◎シナロア州では7月下旬に米国でカルテルの幹部2人が逮捕されて以来、派閥間の争いが続いている。
メキシコ陸軍の兵士(Getty Images)

メキシコのオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は13日、北西部シナロア州クリアカンで麻薬カルテル抗争が激化したことを念頭に、世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルに対し、これ以上犠牲者を出さないよう責任ある行動を取るよう求めた。

オブラドール氏は定例記者会見でクリアカンの暴力を軽視し、「このような抗争はよくあることだ」と述べた。

ある記者が「シナロア・カルテルがあなたの話しに耳を傾けると思うか?」と尋ねると、「私はこの国の大統領だが、人の話はちゃんと聞く」と答えた。

記者は「本当に?」と問うと、「カルテルも人間の集まりであり、道徳を持ち合わせている」と主張した。

陸軍はこの地域に部隊を展開。武装ヘリで市内を巡回し、警戒に当たっているものの、恐怖が収まる気配は見えない。

シナロア州では7月下旬に米国でカルテルの幹部2人が逮捕されて以来、派閥間の争いが続いている。

オブラドール氏とシナロア州知事は市民を守るために十分な警備態勢を敷いていると主張しているが、クリアカンの住民の見方はまったく異なるようだ。

10日にはクリアカン市内で正体不明の武装集団が15台のトラックを乗り回し、空に向けて銃を乱射。陸軍と警察は現れず、集団はどこかに走り去ったという。

オブラドール氏はこれまでに何度もシナロアを含む麻薬カルテルやギャングを軽視し、若者とカルテルを引き離すためには銃弾ではなく「愛と抱擁」で人の心を掴む必要があると訴えてきた。

クリアカンではカルテルが道路脇にIED(即席爆発装置)や地雷を設置し、郊外の集落には塹壕が掘られ、機関銃を搭載した自家製装甲車や爆弾を投下するドローンも登場する始末だ。

今月末退任するオブラドール氏はシナロアに対し、「罪のない人々に危害を加えず……これ以上の犠牲者を出さないために、他の方法を探さなければならない」と呼びかけた。「今すぐ家に帰り、自分と家族の面倒を見るべきです」

メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。

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