◎クルド人女性のアミニさんが首都テヘランで道徳警察に殴り殺された事件は発生から2カ月半を迎え、各地で抗議デモが続いている。
イランの活動家などによると、ヒジャブ(スカーフ)を着用せずに国際大会に臨んだスポーツクライミングのレカビ(Elnaz Rekabi)選手の実家が取り壊されたという。
レカビさんは10月のアジア選手権でヒジャブを着用せずに競技に参加。国際社会から喝采を浴びた。
しかし、レカビさんはその後、「ヒジャブを着用し忘れていた」と説明し、故意ではないと示唆した。
イラン指導部は国内外を問わず、すべての女性にヒジャブ着用を義務づけている。
レカビさんは脅迫され「謝罪を強制された」と信じられている。
イランの活動家によると、レカビさんの実家が取り壊されたという情報は今週拡散したという。
ソーシャルメディアで共有された動画にはバラバラになった家と、その前で泣く男性の姿が映っている。報道によると、この男性はレカビさんの兄だという。
反政権派は「実家が取り壊された時期は特定できない」としているが、レカビさんの行為に対する復讐と非難している。
タスニム通信はレカビさんの実家が取り壊されたと報じたが、一家が必要な許可を得ていなかったため、取り壊されたと説明している。
クルド人女性のアミニ(Mahsa Amini)さんが首都テヘランで道徳警察に殴り殺された事件は発生から2カ月半を迎え、各地で抗議デモが続いている。
アミニさんは9月13日、テヘランを訪問中にヒジャブ(スカーフ)を適切に着用しなかったという理由で道徳警察に殴られ、パトカーに頭を叩きつけられ、車内で暴行を受け、昏睡状態に陥り、3日後に死亡した。
レカビさんは帰国した際もヒジャブではなく黒い野球帽をかぶっていた。しかし、その翌日も同じ服装でスポーツ相に会ったことから、自宅に戻れなかったのではないかという疑惑が浮上した。
AP通信は情報筋の話を引用し、「レカビさんは大臣に会うまで拘束されていた」と報じていた。
イランに戻る前日、レカビさんは自身のインスタアカウントに「心配かけてごめんね」と投稿していた。「予想外のタイミングで競技を行うよう言われたため、うっかりヒジャブを忘れてしまったのです」
しかし、AP通信は関係筋の話を引用し、「当局は、故意ではないという声明を出さなければ家族の財産を奪うとレカビさんを脅した」と報じている。
ノルウェーに拠点を置く人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)によると、治安部隊の攻撃でこれまでに民間人約450人が殺害され、数万人が負傷し、1万8000人以上が拘束された。政府は死者数と逮捕者数を公表していない。