◎画期的な外交政策は世界中で外交紛争を引き起こした。
2022年6月28日/ブリュッセルのNATO本部、NATO加盟国の女性外相たち(Bernat Armangue/AP通信)

スウェーデンの新政府は19日、画期的な「フェミニズムに基づいた外交政策」を捨てると発表した。

9月の議会選で敗れた社会民主労働党は2014年にこの政策を打ち出し、世界を驚かせた。

「フェミニスト外交マニュアル」は多くの女性の賛同を集め、歓喜させ、奮い立たせたのである。

しかし、9月の議会選で勝利した中道右派のクリステルソン(Ulf Kristersson)首相は18日に閣僚人事を発表した直後、フェミニズムに別れを告げた。

外相に任命されたビルストロム(Tobias Billstrom)氏は記者団に対し、「男女平等はスウェーデン政府の核となる価値観だが、フェミ外交は行わない」と語った。

またビルストロム氏は、「女性を軽視していると一方的にレッテルを貼ってしまうと、問題の本質を見誤ってしまう可能性がある」と強調した。

社会民主労働党は3つの「R」の重要性を強調し、この政策を打ち立てた。「権利・代表・資源(rights・ representation・resources)」

女性の市民社会・政治に参加する権利、経済的解放、性と生殖に関する権利などはこの外交政策の旗印のひとつである。

しかし、画期的な外交政策は世界中で外交紛争を引き起こした。

前政権の外相は2015年、サウジアラビアの女性の権利と民主主義に異議を唱え、大使を召還し合った。その後、スウェーデン政府はサウジとの長年の武器取引を打ち切っている。サウジは外相の発言を「攻撃的」「あからさまな内政干渉」と非難した。

前政権は2017年、国連安全保障理事会で「ジェンダーに基づく暴力」が制裁の理由になり得るという決議案を可決するよう同盟国に促した。

また、ソマリアとナイジェリアの女性の権利活動家に安保理で発言する権利を与えるよう要求したこともある。

さらに前政権は、モルドバとソマリアにおける女性の政治活動に関する政策を後押しし、コロンビアの2016年の和平協定にジェンダー平等を盛り込むことに成功し、さらに約20カ国の新しい法律、多くはジェンダーに基づく暴力、女性器切除、児童婚に関する法律に貢献したと主張している。

しかし、より強力なフェミ政策を推進するスウェーデンの人権団体は前政権が人権侵害の実績のある権威主義国家(トルコやサウジなど)に武器を輸出していたことを厳しく批判している。

一部の人権団体はフェミに別れを告げたクリステルソン政権を早くも糾弾している。

クリステルソン氏の穏健党は右派の「キリスト教民主党」「自由党」と連立を組み、極右「スウェーデン民主党」の支援を受けながら国を率いる予定だ。

議会選で第2党に躍進したスウェーデン民主党は1980年代末の「ネオナチ運動」「白人民族主義運動」をルーツとし、長い間のけ者扱いされてきたが、過激な思想を取り除き、反移民・反イスラム・反暴力政策を前面に押し出すことで若者の支持を集めた。

スウェーデン民主党は連立に参加しないが、移民と犯罪に関する政策と引き換えにクリステルソン氏を支持すると約束している。

2022年9月11日/スウェーデン、首都ストックホルム、穏健党のクリステルソン党首(Getty Images/AFP通信)
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