公開から25年・・・

ケビン・コスナー主演、ケビン・レイノルズ監督の映画「ウォーターワールド(原題:Waterworld)」は、地球温暖と都市水没、激しいアクションとラブロマンスを組み合わせて大作映画である。

1995年7月にこの映画が初めてアメリカで公開された時、観客は沸き立ち、「どうしてこうなった?」と毒づき、「ケビン・コスナーが水没した」と嘲笑した。

アメリカ初演から2週間後にイギリスで公開されると、制作予算オーバー問題、否定的なレビュー、そして、製作費1.75億ドル(約200億円)かけた割には残念な興行収入などが話題となり、「Wケビンだけでなく、関係者と映画自体も水没した」と大笑いされた。

なお、同作はアカデミー賞音響賞を受賞している。しかし、最低映画を集めるゴールデンラズベリー賞の受賞およびノミネートの方が大きく取り上げられてしまい、アカデミー賞の話題は片隅に追いやられてしまった。

しかし公開から25年後、「25歳になったウォーターワールド」の残した遺産と影響は再評価に値すると思う。

本作の脚本家を務めたピーター・レイダー氏は、同作がユニバーサルスタジオの中で「最も成功した映画のひとつ」と断言した。

また、映画公開から数週間後にリリースされたユニーバサルスタジオのアトラクション「ウォーターワールド(Waterworld:A Live Sea War Spectacular)」は、同テーマパークの人気を決定的なものにした。

これはシンガポールと日本のテーマパークで最も高い人気を誇るアトラクションのひとつになり、ユニバーサルに数十億ドルの収益をもたらしたのである。

マンチェスター・メトロポリタン大学で映画研究およびアメリカ研究の上級講師を務めるソーシャ・ニフライン教授は、映画のウォーターワールドも、一部の批評家が厳しく指摘するほど酷くないと述べた。

ソーシャ・ニフライン教授:
「ジュラシックパークゾーン、ハリーポッターゾーン、トランスフォーマーゾーン、これらの大人気フランチャイズ作品のテーマパークとウォーターワールドは似て非なるものである」

「ウォーターワールドは現実世界で起こり得ることを映像化し、大人気アトラクションになった。その他の人気フランチャイズシリーズも素晴らしいが、Wケビンの作品ほど現実的なスリルや興奮はない」

「そして、本作で最も重要な点は、現代社会が抱える様々な問題について述べていることだ。当時、私たちは化石燃料の過剰使用、異常気象、環境保護活動などのことを真剣に考えていなかった

ウォーターワールド Movie CLIP 復讐 (1995) HD

フォーブスは批判的だった同作の評価を見直すべきと主張し、「現代にピッタリフィットするカルト的黙示録映画」と称賛した。

当時、主演のケビン・コスナーと監督のケビン・レイノルズは、ウォーターワールドの失敗を認めている。しかし、25歳になった本作の価値と評価は、当時とは全く異なるものになった。

オープニング、本作の主人公、マリナーが自分の尿を蒸留し飲み水を作る場面は、水没した地球の現実を効果的に表現した素晴らしいシーンである。

25歳になったウォーターワールドは男を上げ、高く評価されることになった。しかし、なぜ、公開当時の評価はイマイチだったのか。

リバプール・ジョンムーア大学のヤニス・ツィオマキス教授は、「様々な問題が本作を水没させた」と主張した。

まず、本作はエンターテインメントおよび業界ニュースの組み合わせによって生み出される「評判」が芳しくなかった。

次に、製作段階でのトラブル、「製作費問題に注目が集まった」ことで、公開前の期待値が上がり過ぎてしまったのである。

本作の製作費は撮影が進むごとに膨れ上がり、天候不良の影響でセットが破壊され、編集者が編集を終える前にチームを離脱するなど、メディアに面白いネタを提供し続けた。

さらに、当時ケビン・コスナーはハリウッドを代表する人気俳優のひとりだったが、主演作の「アンタッチャブル (原題:The Untouchables)」「フィールド・オブ・ドリームス(原題:Field of Dreams)」「ロビン・フッド(Robin Hood: Prince of Thieves)」「ボディガード (原題:The Bodyguard)」などの興行収入はイマイチだったため、大失敗を期待するメディアは本作を面白おかしく評価した。

この頃、「ラスト・アクション・ヒーロー(原題:Last Action Hero)」や伝説のアクション映画「カットスロート・アイランド(原題:Cutthroat Island)」が壮絶な興行収入を叩き出し、ウォーターワールドもこれに続くだろうと噂され、コケたのである。

ウォーターワールド Movie CLIP 判決 (1995) HD

25歳のウォーターワールド

ウォーターワールドは再評価され、男を上げた。しかし、問題点があることも理解しておかなければならない。

本作のキャストは、ほぼ白人男性で構成されており、多様性が圧倒的に欠如している。脚本を書いたレイダー氏は、「25年前の常識が非常識になったことは明白である」と、この問題を認めた。

そして、本作の女性キャラクターの扱いは、ハッキリ言ってよろしくない。

海賊集団スモーカーと呼ばれる荒くれもの集団は、物語のカギとなる「ドライランド」への地図を「背中に彫られた(入れ墨)少女」を探している。

その後、背中に入れ墨のある少女エノーラと保護者のヘレンは「商品」のように扱われ、ケビン・コスナー演じるマリナーは、うら若き乙女をスモーカーへのエサとして提供する。

公開後、ウォーターワールドはハリウッドの白人至上主義を強調し、気候変動に関する主流の議論にマイナスの影響を与えた。女性の扱いも同様である。

しかし、それらの問題点を除外すれば、本作は地球温暖化に警鐘を鳴らす素晴らしい作品と断言できる。

海賊集団スモーカーの本拠地は、1989年にアラスカ海沖で沈没し、海洋に1,080万ガロンの原油を流出させた石油タンカーの「エクソンバルディーズ」である。監督は、「地球規模の原油流出事故を忘れてはいけない」というメッセージを込めたと語っている。

本作の登場人物たちは、人類が地球に与えた様々な問題についても言及している。

なお、作品の中で語られる最後の陸地、「ドライランド」はエベレストの頂上と暗示されているが、そこにたどり着くシーンは描かれていない。

映画のラストはアクションに重点が置かれるため、「ドライランドの登場シーンを撮ることはなかった」と主演のケビン・コスナーは語っている。

本作は、地球規模の異常気象や温暖化の詳細については言及していない。しかし、ひとりでも多くの人に地球の置かれている状況を伝えることができれば、ウォーターワールドの価値は普遍的なものになるだろう。

気候問題の専門家であるピーター・グライト博士は、ウォーターワールドを気候フィクションの好事例と述べ、「今、地球上で発生している様々な問題(山火事、気温や海水温の上昇など)と、克服に向け努力することの大切さを思い出させてくれる」と付け加えた。

本作の脚本家、ピーター・レイダー氏は、2019年4月に国連本部で開催された「持続可能な水上都市」の専門家メンバーの一員として招待された。

この時、建築家のビャルケ・インゲルス氏デザインの水上都市モデルが公開され、話題を呼んだ。

ケビン・コスナーは本作の撮影中に海洋保護への関心を高め、水から油を分離する作業の専門会社、「オーシャン・セラピー・ソリューションズ」を買収した。

その後、同社の技術はBPに売却され、メキシコ湾原油流出事故の対応時に活用された。

異常気象や地球温暖化の危険性を再認識したいという方は、ぜひ25歳になったウォーターワールドを観賞してほしい。

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