
「魅力のある人たち」が活躍する街に人は集まる。魅力のある人たちの周りには、なぜか同じようなレベルの人たちが集まってくるのだ。魅力のある人が起業すれば、それに触発された優秀な人材が周りに集まり、負けじと新しい企業が誕生する。駅前を再開発し立派な公共施設や道路、第三セクターの運営する複合商業施設を建設しても、魅力的な人がいなければ一定数の買い物客を確保できるだけ、遅かれ早かれ街は必ず衰退する。
私は年に数回仕事の都合で富山市を訪れる。繁華街は道路がピッカピカに整備され、立派な商業施設があちこちに建ち、思わず「マジかよ」と頭を抱えたくなるほどだ。なお、歩行者の姿はまばらで、商業施設もイマイチ盛り上がりに欠けるという印象しか受けない。コンパクトシティという名のハコモノを作っても人は集まらない。富山市を見るたびつくづく思う。
<まとめ>
・豪華なハコモノばかり作るのではなく、人を集める施策、人に投資することが大事。
・再開発を進めても、人が集まらなければ借金と毎年の維持管理費が増えるだけ。
・見てくれ(ハコモノ)を良くするだけでなく、内面(魅力的な人)を磨いてほしい、
形態 | コンパクトシティ |
税金投入額 | 500億円以上 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 1000億円~1500億円 |
役立たず度(5段階) | ★★★☆☆ 3 |
外部サイトへのリンク
<富山市 公式ホームページ>
コンパクトシティ富山市は自滅するか否か - Togetterまとめ http://t.co/g6wwjkcLR0
— MbkP(ばかいち) (@bakaichisagami) January 31, 2015
行政の肝煎りで造られた「セントラム」も昼間に閑古鳥が鳴いてた2010年春・・・ pic.twitter.com/gL8yXqLj4h
森山 榮治(福井県)(目次に戻る
中部地方のフィナーレは、現代に蘇ったラストエンペラー『森山 榮治(通称悪代官)』に飾ってもらおう。高浜町の助役、教育委員長、人権研究員などを務め、2019年3月に亡くなった。令和の時代に入って間もない10月。福井県大飯郡高浜町で原子力発電所を運営する「関西電力㈱」の記者会見は全国のトップニュース、翌日の一面トップで扱われた。
1960年代。関電は高浜町の海沿いに原子力発電所を建設したい旨を福井県に伝えた。その話を聞いた悪代官は、町に原子力発電所を誘致すれば、雇用を生み出し、自分の傘下にある建設会社を成長させられると判断する。高浜町の住民たちは悪代官をラストエンペラーとして恐れており、原子力発電所の誘致に反対する者は誰一人いなかった。
高浜町の全てを握っていた悪代官は、原子力発電所の建設にGOを出す。関電は大喜びし工事は無事着工。専門の技術を持つメーカーが施工者に選ばれ、その下に悪代官の傘下にある企業が入った。原子力発電所建設にかかる総事業費は7000億円を超える。なお、高浜町は迷惑料という名目で関電に豪華な公共施設を数えきれないほど建設してもらい、住民は悪代官の活躍を称えた。
悪代官は「公費」を使って現金やスーツ券を関電の役員に分け与えた。当時の高浜町議会はこの案件を問題視するも、ラストエンペラーの圧力には逆らえずこれを黙認。金品を受領した関電役員は、高浜町への恩返しとしてさらに立派な公共施設をあちこちに建設した。
全国ニュースで最も話題になった「菓子折り小判」は、悪代官の存在を日本中に知らしめた。関電役員に渡った公費の総額は、分かっているだけで3億円を超える。悪代官の功績は以下の通りだ。
①関電を恫喝し、高浜町に豪華な公共施設を乱造、住民は大喜びした。
②高浜町の建設会社は、原子力発電所の工事で大儲けした。
③公費を使って関電に金品を分け与えるも、その数百倍の恩恵を町にもたらした。
悪代官と関電の癒着は全国を賑わした。今頃、他の電力会社役員は戦々恐々としているはずだ。関電には実態解明のために第三者委員会が設置された。なお、高浜町長ならびに議会は、公費(税金)の不正利用を否定しており、悪代官が全て一人でやったことと説明した。本人は既に天寿を全うされているので、真実は闇に葬られるだろう。これぞ「死人に口なし」である。
<まとめ>
・公費の使い方を間違えているが、悪代官が高浜町に利益をもたらしたことは事実。
・悪代官は「アメとムチ(恫喝、恐喝、金品、小判)」を使い分け、原子力発電所がもたらす恩恵を全て教授した。
・越後屋(関電役員)、おぬしも悪よのう。いえいえ、お代官さま(森山)ほどでは。
形態 | 役人 |
税金投入額 | 真実は闇の中 |
経営状況ライフサイクルコスト (一生涯にかかる維持管理費) | 真実は闇の中 |
役立たず度(5段階) | ★★★★★★★ 7 |
外部サイトへのリンク
<高浜町 公式ホームページ>
まとめ
今回は貴重な税金を浪費する中部地方の施設と第三セクターを紹介した。なお、全て私の主観で選んでいることをご理解いただきたい。
日本の単年人口減少数(死亡者-出生者)は、ついに50万人を突破した。厳しい財政状況にある地方自治体は、これまでと同じやり方で公共事業を継続すれば、間違いなく財政破綻するだろう。県民の命と生活を守りつつ、予算は有効かつ効果的に使わなければならない。最後までお読みいただきありがとうございました。